財政審・スモールリスクは自助努力の余地を拡大

財政審、薬価の期中改定や高齢者の負担増を求める
「スモールリスクは自助努力の余地を拡大」

財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は10月4日、2017年度予算編成への建議に盛り込む社会保障分野の「改革の方向性」を大筋で合意した。医療分野では高額薬剤の速やかな薬価改定やかかりつけ医以外を受診した場合の定額負担、「高額療養費制度」の高齢者優遇措置の見直しなどを求めた(資料は、財務省のホームページ)。改革項目の多くは、中央社会保険医療協議会や社会保障審議会で既に議論が始まっている内容だ。
政府は社会保障費の自然増分を2016年度からの3年間で1兆5000億円(年5000億円)程度に抑える方針で、2017年度予算でも、厚生労働省の概算要求での6400億円から1400億円の削減を目指している。分科会後に会見した審議会長の吉川洋氏(立正大学経済学部教授)は「ビックリスクは共助で支える、スモールリスクはある程度以上の経済力を持つ人の自助努力の余地を広げるべきというのが財政審の基本的な考え方」と説明。スモールリスクの例示として風邪や軽度者向けの介護サービスを挙げた。

中医協で議論が進む高額薬剤の薬価の見直し については、改革案の中で「2016年4月の薬価改定に対応が間に合わなかった高額薬剤について速やかに適正水準まで薬価改定を行うとともに、適正な使用に係るガイドラインの遵守を保険償還の条件とすべき」と要望した(『『オプジーボ、「緊急的な対応」で薬価引き下げか』などを参照)。日本医師会は、期中改定では診療報酬本体(技術料)へ財源の付け替えができないとして反対の姿勢を示している(『「医科技術料の割合、減少傾向」日医が医療費分析』を参照)。財務省高官は「『改定』という表現を使うかどうかは別だが、遅くても2017年4月に引き下げをしない理由がない」と話している。

かかりつけ医の普及については、「かかりつけ医の普及や外来の機能分化は十分に進展していない。諸外国と比較して、我が国の外来受診頻度は高く、多くは少額受診。限られた医療資源の中で医療保険制度を維持していく観点からも、比較的軽微な受診について一定の追加負担は必要なのではないか」と提案した。

「かかりつけ医のイメージ」は下記のように記載。
◆他の医療機関を含めた受診状況等の把握、必要に応じた専門医療機関の紹介・連携、継続的かつ全人的な医療の提供(1)など、一定の要件を満たす診療所等(2)について、患者が「かかりつけ医」として指定(保険者に登録)。
(1)については、総合診療医の養成・定着が進むまでの経過措置として、耳鼻科や眼科など特定の診療科については、あらかじめ「かかりつけ医」と相談の上、指定する他の医療機関での診療を可能とする(定額負担も免除)。 (2)では、特定疾病の有無・年齢要件は問わず、24時間対応等も求めないなど、診療報酬で評価される地域包括診療料等とは異なり、「かかりつけ医の要件は緩やかに設定」と提案している。

かかりつけ以外を受診した場合の定額負担に金額についても、他の診療所を受診した場合は低額、病院はより高額で、規模に応じて金額を増やすことを求めている。

「生活習慣病治療薬等の処方のあり方」では、「基本的には個々の患者ごとに医師が判断すべきものであるが、例えば、高血圧薬については、我が国では高価なARB系が多く処方されている」という一文を書き添えた上で、高血圧薬の価格表を提示。「生活習慣病治療薬等について処方ルールを設定すべき」と求めた。
吉川氏は委員からの意見として「かかりつけ医制度の定着には質の向上が望まれ、そのためには健全な競争が必要。自由に選択する権利を担保する必要がある」「かかりつけ医を持たない場合はフランスのように自己負担割合を3割から4割に増やすなどの方法も考えられる」「国民全体で健康を保つためには、スポーツ医学も有効である。オリンピック選手 は、ドーピングの関係もあり薬を使わず健康を維持している。スポーツ医学の医師は3万人ぐらいいるので、こうした方にも地域医療に貢献していただくのがいいのでは」などと紹介した。

2017年度予算編成への建議に盛り込む医療分野の主な改革の方向性(案)
■かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入
「かかりつけ医」を普及させつつ、外来の機能分化を進めていくため、一定の要件を満たす「かかりつけ医」以外を受診した場合の受診時定額負担(診療所は低額とし、病院は規模に応じてより高額を設定)を導入すべき。

■高額薬剤の薬価等のあり方(当面の対応)
4月の薬価改定に対応が間に合わなかった高額薬剤について速やかに適正水準まで薬価改定を行うとともに、適正な使用に係るガイドラインの遵守を保険償還の条件とすべき。

■高額薬剤の薬価等のあり方(費用対効果評価の導入等)
高額薬剤の創出や大幅な適応拡大など昨今の状況に対応するため、(1) 保険償還の対象とすることの可否の判断、保険償還額の決定及び薬価改定に際して、費用対効果評価を本格的に導入するとともに、(2)適応拡大等による大幅な医療費増加に適切に対応できるよう、薬価制度の見直しを速やかに検討すべき。

■生活習慣病治療薬等の処方のあり方
薬剤の適正使用の推進の観点から、生活習慣病治療薬等について処方ルールを設定すべき。

■スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率のあり方
例えば第2類・第3類となっているものなど、長らく市販品として定着しているOTC医薬品に類似する医療用医薬品は、(1)保険給付の対象から外すこととするか、(2)保険給付として残すのであれば、OTC医薬品を購入した場合との負担のバランスの観点から、一定の追加的な自己負担を求めることとすべき。あわせて、医療用医薬品のうち安全性など一定の要件を満たすものは自動的に市販品として販売可能となるよう、スイッチOTC化のルールを明確化すべき。

■入院時の光熱水費相当額に係る負担の見直し
入院時生活療養費について、在宅療養等との公平性を確保する観点から、難病患者・小児慢性特定疾患患者等を除く全ての病床について、居住費(光熱水費相当)の負担を求めていくべき。

■高額療養費の見直し (負担限度額)
高齢者の高額療養費について、速やかに、外来特例を廃止するとともに、自己負担上限について、所得区分に応じて、現役と同水準とすべき。

■高額療養費の見直し (所得基準)
「現役並み所得」の判定方法について、現役世代との公平性の観点から、収入の多寡を適切に反映する仕組みとなるよう、速やかに見直すべき。

■後期高齢者の保険料軽減特例の見直し(低所得者)
制度本来の趣旨を踏まえ、均等割の軽減特例については、速やかに本則の水準に戻すべき。また、所得割の軽減特例については、速やかに廃止すべき。

■後期高齢者の保険料軽減特例の見直し(元被扶養者)
後期高齢者の保険料軽減特例(元被扶養者)については、負担の公平性を著しく損ねていることから、速やかに廃止すべき。

■金融資産等を考慮に入れた負担を求める仕組みの医療保険への適用拡大
まずは、現行制度の下での取組として、入院時生活療養費等の負担能力の判定に際しても、補足給付と同様の仕組みを適用すべき。さらに、医療保険・介護保険における負担の在り方全般について、マイナンバーを活用して、所得のみならず、金融資産の保有状況も勘案して負担能力を判定するための具体的な制度設計について検討を進めていくべき。

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by kura0412 | 2016-10-05 16:30 | 医療政策全般 | Comments(0)