『ソバルディとハーボニー、2015年度の医療費増の主要因』

ソバルディとハーボニー、2015年度の医療費増の主要因
両剤含む抗ウイルス薬で「0.7~0.8%」の医療費増

厚生労働省は9月28日の中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)に、2015年度の「医療費の動向」を公表、同年の医療費は41.5兆円で初めて40兆円を突破、2014年度と比べ、3.8%増となったと説明した(資料は、厚労省のホームページ)。
過去数年に比べて高い医療費の伸びになったのは、調剤医療費の増加が要因だ。中でもC型肝炎治療薬である、ソバルディ(一般名ソホスブビル)とハーボニー配合錠(レジパスビル/ソホスブビルの配合錠)の薬剤料の伸びの影響が大きい。

同省によると「約40兆円の概算医療費に対して、おおむね0.7~0.8%が、昨年秋以降に使用が増えた、C型肝炎治療薬を含む抗ウイルス薬の薬剤料の増加が要因」(保険局調査課長の山内孝一郎氏)。ただし、「0.7~0.8%」は院外処方分であり、「院内処方される場合も含めると、もう少し大きいのではないか」と山内課長は説明した。2016年度薬価改定で、両剤とも「特例拡大再算定」の対象になり、31.7%の大幅な薬価引き下げとなったため、「2016年度以降、どのように推移していくかを見て行くことが必要」(山内課長)。
これらの医療費の分析に対し、さまざまな視点から問題提起したのが、日本医師会副会長の中川俊男氏。まず3.8%の医療費増について、診療報酬改定がなかった2011年度(対前年度比3.1%増)や2013年度(同2.2%増)と比較しても高いと指摘。その上で、山内課長が言及したように、薬剤料の分析は院外処方に限った場合であり、日医が分析中のデータでは、院内処方を含めると、抗ウイルス薬の増加は1%程度になると述べ、薬剤料の伸びを問題視した。
その上で中川氏は、ソバルディとハーボニー配合錠の売上を質問。
厚労省は、IMSのデータを説明。薬価ベースで四半期ごとに、ソバルディ(2015年5月薬価収載)は、433億円(2015年7-9月)、643億円(同10-12月)、391億円(2016年1-3月)、246億円(同4-6月)、ハーボニー配合錠(2015年9月薬価収載)は、1101億円(2015年10-12月)、1517億円(2016年1-3月)、698億円(同4-6月)とそれぞれ推移している。
「(売上の)ピークは過ぎたと考えていいのか」との中川氏の質問に対し、厚労省保険局医療課薬剤管理官の中山 智紀氏は、ソバルディとハーボニー配合錠の薬剤料は、2016年度薬価改定の31.7%の引き下げを上回るペースで減少、つまり薬価だけでなく数量も減少しているとし、引き続き2016年7月以降のデータを見て行くとした。
中川氏は、「高額薬剤が、公的医療保険制度を翻弄していると以前言っていたが、こうしたデータをリアルタイムに把握、公表して、拙速な議論に走らないようにやっていくことが必要ではないか」と厚労省に求めた。さらに現在、中医協で議論が進む抗PD-1抗体製剤のオプジーボ(一般名ニボルブマブ)についても、年間医療費が「1兆7500億円」に達するとの推計もある中、「この金額がいまだに独り歩きをしている。この数字は過大であるという明確なメッセージを発するべきではないか。これにより議論がおかしな方向に行っている」と中川氏はコメントした(『オプジーボ、「緊急的な対応」で薬価引き下げか』を参照)。
中山薬剤管理官は、「重大な問題だと思っている」とし、オプジーボの販売元である小野薬品工業の公表データなども踏まえ、分析していくと答えた。
さらに中川氏は、「医療費の伸びの大半は、薬剤費であることが明らかになったのではないか。今の中医協の最大の懸案は、薬価の在り方であり、原価計算方式と類似薬効比較方式などの見直しを早急にやる根拠が明らかになった」とも指摘し、政府の方針として社会保障費の自然増が年5000億円に抑制される中、薬剤料の問題が中医協の重点課題であると提起した。

2015年度の「医療費の動向」では、後発医薬品割合なども明らかになっている。2015年4月の58.8%から、2016年3月には63.1%に増加した(数量ベース)。2015年の「骨太の方針」で掲げられた後発医薬品の使用割合は、「2017年央までに70%以上」であり、今後も使用促進が必要な状況にある。
後発医薬品使用促進の医療費への効果は、2014年度の場合でマイナス0.5%。
中川氏は、2015年度の後発医薬品の薬剤料が8500億円であるのに対し、それを促進するための調剤報酬の伸びも大きい現状について問題提起。日本薬剤師会常務理事の安部好弘氏はどの部分の技術料が増えているかなど、丁寧な分析と議論を求めた。
9月28日の中医協総会では、2016年度実施の診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の調査票なども了承(『後発薬の促進策検証、インターネット患者調査を導入』を参照)。

抗ウイルス剤、1185億円から4139億円に大幅増
2015年度の医療費は、2014年度と比較で3.8%増。医療費は診療報酬改定の影響を受けるため、改定がなかった年度と比較すると、2011年度3.1%増、2013年度2.2%増などと比較しても高い伸びとなった。

診療種別にみると、入院1.9%増、入院外3.3%増、歯科1.4%増、調剤9.4%増であり、「過去の傾向に比べても調剤の伸びが高く、入院外もやや高く、結果としてやや高い医療費の増加となった」(山内課長)。
調剤の伸び(院外処方分)を分析すると、処方せん1枚当たりの調剤医療費は7.3%増。内訳は技術料1.4%増で過去数年とそれほど変わらないが、薬剤料9.2%と高い伸びとなっている。
薬剤料の8割以上を占める内服薬について薬効分類別にみると、ソバルディなどを含む抗ウイルス剤が対前年度比で248.1%増と非常に高い伸びで、薬剤費は2014年度の1185億円から、2015年度は約3000億円増加し、4139億円になった。約40兆円の医療費に対して、この約3000億円は、0.7~0.8%に該当する計算になる。
厚労省が9月15日の経済財政諮問会議の経済・財政一体改革推進委員会 「社会保障ワーキング・グループ」に提出した資料「医療費の伸びの要因分析」では、2015年度の医療費の伸び3.8%について、「人口増の影響」がマイナス0.1%、「高齢化の影響」が1.2%増、「その他」が2.7%と説明。2.7%のうち、薬剤料が1.4%、「抗ウイルス薬を含む化学療法剤」が0.77%となっている。

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by kura0412 | 2016-09-29 10:32 | 医療政策全般 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラー片手に歯科医師の本音

『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




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