日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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『中医協での日医の変節で高額薬剤問題が迷走』

中医協での日医の変節で高額薬剤問題が迷走

「うーん。日医は一体、何を考えているんだ……」。8月24日の中央社会保険医療協議会・薬価専門部会が終わると、さる厚生労働官僚が苦々しげな口調でつぶやいた。
無理もない。この日のテーマは、高額薬剤問題の渦中にある抗癌剤ニボルマブ(商品名オプジーボ)の薬価引き下げについて。厚労省は次回2018年度の薬価改定を待たず、緊急で薬価を引き下げる異例の「期中改定」を提案したのだが、日本医師会出身の委員が当初の姿勢を翻して否定的な物言いに終始したからだ。
厚労省は期中改定の対象を、2015年10月~16年3月に効能の追加が行われた医薬品で、16年度の市場規模が当初予測の10倍を超え、かつ1000億円を超えるものと想定。この特例措置について、年末までに結論を出し来春にも実施したい考えだ。

もともと中医協の場に、現行のルールにない期中改定を持ち出したのは日医出身の委員だった。今春の中医協では、ニボルマブに関して「発売当初は希少癌を対象として高額な薬価が設定され、後に対象患者が大幅に拡大されたにもかかわらず高薬価が維持されているのはアンフェア」などと舌鋒鋭く批判し、「直ちに薬価を修正すべき」と強く訴えていた。
とすれば、上記の厚労省提案には当然、もろ手を挙げて賛成するかと思いきや、実際は違った。従来の主張から一転、期中改定に否定的な姿勢を示すようになったのだ。7月以降、「期中改定は医療機関経営への影響もあり、慎重な検討が必要である」「期中改定ありきで議論を進めるべきではない」といった具合に発言がトーンダウンした。
日医の翻意の背景には、「薬価を下げるなら、浮いた財源を診療報酬に回すべき」との思惑がある。かつて薬価の引き下げによって生まれた財源は、診療報酬本体の引き上げ財源に充当されてきた。しかし、昨今ではこの構図が崩れてきている。
消費増税が先送りされるなど、医療費の財源確保は厳しさを増すばかり。
政府は2016~18年度の社会保障費の伸びを3年間で1兆5000億円に抑える方針で、大きな制度改正がない17年度も伸びを5000億円に圧縮することが、事実上のノルマになっている。ニボルマブの薬価引き下げはその目玉となり得るものだ。つまり、18年度改定を待たずにニボルマブの薬価が引き下げられれば、その分は全て国庫に入る可能性が高い。そこで日医としては、慌てて前言を撤回する策に打って出たわけだ。

実際、7月の中医協総会では、日医出身委員がはっきりこう述べていた。「薬価の引き下げ分が診療報酬本体のプラス財源に充てられることが担保されれば期中改定は認められるが、そうでない場合は慎重に検討する必要がある」。ただし、8月24日の薬価専門部会では、「期中に『薬価を下げる』と決めて、次の2018年度改定でまとめて措置することも有力な選択肢としてあり得る」という変則的なプランも披露した。
公の場である中医協で、ごく短期間に正反対の主張を繰り出し、診療報酬改定財源の確保に躍起となる日医。この戦法には、厚労省も戸惑っているようだ。同省の幹部の1人は「期中改定の実施に難癖を付け始めたのは、あくまで診療報酬改定の条件闘争が狙い。期中改定そのものを否定する気はないだろう」と踏んでいるが、日医の真意を測りかねている部分があることも事実だ。
8月末には日医に続いて、四病院団体協議会も期中改定に慎重な姿勢を表明した。
今のところ、期中改定が実現するかどうかは読めない状況だが、年末にかけて高額薬剤の新たな薬価算定ルールに関する議論がヒートアップしていくことは間違いない。

【日経メディカル】



さてオブシーボなど高額薬剤には直接関係ない日歯ですが、果たしてこの問題に対してどんな対応をするか。
by kura0412 | 2016-09-09 17:34 | 医療政策全般 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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