『「オーラルチェック」で医科と歯科が連携』

話題の会員制高級人間ドックってどんなところ?
東京駅から徒歩3分、歯科とも連携したプレミアム人間ドックの気になる中身

全国のビジネスパーソンが行き交う東京駅から徒歩3分。新幹線のプラットフォームを見下ろす高層ビル内に、エグゼクティブのための医療サービス「SBIメディック」の提携クリニックがある。同サービスは、がん・心臓・脳の3つの主要分野の専門ドックをカバーするほか、歯科ドックも常設し、手厚い健康管理支援サービスを会員に提供している。他の高級会員制人間ドックと比べた強みは何か、実際に訪れて話を聞いてみた。

東京のど真ん中に、プライバシーが保たれた上質の空間
SBIメディックは、2009年に始まったエグゼクティブ向けの会員制健康管理支援サービス。手掛けているのは、ネット証券やネット銀行などの金融事業で知られるSBIグループ傘下のSBIウェルネスバンクだ。サービス開始当初は、スタンダードな総合人間ドックと、脳心臓血管ドック、アンチエイジング系ドックの3つを別々の日に受診可能なシステムだったが、2016年7月にコース内容を一新。お薦めの検査を集約した1泊2日のプレミアムドックコースを開始したばかりだ。
SBIメディックの第一の特徴は、その圧倒的な利便性だろう。
検診を行う「東京国際クリニック/医科」は、東京駅八重洲口から徒歩3分の高層ビル内。歯科領域を担当する「東京国際クリニック/歯科」も、「東京国際クリニック/医科」から徒歩5分という好立地だ(クリニック間の送迎あり)。その抜群のアクセスの良さゆえ、会員の約半数は地方都市の居住者(主に企業経営者)。眼下に行き交う新幹線を眺めるロケーションは、鉄道ファンでなくとも楽しめる。
同クリニックの同じフロアにはSBIメディックの会員専用の受付やラウンジ、更衣室などがあり、コンシェルジュが対応し、エスコートしてくれる。1日5人前後に受け入れを限定し、クリニックの外来患者とは動線を分けているため、プライバシーが守られた空間でゆったりくつろぐことができる。
SBIメディック会員専用のエグゼクティブラウンジ。出張の合間に休憩したい、商談に利用したい、といった会員の要望にも柔軟に対応している。

人気は1泊2日の「プレミアムドックコース」
SBIメディックの人間ドックには現在、2つのコースがある。1泊2日で全身のありとあらゆる病気をチェックできる「プレミアムドックコース」と、自分に必要な検査・治療を組み合わせる「フレキシブルコース」だ。

SBIメディックの2つのコース
プレミアム
ドックコース 2日間で全身の健康状態をチェックする総合人間ドック(100万円相当)。心疾患・脳疾患・がんの早期発見に加え、オーラルチェック、アンチエイジングの検査項目も網羅する。
フレキシブルコース セミオーダー感覚で以下のドックを組み合わせられる。
1.総合人間ドック「ライト」「スタンダード」(男性・女性)
2.心臓ドック
3.脳ドック
4.がんドック
5.ものわすれドック
6.レディース・ドック
7.エイジマネジメント・ドック
8.PET-CT検査
オーラルチェックも利用可
※いずれのコースも、歯科・形成外科などの自由診療を20%引きで受診できる

1泊2日のプレミアムドックコースを利用した人は、宿泊先として、同じビル内にあるフォーシーズンズホテル丸の内のほか、シャングリ・ラホテル東京、ホテルメトロポリタン丸の内の3ホテルのいずれかを優待価格で利用できる。現在のところ、プレミアムドックコースで総合的にしっかり検査を受けたいとする会員が多いという。検査内容は以下の通りだ。

SBIメディック「プレミアムドックコース」の主な検査項目(2日間)
所要時間:【医科】1日目約7時間 2日目約3~7時間
     【歯科】約1時間
検査項目 内 容
内科診察 問診、触診
眼科系、
聴力検査 視力、眼底、眼圧、オージオメーター
検体検査 血液検査(80項目)、血液サラサラ度検査、アンチエイジング検査、心筋梗塞・脳梗塞発症リスク検査(Lox-index)、腫瘍マーカー、免疫系検査、糖化度・酸化度検査、尿検査、ピロリ菌検査、喀痰細胞診
生理機能検査 心電図、心筋虚血診断検査(MCG)、肺機能、身体計測、血管年齢(CAVI/ABI)、骨密度
画像検査 超音波検査(心臓・腹部・頸動脈・甲状腺)、冠動脈造影CTあるいはMRI、胸部検査(X線、80列CT)、内臓脂肪CT、腹部CT、MRI(頭部・骨盤)、頭頸部MRA、胃内視鏡検査、大腸検査(内視鏡またはCT)
特殊検査 高次脳機能検査、自律神経検査、腸内フローラ、毛髪ミネラル、糖化度・酸化度検査
婦人科検査
(女性のみ) 乳腺・経膣超音波検査、マンモグラフィ、内診、子宮頸部細胞診、乳房触診
オーラルチェック 歯周病検査、う歯(虫歯)、細菌検査 ※歯科へ移動して実施


院長の専門分野を活かし、循環器系の検査が充実
東京国際クリニック/医科 院長の高橋通氏。筑波大学医学専門学群卒業後、国立国際医療研究センター、東京大学大学院、六本木ヒルズクリニックを経て、2015年より現職。循環器専門医であり、専門を活かした親身なカウンセリングが好評。
東京国際クリニック/医科の院長を務める高橋通氏は、国立国際医療研究センターや六本木ヒルズクリニックなどで診療を行ってきた、循環器専門医。その専門性を活かし、循環器系の最新鋭の機器がそろっているのがSBIメディックの第二の特徴だ。たとえば、冠動脈造影CTは、心臓カテーテル検査とほぼ同精度で冠動脈の走行・狭窄を調べるもので、心筋梗塞のリスクを知るのに有効だ。これに加えてMRI(磁気共鳴断層撮影装置)の設備も整っているので、いずれかを選ぶことができる。
また、心電図の波形を周波数解析し、心筋の血の巡りが悪い“虚血”になっていないか、不整脈が起きやすくないかを調べる心筋虚血診断検査(MCG)も導入している。
「造影剤を使う検査にはアレルギーなどのリスクを伴いますが、MCGでは造影剤を使いません。放射線も使わないので、患者さんの安心感は高いと言えます。大学病院のように大規模な施設は別として、一般の人間ドックでは、造影CTかMCGのいずれかを選ぶケースが大半です。当院のプレミアムドックコースは両方の検査が受けられるので、そのぶん情報量が増え、多方面からアプローチできます」(高橋院長)。
循環器系を強みとする一方、消化器系の検査の充実ぶりも目を引く。たとえば、大腸検査は、大腸内視鏡検査だけでなく、大腸3D-CT検査(*1)も選択可能。大腸内視鏡検査は、1m以上もある内視鏡を肛門から挿入しなければならないが、3D-CT検査の場合は、腸を膨らますための炭酸ガスを注入するチューブを肛門から数cm入れるだけ。撮影自体も10分以内で終わるため、内視鏡ほどの負担はない。ただし、5mm以下の小さな病変がある場合は、内視鏡の方が発見率が高いとされる。どちらにするかは本人次第だが、女性は3D-CTを選ぶ人が多いという。
*1 CTで撮影したデータを画像処理によって再構成し、内視鏡で腸内を見た時のような三次元映像を作成する検査。「バーチャル内視鏡」とも呼ばれる。参考記事(「内視鏡より楽に大腸がんをチェックできる大腸3D-CT検査」)

「オーラルチェック」で医科と歯科が連携
SBIメディックの第三の特徴は、医科と歯科がタッグを組んでいる点だ。
いずれのコースにもオーラルチェック(口腔内検査)が組み込まれており、東京国際クリニック/歯科で、約1時間かけて、歯周ポケットの深さや歯周病の有無を入念にチェックしてもらえる。
歯周病は、わかりやすく言えば歯茎の感染症。歯周病菌は口の中にとどまらず、血液を介して全身に広がり、動脈硬化などの一因となる。一般的な人間ドックには、歯科の検診は含まれておらず、医科は医科、歯科は歯科、と分断されがちだが、ここでは歯周病の定期的なチェックとその後の治療によって、糖尿病や心疾患などの早期発見やリスク軽減に役立てている。

東京国際クリニック/歯科の受付(左)。院長の清水智幸氏(右)は、日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学と奥羽大学で歯周病学の第一人者に師事。2009年より現職。

見た目の追求だけではない「エイジマネジメントドック」
男性ホルモンや女性ホルモン、血管の柔軟性、体の酸化度&抗酸化度などを調べる、アンチエイジング系の検査項目の充実も、同施設のユニークな特徴だ。プレミアムドックコースには一通り組み込まれており、フレキシブルコースでも「エイジマネジメントドック」を選ぶことで受診可能だ。
アンチエイジングといえば、見た目の若さばかりを追求すると考えがちだが、同施設でこれを検査に組み込む理由は別のところにもある。「アンチエイジング系の検査には、実は健康状態や病気に直結する要素が多くあるため、他の検査と併せて分析すれば新しいアプローチができるのです。たとえば、女性の場合、閉経後にエストロゲンが低下するとコレステロールが上がり、心血管疾患が増えます。当院では循環器系の検査に力を入れているので、心血管疾患のリスクを調べる上でもアンチエイジング系の検査は有効です」(高橋院長)。
東京クリニック医科では、しわ・たるみ治療やシミ治療、毛髪再生治療などの自由診療も行っており、東京国際クリニック/歯科でも歯周病治療、審美治療、インプラントなどの自由診療を行っている。会員は、これらの治療も20%引きで受診可能だ。「検診のついでに受けてみようか」と、シミ治療を希望する男性会員も少なくないという。このほか、24時間365日の電話相談、専門医紹介、セカンドオピニオン外来の紹介も行い、会員の健康管理をきめ細かくサポートしている。

会員の多くは、企業創業オーナーをはじめとするエグゼクティブ
SBIメディックの料金は、年会費込みで初年度216万円(税込)。会員は約450人(2016年6月現在)で、平均年齢は約58歳。多くは企業の創業オーナーやエグゼクティブで、出張のついでに受診する人も珍しくないという。
「50歳代を過ぎると、がんに次いで心疾患・脳血管疾患のリスクが増えていきます。会員の方はまさにこのリスクにさらされる世代である上、経営者という立場上、常にストレスを抱える人が多いはず。だからこそ、がんはもちろん、心疾患・脳血管疾患についても密な検査を行いたいと考えています」と高橋院長は話す。

SBIメディック価格表(円)
入 会 金 年 会 費 検診券枚数 会員資格期間
本体価格 1,500,000 500,000 1枚(無記名式) 15年
消費税 120,000 40,000
合 計 1,620,000 540,000
※同時に2口以上を申込む場合、同一名義に限り、2口目以降は入会金1,000,000円(税別)で入会可能
※入会は、法人・個人いずれでも可能
※検診券1枚はプレミアムドックコースの1回分。フレキシブルコースは、年会費の範囲内で複数の検診や自由診療の選択が可能。
同施設では2016年春に会員専用ラウンジを拡張し、リカバリールームを増設したばかり。加えて、エグゼクティブカウンセリングルームもオープン。銀座や有楽町の街並みを見下ろす部屋で、検査結果や今後の治療について、検査結果を見ながら院長みずからじっくり相談に応じてくれる。2017年には会員専用の検査室も増設し、さらにサービスを拡充する予定だ。

【日経Gooday】
by kura0412 | 2016-08-12 11:24 | 歯科 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラー片手に歯科医師の本音

『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




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