日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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『医療行政の舞台裏◎厚労省3局が連携へ』

医療行政の舞台裏◎厚労省3局が連携へ
高額薬剤問題が崩した縦割り行政の壁

新しいタイプの抗癌剤であるニボルマブ(商品名オプジーボ)が火を付けた高額薬剤問題が、急展開を見せている。放置したままでは医療保険財政に大きな影響を及ぼしかねないと、厚生労働省が本格的な対策に乗り出したのだ。

我が国の研究成果を応用したこの薬は、2014年9月、世界に先駆けて日本で発売された。当初の適応症は悪性黒色腫(メラノーマ)だったが、2015年12月には進行性非小細胞肺癌にも拡大された。ニボルマブは、癌細胞を直接破壊する従来の抗癌剤とは異なり、体が本来持つ免疫機能の力を引き出して癌細胞を攻撃する。これまで救えなかった一部の末期癌患者にも高い効果を発揮することから、発売直後は「夢の新薬」とも評された。
風向きが変わったのは、今年4月の財政制度等審議会での議論から。ニボルマブの普及が進めば、国の医療費負担は青天井で増大していくとの試算が示された。
体重60kgの肺癌患者がニボルマブを1年間使うと、3500万円もの薬剤費が掛かる。仮に患者5万人が使用すれば、薬剤費だけで年1兆7500億円に達する計算だ。財制審では、試算を公表した医師が「これほど高額の薬代が掛かれば、たった1剤で国が滅ぶことになりかねない」とする持論を展開。以来、メディアもこの問題を大きく取り上げ、期待の新薬は批判にさらされる機会が増えた。
こうした状況に、厚労省も重い腰を上げた。7月に入って、高額薬剤に対する規制を強化する方向性を明確に打ち出したのだ。7月27日の中央社会保険医療協議会では、薬の価格を柔軟に見直す新たな仕組み作りに着手することを表明。今の制度では、薬価の見直しは2年に1回しかできない。だが、2016年度に導入した、売れ過ぎた薬剤の価格を大幅に引き下げる「特例拡大再算定」を臨時で適用することや、適応の拡大に合わせて薬価を引き下げることを検討する考えを示した。

高額薬剤の価格に関しては、既に進行中の案件もある。現行の薬価算定ルールでは、価格が効果に見合ったものかどうかが一切考慮されていない。それを改め、薬の効果を見定めて価格に反映させる「費用対効果に基づく評価」の仕組みを導入することが既に中医協で決定済みだ。現在は試行段階で、2018年度に本格実施となる。
さらに、厚労省は薬の価格を見直すだけではなく、高額な薬剤が適正に使用されるように、病院や医師向けの指針作りにも着手する。指針には、薬の使用が最適と考えられる患者の選択基準や、適正に使用できる医療機関や医師の要件などを盛り込む方向だ。まずはニボルマブに加え、高コレステロール血症治療薬のエボロクマブ(レパーサ)とその類薬を対象とし、学会の協力を得た上で年内の作成を目指す。指針から外れた使い方をした場合、公的保険を適用できない仕組みとすることも検討する。
つまり、高額薬剤を巡っては現在、
(1)改定を待たずに薬価を引き下げる、
(2)費用対効果が悪い薬は薬価を下げる、
(3)より厳格な使用規制を設ける─という3つの包囲網が迫っているわけだ。

これらの対策を進めるのは、厚労省の保険局、医薬・生活衛生局、医政局の3局。それぞれ、薬価算定や保険給付範囲に関する業務、薬の承認審査や安全対策、医療提供体制や臨床研究の施策をつかさどる部署だ。従来、厚労省内の議論は、局をまたぐテーマについては担当部局が自らの局に都合のいい主張ばかりするため、実のある結論を得られないことが少なくなかった。だが、今回は珍しく3局が緊密に連携している。高額薬剤問題が思わぬ形で縦割り行政の壁を突き崩したと言ってもいいだろう。

【日経メディカル】
by kura0412 | 2016-08-10 08:37 | 医療政策全般 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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