『5分でわかる英EU離脱の争点と世界経済への影響』

5分でわかる英EU離脱の争点と世界経済への影響

英国でEU(欧州連合)残留の是非を問う国民投票が23日に行われる。離脱派が勝った場合、何が起こるのか。不確実な要素が多く、今後の展開を予想するのは難しい。だが、その不確実性の高まりこそが、世界経済に混乱をもたらしかねない。(「週刊ダイヤモンド」論説委員 原 英次郎)
英国でEU(欧州連合)残留の是非を問う国民投票が、目前に迫ってきた。英国はEU加盟28ヵ国のうちGDP(国内総生産)では、ドイツに次ぐ第2位の大国である。もし離脱派が勝利したら、何が起こるのか。簡単にまとめてみよう。

いまでもEU内での特別の存在
まず、英国とEUの関係を確認しておこう。英国はEU加盟国でありながら、一定の独自性を持つことを許されている特別な存在と言える。
周知のようにEU内ではヒト・モノ・カネが自由に移動できる。EU内であれば、国境を超える時もパスポートコントロールはなく、貨物も自由に行き来できる。1999年には欧州単一通貨ユーロが導入されたため、EU域内では通貨を交換する必要はなくなり、金融政策もECB(欧州中央銀行)に統合された。
これに対して、英国は単一通貨ユーロには参加していない。また人の移動の自由を保証した「シェンゲン協定」にも入っていないため、パスポートによる出入国者のコントロールはできる。もっとも、EU加盟国の国民であれば、簡単に入国できる。
EU全体のGDPに占める英国のシェアは17%、当然ながら貿易関係も深い。英国の輸出に占めるEUのシェアは2015年で5割弱に達する。反対にEU諸国の輸出に占める英国のシェアは10%前後である(図表1)。一見すると高くないように見えるが、1国向けとしてはドイツ向けと並んで高いシェアを占める。ちなみにドイツの輸出では、米国向けと英国向けのシェアが高い。
もう一つの特徴はロンドンのシティが世界の、そしてEUの金融センターの役割を果たしていること。中近東のオイルマネーのみならず、ロシア、中国からの資金もシティに集まり、世界そしてEUに再投資されていく。日本を始め、EUの名だたる金融機関がシティに拠点を置いている。国境を越える融資では約20%弱、外国為替取引では40%と、世界1のシェアを誇っている。
そもそもシティは世界の金融センターとしての長い歴史を持っている。世界の共通言語である英語圏であることに加えて、金融業に従事する人材の厚みがある。さらにEU加盟国であるため、英国で金融業の免許を取ると、他のEU諸国でも活動できる単一免許制度の恩恵が大きかった。

焦点は移民、拠出金負担、国家主権
日本在住で現在、英国リーズ大学大学院で学ぶポール・クレイグ氏によれば、EU離脱派と残留派の対立点は、三つにまとめられる。
もっとも大きな争点が移民問題。
「英国の低所得層の人々は、英国人より低賃金でも喜んで働く東欧諸国からの移民が、自分たちの職を奪っていると感じている。低所得層の居住地域には、さまざまな国からの移民が数多く住んでいる」(クレイグ氏)。実際、04年に東欧諸国がEUに加盟してから、EU域内からの移民が増加(図表2)し、政府は移民をコントロールできていないという批判にさらされている。これに対して、残留派は少子高齢化進む中で、特に若くて、スキルのある移民は英国経済にとって、必要不可欠だと考えている。
二つ目がEUに支払う拠出金の問題。
EU加盟国は原則GDPの1%をEUに拠出金として支払う。実は英国は特別扱いで還付金を差し引いた純負担率はドイツ、フランスより低いにもかかわらず、離脱派は英国は常に支払い超過であるため、EUから離脱すれば、英国のために拠出金が使えると主張している。これに対して残留派は、EUから多額の農業補助金など還付金があるのに加え、貿易・金融面などで拠出金以上の恩恵を受けていると主張している。
三つ目が国家の主権にかかわる問題だ。
EUの歴史は統合を深化させる歴史だったが、もともと大陸のEU諸国より独立心の強い英国は、EUで決定した法やルールによって統治されることを嫌う傾向がある。離脱派は自分たちの法律は自分たちで決めるべきだと主張するのに対して、残留派はEUにも英国のリーダーが参加して、法の策定に関わっているではないかと反論する。
総じて見れば、低所得層、低学歴層に離脱支持者が多く、富裕層あるいはリベラルな考えを持つ人たちに、残留支持者が多いとみられる。2大政党である保守党、労働党の中でも、離脱派と残留派に意見が分かれており、特にキャメロン首相が率いる保守党は離脱派も多く、国民投票でどちらが勝つか、だれにも分からない。確かなことは「英国が二分されてしまった」(クレイグ氏)ことだけだ。

世界経済後退の引き金に
では、国民投票で離脱派が勝ったら、何が起こるのか。
「当初はポンド安、金利上昇、英国の株安が起こるだろう。しかし、その後の離脱の過程で、どう物事が進むのか。パターンが多くて手掛かりが得にくい」。こう語るのは大和総研経済調査部の山崎加津子主席研究員。つまり、不確実性が急速に高まるわけだ。
離脱派が勝った場合、英国が欧州理事会にEU離脱の意志表明をしてから離脱の最終合意に至る期間は2年とされている。離脱手続きはリスボン条約第50条に基づいて行われるが、一度告知した後の撤回はできない。
まず問題は英国内にある。残留を主張するキャメロン首相は、離脱派が勝っても辞任しないと表明しているが、果たして英国を代表して離脱交渉に当たれるのか。その場合、どのような条件を優先するのか。
離脱に際しては、EUとの間で貿易協定を結び直さなくてはならないが、その場合は、既存の枠組みを使うケースと二国間協定を結び直すという二つの方法が考えられる。例えば、前者ならノルウェーなどで構成されるEFTA(欧州自由貿易連合)に加盟する。EFTAはEUとの間でEEA(欧州経済領域)という自由貿易協定を結んでいるため、二国間で協定を結ぶ必要はなくなる。だが、EEAは人の自由移動を認めているため、移民の制限は難しい。英国の意志を優先するとなると、二国間協定を結び直すことになるが、膨大な時間がかることが予想され、その間、英国とEU経済に何が起こるか見通せない。

そもそも離脱派が勝った場合、英国では総選挙実施の可能性も取りざたされている。
総選挙で残留派の労働党が勝った場合は、政権を決める総選挙と国民投票の結果が異なるという複雑な事態が起きないとも限らない。
日本総研調査部の藤山光雄副主任研究員は「貿易を通じた直接的な影響は、懸念されているほど大きくはない。むしろ金融市場の混乱による影響が大きい」と見る。要は、不確実性の高まりを受けて、資金がリスクの高い資産から引き上げられるリスクオフが起こる場合である。
その場合は、ポンド安・ユーロ安、株安が起こり、その結果、海外の投資家は損失が発生するのを避けるためシティへの資金流入が減り、マイナス金利で収益力の低下したEUの銀行セクターの経営不安が再燃するかもしれない。リスクオフだから原油市場から資金が引きあげられ、ようやく安定した原油価格が再び下落することになるだろう。そうなれば新興国経済もダメージを受ける。安全資産としての円は買われて円高となり、日本経済にも悪影響が及ぶ。こうなれば金融市場の一時的な動揺にとどまらず、世界経済の後退を招く。

それだけではない、国民投票直後の6月26日にはスペインの総選挙、来年4月から6月にかけてはフランスの大統領選挙、秋にはドイツの総選挙がある。たとえ残留派が勝っても結果が僅差なら、こうした国々の反EUを掲げる極右、極左政党を勢いづかせる可能性がある。そうなれば、EUの政治が不安定さを増す。
残留派のコックス議員が射殺され、自粛されていた両派のキャンペーンも再開されたが、「キャメロン首相の議論はあまり説得的でない」(クレイグ氏)という。世紀の選挙は23日、結果は24日の午前4時ごろ(日本時間の正午ごろ)、判明する予定である。

【DAIMOND ONLINE】




「脱退通告」をいつするか。そこから2年後脱退となるようです。
ということは、この問題はそう簡単に終わるような状況は来ないかもしれません。そして、日本の経済にも大きく影響し、転換を求められる事態も考えられます。当然、社会保障にも回って回って波及してきそうです。
by kura0412 | 2016-06-25 12:17 | 政治 | Comments(0)

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