日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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舌に注目

舌の筋力を維持すれば全身の衰えを防げる!?
会話や歌、さきイカの咀嚼で老化を防止

同じ口の中にありながら、歯に比べると舌を意識することは少ないように思う。歯は毎日せっせと磨くのが普通なのに、舌を磨いている人はあまり見かけない(専用のブラシも市販されているのに)。
舌は味覚を感じる器官だが、それだけではない。例えば言葉を喋るとき、舌は重要だ。英語の「TH」が代表的だが、日本語にも舌がなかったら発音できない子音がいくつもある。そうなると、他人とコミュニケーションを取るのは難しくなるだろう。さらに、「舌がないと、ものを食べることもできなくなります」と指摘するのは日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック(東京都小金井市)院長の菊谷武さんだ。

舌がないとものを食べられない
いや、味が分からなくなるのは分かりますよ。でも歯さえしっかりしていれば、ものを食べることはできるんじゃないですか?
「歯があっても、舌がないと噛めません。舌が歯の上に食べ物を乗せてくれるから、噛むことができるんです」と菊谷さん。
1回噛むと、食べ物が歯の周りにはみ出す。それを舌が再び歯の上に乗せてくれるから、私たちはモグモグと咀嚼(そしゃく)することができる。また、目に見えている舌は全体の3分の2で、残りは食道の上まで続いている。食物を飲み込むときには、この部分が動いて食物を押し込むように食道に送り込むという。
つまり、舌がなければ食べることも話すことも極めて難しくなるということだ。あまり目立たないが、舌は生きていく上で欠かせない重要な器官なのだ。

舌の力と全身の筋力は関係していた
菊谷さんも加わった厚生労働省の疫学調査に、「虚弱・サルコペニアモデルを踏まえた高齢者食生活支援の枠組みと包括的介護予防プログラムの考案および検証を目的とした調査研究」(通称「柏スタディ」)というものがある。この調査は、2012~14年にかけて、柏市在住の65~94歳の高齢者2044人が参加した、体力と生活能力の関係を調べた大規模な調査だ。その結果、興味深い事実が分かった。
「膝を伸ばす力や握力などが弱い人は舌圧(ぜつあつ、舌の筋力)も弱かったんです。舌も骨格筋のひとつですから、考えてみれば当然なんですが、舌の力と全身の筋力が関係していることが明らかになりました」(菊谷さん)
ちなみに舌の筋力は舌圧測定器という機械を使って調べられる。ボール状になったセンサーを口に入れ、舌で押しつぶすようにして舌の筋力を測るのだ。
通常の成人男性は40キロパスカル(圧力の単位)前後だが、一般に年を取ると舌圧は落ちていき、65歳以上の高齢者は30キロパスカル近くに下がる。「30を切ったら要注意で、20を切ると食べ物を飲み込みにくくなる『嚥下(えんげ)障害』を起こすようになります」と菊谷さん。
運動の習慣がないと、歳を取るにつれて筋肉が減っていく。筋力が基準以下に減った状態をサルコペニア(筋肉減弱症)と呼ぶが、サルコペニアの人は舌圧も低かった(下図)。

筋肉が少ない人は舌の力も弱い
舌の力が弱くなると、咀嚼力、つまり食べ物を細かく噛み砕く力も落ちる。咀嚼力には歯の数が大きく影響するが、柏スタディに参加した高齢者の中に28本以上歯があった人が377人いた。その中で比べてみると、咀嚼力が低い人は舌圧も低かったという。
「舌の力が弱くなると咀嚼力も落ちるので、若い頃のように肉を食べられなくなる。その結果、たんぱく質が不足がちになってサルコペニアが進行する。筋肉が減ると基礎代謝も下がり、ますます食欲がなくなる、という悪循環に陥ります」と菊谷さんは説明する。
逆に舌の力を維持できれば咀嚼力も維持できる。咀嚼力があれば、硬い肉もモリモリ食べてたんぱく質を十分補給できるので、サルコペニアの防止につながる。筋肉が多いと基礎代謝が高くなって食欲もわく。よく食べることで、咀嚼力と舌の力が維持される――というナイスな循環が起こり、全身のアンチエイジングにつながっていく。

外に出かけて人と会うことも大切
舌も骨格筋のひとつである以上、歳を取れば衰えてくるのは仕方がない。歯が悪くて柔らかいものばかり食べていたり、人と話さない生活をしていたりすると、さらに舌の力は衰えていく。一般に舌の筋力は男性のほうが衰えやすいらしく、「女性の低下が抑えられているのは、お喋りだからかもしれません」と菊谷さん。
すると、アナウンサーやお笑い芸人など、喋りのプロは舌の力も強いのだろうか?
テレビ番組でお笑い芸人の舌圧を調べた菊谷さんによると、「さすがに舌圧が低い人はいませんでしたが、特別強いということもありませんでした」という。よく話すことで舌の力は維持できるが、手足の筋肉のように鍛えればどんどん強くなる、というものでもないらしい。舌に必要以上の筋力はいらないということだろう。

では、舌の力をキープするにはどうしたらいいのだろう。菊谷さんに具体的なトレーニング法を聞いた。
(1)歯を維持する
前に触れたように、ものを食べるのは舌と歯の共同作業。歯がなければ舌も活躍できないし、噛む回数が多いほど舌もたくさん動くことになる。貴重な歯を失わないように心がけて、少なくなってきたら早めに入れ歯などを入れてもらって対応しよう。

(2)人とお喋りをする
舌が働くのは食べるときと話すとき。他の筋肉と一緒で、使わなければ衰える。高齢になると仕事もリタイアして人と話す機会が減ってくる。意識的に人と会うようにしよう。人と話す機会が多い人は、自然と口の健康に気を使うようになるので、それもプラスになる。

(3)早口言葉とカラオケ
早口言葉は舌を鍛えるのに最適。また、カラオケもいい。どちらも「一生懸命やる」ことが大切で、自然と舌の筋力が高まるという。

(4)さきいかトレーニング
さきいかを1本口にくわえる。舌を使って、まず右の奥歯で1回噛む。次に左の奥歯に運んで1回噛む。左右10回ずつやる。終わったら飲み込んでもいいし、無理に飲み込まずに捨てても構わない。朝、昼、晩と1日3セット行う。舌圧を高めることに加え、舌をたくみに動かすトレーニングにもなる。

前に触れたように、舌の力が維持できるとサルコペニアの防止につながり、老化の進行を抑えられる。また、「咀嚼力が落ちると人と一緒に食事を楽しめなくなり、社会性にも影響する。舌圧や咀嚼力の低下は寝たきりへの第一歩ですよ」と菊谷さんは締めくくった。

【日経Gooday】




舌を歯科が取り扱うことには耳鼻科からの意見はありません。全身的な影響も含めて、領域拡大という点においても新しい着目点です。
by kura0412 | 2016-05-17 08:52 | 歯科 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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