『消費増税延期の是非は参院選で』

震災で「ダブル選断念」なら、消費増税延期の是非は参院選で問えばいい

2次災害を防げなかった
熊本地震の余震が続く中、安倍晋三首相が「夏の衆参ダブル選挙を断念した」との見方が広がってきた。地震そのものによる被害だけでなく、地震関連死が11人に上ると報じられる中、私もダブル選は難しくなった、とみる。
産経新聞が4月20日朝刊の1面トップで「首相、同日選見送りへ」と報じたのを皮切りに、21日の朝刊各紙はダブル選が難しくなった状況を伝えている。
正直に言うが、私はつい最近まで「地震があっても首相はダブル選に踏み切るだろう」とみていた。だが、19日に見方を変えた。理由は「エコノミークラス症候群で女性1人が死亡した」というニュースである。
地震で家が崩壊したり、土砂崩れに遭って死者が出るのと、エコノミークラス症候群で死者が出るのとでは、意味合いがまったく違う。前者は天変地異であり、避けようにも避けられない不可抗力だ。だが、後者は万全の対策があれば防げたかもしれない「2次災害」である。
2次災害を防げなかったのは、政府を始め行政の被災者対策が十分でなかったからだ。たしかに安倍政権は地震後、救命、救出、救援活動に全力を挙げてきた。活動はそれなりに成果を上げつつあったが、それでも万全ではなかった。そこは認めなければならない。
熊本では商業施設や展示場の駐車場、自宅周辺などで車中泊が広がり、数千人以上の人々が毎晩、車内で夜を過ごしている。避難所のスペースが圧倒的に足りないからだ。避難所はプライバシーの確保や食事提供、衛生管理の不十分さなども指摘されている。
報道によれば、医療の専門家がエコノミークラス症候群の広がりは「経験したことのない極めて異常な状況」と言っている。そうであれば救援態勢の不十分さも相まって、車中泊がもたらす障害が相当なスピードで拡大しているとみて間違いない。さらなる悲劇が起きる可能性もある。事態は長期戦になっている。
そんな状況で、安倍首相がダブル選を決断して支持を訴えられるだろうか。首相が遊説でマイクを握れば、有権者からは「こんなところで演説してないで、熊本を助けて」と言い返されてもおかしくない。

「増税延期」はどうするのか
ダブル選をすれば、衆院議員と参院議員の半数が失職し長期間にわたって政治空白が避けられなくなる。ここはダブル選をあきらめて、被災者対策に全力を挙げる。そういう判断は適切だと思う。それでもダブル選の可能性があるとすれば、被災者の状況が劇的に改善することが条件になるが、最終決断まで実質1ヵ月しかなく、それも難しい。
そもそも私がダブル選は不可欠と主張してきたのは、前回コラムにも書いたように、増税を先送りすべきであるからだ。首相が「次は必ず増税」と訴えてきた以上、再び先送りするなら解散総選挙であらためて国民の意思を確認する必要がある。
だが、地震を受けて増税を先送りするなら、多くの国民は納得するだろう。あえて総選挙に打って出る意味は薄れる。東日本大震災では復旧復興の名の下に増税したが、とんでもない誤りだった。本来なら復興予算は長期の借金で賄うべきだったのだ。
安倍政権は増税をどうするのか。
結論を言えば、2017年4月からの10%への引き上げはますます難しくなった。
安倍首相は「リーマン・ショック級の事態が起きないかぎり増税する」と述べてきたが、世界経済の不透明さに加えて、今回の大地震はまさしく異常事態である。

参院選を「意思表示」の場にすればいい
企業活動で言えば、トヨタ自動車が典型だ。サプライチェーンが全国に広がっているため熊本周辺に限らず、全国の工場が操業停止に追い込まれた。地震が景気を下押すのは、もはや避けられない。
5月18日に発表される2016年1〜3月期の国内総生産(GDP)には、4月に起きた地震の影響が織り込まれないが、それでもマイナス成長との見方が強まっている。そうだとすれば、4月以降はますます落ち込んで、当面の景気回復はまず期待できない。
これでは、とても増税を決断できないだろう。
増税を延期すれば、野党は「アベノミクスの失敗」と批判するに違いない。だが、中国のバブル崩壊に原油安、それに地震がもたらす悪影響をすべて一絡げにして「アベノミクスの失敗」と切って捨てるのは無理がある。
国民はそれほどバカではない。逆に、野党のピンぼけぶりと無能さが鮮明になるだけだ。
「地震で被災者が苦しい生活を強いられ、景気も悪化する。そのうえ国民に増税の負担を強いることはできない」と説明すれば、総選挙をしなくても、国民は了解してくれるはずだ。国民の意思表明という点では参院選がある。

参院選の延期は不可能だからこそ
ダブル選だけでなく、いっそ7月の参院選も延期したらどうか、という声もある。ちなみに、2011年3月の東日本大震災では直後に統一地方選があったが、臨時特例法を作って一部被災地の地方選を延期した。
だから今回、同じように特例法を作って7月の参院選を延期できるかといえば、それはできない。
東日本大震災の後、当時の自民党衆院議員が野田佳彦内閣に「緊急事態で議員の任期を延長できるか」という質問主意書を提出した。
それに対して、野田内閣は「憲法45条で衆院議員の任期は4年、46条で参院議員の任期は6年と決まっており、臨時特例法のような法律を制定して国会議員の任期を延長することはできない」という趣旨の答弁書を衆院議長に送っている。
安倍内閣が野田内閣の見解を踏襲するとすれば、今回の参院選は予定通り、実施される。ということは、消費増税先送りに対する国民の意思は参院選で示される形になる。

【長谷川幸洋:ニュースの深層】



これで衆議院解散権は、完全に安倍首相に握られました・
by kura0412 | 2016-04-22 10:22 | 政治 | Comments(0)