『介護療養では肺炎による死亡も多い』

特養と老健の7割、介護療養の8割で積極的な看取りを実施―2015年度介護報酬改定・結果検証2

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と介護老人保健施設ではおよそ7割、介護療養型医療施設ではおよそ8割の施設では、看取り期に入った入所者に対して看取りが行われており、その場合、特養ホームと老健施設の8割で看取り計画が立てられている―。
こうした状況が、16日の社会保障審議会・介護給付費分科会「介護報酬改定検証・研究委員会」に厚生労働省が提出した2015年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(2015年度調査)結果から明らかになりました。

特養と老健では老衰による死亡が大半だが、介護療養では肺炎による死亡も多い
お伝えしたように、介護報酬についても2015年度報酬改定の効果・影響について調査が行われています(関連記事はこちら)。今回は、「介護保険施設等における利用者等の医療ニーズ」の状況に焦点を合わせてみましょう。
まず介護保険3施設における定員100名当たりの死亡対象者数を見ると、特養ホームでは4.8名、老健施設では3.9名、介護療養では16.6名という状況です。ちなみに医療療養では20対1で29.6名、25対1で31.0人となっています。
また退所者に占める死亡退所者の割合を見ると、老健施設では20%未満の施設が8割弱なのに対し、特養ホームでは80%以上の施設が5割弱となっていることが分かりました。ただし、特養ホームでは「病院に入院しても3か月以内に退院が見込める場合には退所と扱わない」旨が厚労省令(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準)で定められているため(病院に入院して死亡した入所者も死亡退所者にカウントされる)、割合が高くなっている点も考慮する必要があります。

なお、死因(主たるもの)について見ていると、特養ホームと老健施設では老衰が58.3%、47.2%と最も多くなっていますが、介護療養では肺炎(25.5%)と老衰(25.4%)が多くなっており、若干の違いがあります。

計画に沿った看取りの実施は、特養と老健の半数程度、介護療養の25%程度
このように介護保険施設で人生の最期を迎える方も一定程度いるわけですが、各施設において看取りの状況はどのようになっているのでしょう。
今般の調査結果からは、特養ホームの76.1%、老健施設の64.0%、介護療養の81.9%で「看取り期に入った入所者に対して看取りを行っている」実態が明らかになりました。前年度(2016年度)調査に比べて、看取り実施の割合が高まっています。
また、看取りを実施している場合に「全員に看取り実施計画を策定している」施設の割合は、特養ホームで51.1%、老健施設で45.2%、介護療養で25.4%となっています。ただし在宅復帰機能強化型の介護療養では看取り計画を立てていない施設の割合は5.9%(介護療養全体では31.5%)に止まっています。

看護職員から見た「在宅生活がふさわしい利用者」、老健では55.2%
次に、介護保険施設に勤務する看護職員が、「利用者に必要な医療」「利用者の必要な介護」「最も適切な生活・療養の場」をどう考えているのか、を見てみましょう。
介護保険3施設別に、入所者のうち「在宅医療・外来医療で対応可能な人」がどの程度いるのかを見ると、特養ホームでは43.2%(在宅11.7%、外来31.5%)、老健施設では55.2%(在宅22.6%、外来32.6%)、介護療養では26.5%となっています。
また入所者のうち「在宅の介護サービスで対応可能な人」がどれだけいるのかを見ると、特養ホームでは5.4%、老健施設では27.4%、介護療養では11.8%となっています。
さらに、自宅での生活・療養がふさわしいと考えられる入所者の割合については、特養ホーム5.7%、老健施設23.5%、介護療養7.5%という状況です。
こうした数字を見ると「老健施設には医療・介護の必要性が低く、自宅に戻れるにもかかわらず入所している人が多い」と考えてしまいますが、そもそも老健施設は在宅復帰を目指す施設であり、リハビリなどによって「在宅復帰が見えてきた」利用者が多いと考えるべきでしょう。老健施設が「本来の機能」を果たしていると言えます。

医療療養の医療区分1患者、在宅・外来で対応可能な人は5割程度
また、介護保険3施設における医療区分1の入所者(診療報酬上の医療区分)の状況を見ると、「自宅での生活・療養がふさわしい」人(看護職員の判断)は、特養ホームで5.9%、老健施設で26.1%、介護療養で9.1%、医療療養で23.6%となっています。
ここで、現在、各都道府県で策定が進められている「地域医療構想」では、「医療療養に入院する医療区分1の患者の7割は、在宅医療等で対応する」ことになります(厚労省の地域医療構想策定ガイドライン)。

調査結果を眺めると、医療療養の入院患者にとって、最もふさわしい生活・療養の場は、自宅23.6%、特養ホーム16.0%、老健施設10.6%、医療療養24.1%、介護療養14.9%などとなっており、「医療療養でなければ対応できない患者」の割合は地域医療構想と合致していると見ることもできます。
ただし、必要な医療については、入院40.4%、在宅37.4%、外来14.9%などとなっており、「7割を在宅医療等で対応する」ことが適切かどうか、改めて検証する必要もありそうです。

在宅強化型・加算型の老健、訪問指導や情報共有に積極的
ところで、老健施設については2012年度の前回介護報酬改定で「在宅強化型」(基本報酬が高く設定されている)と「加算型」(在宅復帰・在宅療養支援機能加算を算定)が新設され、2015年度改定でも評価の充実が行われました。
この在宅強化型・加算型と従来型を比べてみると、在宅強化型・加算型では、「入所前後訪問指導」「入退所前後以外における自宅などへの訪問」「入院・入所1週間以内の退所・退院調整」「在宅復帰を見据えた家族への指導・助言」「退所・退院計画の入所者・家族との共有」などを実施している割合が高いことが明確となりました。
裏を返せば、利用者宅の訪問や利用者・家族との情報共有などが、在宅復帰にとって極めて有効であるとも考えられます。
急性期入院医療でも平均在院日数の短縮と、そのための退院支援の充実が大きなテーマとなっており(関連記事はこちらとこちら)、老健施設の取り組みも重要な参考情報となりそうです。

【メディウオッチ】
by kura0412 | 2016-03-25 08:37 | 医療政策全般 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラー片手に歯科医師の本音

『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




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