日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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『新診療報酬に反映された日本医師会の復権』

医療行政の舞台裏◎要件に異例の「医師会の協力」も登場
新診療報酬に反映された日本医師会の復権

中央社会保険医療協議会は2月10日に開いた総会で、4月に実施予定の診療報酬改定案を取りまとめ、塩崎恭久厚生労働相に答申した。今回は、診療報酬本体の改定率がプラス0.49%とわずかにとどまったこともあり、初・再診料など基本診療料の点数は据え置かれた。
病院に比べて算定できる診療報酬項目が限られる診療所にとっては、初・再診料の引き上げこそが望ましい。だが、国の財政状況や諸々の情勢を考えれば、今回の改定での実現が難しいことも事実だ。
そのため、診療所開業医を会員に多数抱える日本医師会(日医)は頭をひねったに違いない。今回決まった改定項目の中には、診療所にとって経営的にメリットが大きい内容が、目立たない形で盛り込まれることになった。実現の可能性が低い初・再診料の引き上げを声高に叫ぶのではなく、着実に実利を得に動いた日医の戦法が奏功した格好だ。

今回の改定論議では、薬剤使用の適正化が重要課題の1つに挙がっていた。医療費のムダにつながるとして特に問題視されたのが、大量の薬の飲み残し、いわゆる残薬だ。その解消に向け、患者宅にある服用薬を保険薬局に持参させて残薬削減に取り組むという方針が、中医協では早い段階から議論されてきた。
ところが、議論は思わぬ展開を見せる。残薬整理は保険薬局の薬剤師に任せる方向で話がまとまるかと思いきや、日医出身の診療側委員から「物言い」が付いた。大病院での行き過ぎた長期処方が残薬につながっているとして、長期処方に制限を掛けるべきだとする主張を打ち出したのだ。
結局、それが通る結果となり、4月からは、30日を超える長期処方を行う際には次のような取り扱いをすることになった。医師は患者に対して、長期投薬が可能な程度に病状が安定し服薬管理が可能であるかを確認し、病状変化時の対応法を伝えておく。それができない場合には、(1)30日以内に再診する、(2)200床以上の病院なら200床未満の病院か診療所に文書による紹介を申し出る、(3)病状は安定しているが服薬管理が難しい場合は分割指示処方せんを交付する──のいずれかを実行しなければならない。
要は、初診も再診も処方期間は30日を原則とし、それを超える場合は理由を書く。それが嫌な大病院は、診療所や中小病院に患者を紹介して診てもらえ、という話だ。明らかな患者誘導策であり、後者にとってうまみが大きい。

別の改定項目にも、日医のしたたかさは見て取れる。
4月から解禁されることになった「在宅医療専門診療所」の開設要件がそれだ。
近年、在宅医療を主力業務とする診療所は珍しくなくなったが、現状では外来診療を行わずに往診と訪問診療のみを手掛けることは認められない。この規制が緩和され、(1)無床診療所である、(2)在宅医療を提供する地域をあらかじめ規定する、(3)外来医療が必要な患者に対応できるよう、地域医師会から協力の同意を得るか、地域内に協力医療機関を2カ所以上確保する──などの要件を満たせば、在宅専門診療所を開設できるようになる。
ここで注目したいのは3番目の要件だ。「地域医師会から協力の同意を得る」が、クリアすべきハードルの1つとなっている。診療報酬上、医師会のお墨付きを得なければならないとする要件が明文化されたのは恐らく初めてのことであり、極めて異例だ。
安倍晋三政権と日医の現執行部の関係は良好で、「蜜月」とさえいわれる。今回の改定内容を見る限り、民主党政権時代に自民党推薦を変えなかったばかりに冷遇されていた日医は、完全な復権を遂げたといっていいだろう。

【日経メディカル】




前のブログにある調剤とは随分雰囲気が異なります。では歯科の今回の改定結果は・・・
by kura0412 | 2016-03-10 10:43 | 医療政策全般 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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