『どこを目指す?「ミニ中医協」化する社保審』

どこを目指す?「ミニ中医協」化する社保審

厚生労働省は10月、社会保障審議会の部会に、2016年度診療報酬改定に向けた基本方針の骨子案を提示した。
骨子案には「基本的視点」として、
(1)医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムを推進する、
(2)患者にとって安心・安全で納得できる効率的で質が高い医療を実現する、
(3)重点的な対応が求められる医療分野を充実する、
(4)効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める
─の4つを明記した。
この基本的視点を見て、筆者は激しい既視感に襲われた。ほぼ同じ内容を、10年前の2006年度診療報酬改定を巡る議論の際から連続して5回、繰り返し見ているからだ。あえて目新しい点を探せば、「地域包括ケアシステム」という言葉が入ったことぐらいだろう。

2006年度改定を境に、診療報酬の決め方は大きく変わった。かつては中央社会保険医療協議会が絶大な権限を有しており、改定の方向性を定めて、それに基づく具体的な点数設定に至るまでを主導。改定率の決定にも大きな影響力を持っていた。だが、2004年4月に歯科診療報酬を巡る中医協汚職事件が発覚したのを機に、改定の基本方針は社保審の医療部会と医療保険部会が策定することになり、中医協はあくまで個別の点数設定を審議する場と位置付け直された。
社保審での基本方針に関する議論は、改定前年の9月から11月にかけて行われ、12月初旬に中味が確定する。だが、基本方針の策定を待って診療報酬の見直し論議を始めたのでは、項目数が膨大であるだけに翌年春の改定に間に合わない。そのため、中医協では改定前年の春から、次の改定に向けた基礎的な議論を進めている。社保審で基本方針が策定される頃には、既に議論は本格化しており、個別の論点が幾つも挙がっているのが常だ。
つまり、中医協の個別項目の議論を後追いする形で社保審で改定の基本方針が決まるという、本来とは逆の手順になっているのが今の仕組みなのだ。
そのせいもあり、社保審の基本方針には医療現場の課題を網羅するような当たり障りのない文言が並び、代わり映えしない内容にとどまるのが通例となっている。

医療現場の課題は一朝一夕に解決できるものではない。とはいえ、10年前からほぼ変わらぬ内容が並び続けるのでは、あまりに進歩がない。実際のところ社保審での審議状況と言えば、委員が思い思いの要望を述べる場面が目立ち、基本方針を議論するというよりは「ミニ中医協」といった感じになっている。
そんな状況に対して10月22日、社保審の医療部会で委員の一人である東京大学法学部教授の樋口範雄氏から、こんな苦言が呈された。「本来であれば、基本方針に基づく改定の結果、どのような影響があったかの検証を行い、議論を深めた上で次の方向性を打ち出すべきだ。そもそも総花的な内容が、改定の基本的視点、目指すべき方向性としてふさわしいのか」。この本質的な問い掛けには、筆者も含め、思わずうなずいた記者が多かった。しかし、この発言の後も議論が深まることはなく、委員たちからは「こんな医療行為を診療報酬で評価してほしい」といった要望が相次ぐ、いつもながらの光景が展開された。

せっかく10年前に診療報酬改定の決定プロセスを見直し、中医協と社保審とで役割分担をしたのだから、もっと建設的に議論を進められないものだろうか。
例えば、改定の直後から次の改定に向けた基本方針の議論を社保審で1年以上かけてじっくり行うことにして、その際、基本方針の達成状況を別の組織に評価してもらうといった方法も考えられるだろう。いずれにせよ、改定を巡る議論を今の形で続けていては、社保審での議論の形骸化は防ぎようがない。

【日経メディカル】




その中医協も官邸サイドの意向に大きく左右されているのが現状です。
by kura0412 | 2015-11-10 10:53 | 医療政策全般 | Comments(0)