『脳卒中後の抗菌薬予防投与に肺炎抑制効果なし』

Lancet誌から
脳卒中後の抗菌薬予防投与に肺炎抑制効果なし
嚥下障害合併者を対象としたランダム化比較試験STROKE-INFで判明

脳卒中の急性期には約1割の患者が肺炎を発症し、発症率は嚥下障害の合併者で高いことが知られている。英King's College LondonのLalit Kalra氏らは、英国の脳卒中ユニットに入院した脳卒中患者のうち、脳卒中後に嚥下障害を発症した1200人を対象に、抗菌薬の予防投与の有用性を調べるランダム化比較試験「STROKE-INF」を実施。抗菌薬を予防投与しても肺炎の発症率は低下しないことを明らかにして、Lancet誌電子版へ2015年9月3日に報告した。

急性脳卒中後に約10%の患者が発症する脳卒中後肺炎は、死亡リスクの上昇と機能的な転帰不良に関係する。脳卒中後に50~55%の患者が嚥下障害を合併するが、肺炎罹患率は嚥下障害があると16~19%と、嚥下障害がない患者(2~8%)より高いことが報告されている。嚥下障害を示す脳卒中後の患者に抗菌薬を予防的に投与すれば、脳卒中後肺炎や死亡、障害を防げる可能性があるが、抗菌薬関連の感染症のリスクが上昇する可能性もある。

著者らは、脳卒中後に嚥下障害が認められた患者に対する抗菌薬の予防的投与が、脳卒中発症から14日以内の肺炎のリスクを低減するかどうかを明らかにするため、オープンラベルのクラスターランダム化試験を実施。2008年4月21日から2014年5月17日まで、UK National Stroke Auditに所属している英国の脳卒中ユニット48施設を、施設単位で2通りのケアにランダムに割り付けた。24施設は、脳卒中ユニットで行う標準的なケアを実施。残りの24施設は、標準的なケアに加え、7日間、抗菌薬を予防投与した。予防投与には、クラリスロマイシン(商品名クラリシッド、クラリス他)と、アモキシシリン(サワシリン、パセトシン他)またはアモキシシリン・クラブラン酸配合剤(オーグメンチン、クラバモックス)を用いた。
主要評価項目は、脳卒中の症状発現から14日以内の肺炎に設定。脳卒中発症の有無は、米CDCの肺炎診断基準に基づく階層アルゴリズムまたは主治医の判断に基づいて判定し、intention-to-treat分析した。割り付け後14日以内に11ユニットが参加の意思を撤回したため、37ユニットの1217人(抗菌薬群618人、対照群602人)がintention-to-treat分析の対象になった。
抗菌薬群の患者の平均年齢は77.7歳で男性が43%、89%が脳梗塞。対照群の平均年齢は78.0歳、男性は43%で、91%が脳梗塞だった。脳卒中発症から7日後までに、抗菌薬群の477人(78%)が、割り付けられた抗菌薬の予防投与を受けた。一方、対照群の144人(24%)も、感染症の発症や原因不明の発熱に対して、何らかの抗菌薬の投与を受けていた。
その結果、CDCの肺炎診断基準に基づく階層アルゴリズムで判定した肺炎の発症率は、抗菌薬群が13%(564人中71人)、対照群が10%(524人中52人)で、抗菌薬の予防投与に肺炎発症の抑制効果は認められないことが判明。調整オッズ比は1.21(95%信頼区間0.71-2.08、P=0.489)、級内相関係数(ICC)は0.06(0.02-0.17)だった。なお、129人(10%)については十分なデータが得られず、アルゴリズムに定義される脳卒中後肺炎の有無は明らかにならなかった。

肺炎の発症の有無を主治医が判定した場合も、結果は変わらなかった。
抗菌薬群で肺炎と診断された患者は615人中101人(16%)、対照群では602人中91人(15%)であり、調整オッズ比は1.01(0.61-1.68、P=0.957)で、ICCは0.08(0.03-0.21)になった。両群の死亡率や、機能的転帰が良好な患者の割合にも差は無かった。
最も多く見られた有害事象は、脳卒中後肺炎とは関係の無い感染症(主に尿路感染症)で、抗菌薬群で有意に少なかった(4% vs. 7%、オッズ比0.55、P=0.02)。クロストリジウム・ディフィシル毒素(CDT)陽性の下痢は、抗菌薬群では2人(1%未満)、対照群では4人(1%未満)に発生した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の定着は、それぞれ11人(2%)と14人(2%)に認められた。

以上から著者らは、「脳卒中ユニットにおいては、脳卒中後に嚥下障害を示す患者の肺炎予防を目的に、抗菌薬をルーチンで投与することは推奨されない」と結論付けている。

【日経メディカル】




やはりファーストチョイスは口腔ケアということでしょうか。
by kura0412 | 2015-09-18 17:30 | 歯科 | Comments(0)