歯科は調剤問題にどのようなスタンスを取るのでしょうか

政治的にアンタッチャブルだった「おかしな医薬分業」の実態が規制改革会議でようやく議論の対象に

怪我や病気で病院や街の診療所に行く。診察の後、院外の薬局で薬をもらうのと、院内で処方されるのでは料金が2倍以上も違うのを、読者は知っていただろうか。私は知らなかった。どっちが高いかといえば、院外処方である。いったい、どうなっているのか。

「薬漬け医療」対策から始まった「医薬分業」が・・・
これは「医薬分業」といって、背景には医療機関と薬局の分離を進めた政府の政策がある。それだけでなく、病院と薬局は原則として同じ建物、敷地内に併設してはならない(構造上の一体禁止)という規制もある。
こういう制度は患者に不利益ではないか。そんな問題意識から政府の規制改革会議が3月12日午後、霞が関で公開ディスカッションを開いた。私は委員の1人として司会進行役を務めたので、雇用問題を扱った2月13日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42103)に続いて、医薬分業をめぐる議論の構図と考え方を書いてみる。

欧米では医薬分業が制度として定着しているが、日本で医薬分業が導入されたのは1951年に遡る。56年に医薬分業法が施行されたが、医師による調剤は禁止されず、院外処方せんの発行も多くの例外規定が認められたために普及しなかった。
その後、利益優先の医師や医療機関による薬の過剰投与、いわゆる「薬漬け医療」が批判されたこともあって、政府が医薬分業に本腰を入れ始めた。そのとき法による強制的な医薬分業も議論になったが、日本医師会は反対した。
分業義務付けの代わりに政府が選んだのは、院外処方を優遇する金銭的インセンティブの導入である。具体的に言えば、74年に処方せん料が100円から500円に引き上げられた。その結果、爆発的に院外薬局が増えて医薬分業が進んだ。
医科と歯科を合わせた診療日数×投薬率に対する処方せんの発行枚数でみた医薬分業率は72年にほとんどゼロ%だったが、2013年には67%にまで拡大した。昔は病院や診療所で薬をもらっていたのに、いまは街の薬局で買う人が多いはずだ。
そうなった根本的な理由が政府の金銭的インセンティブなのだ。数字で示そう。たとえば病院や診療所で内服薬を7日分処方してもらって、薬局でお薬手帳を出してもらうと、院外と院内で料金はどう違うか。

病院内外で薬の価格差2.5倍、許せるか
院外処方だと、医療機関に払う処方せん料が680円、これに薬局に払う調剤料が350円、調剤基本料が410円、薬剤服用歴管理指導料が410円で合計1850円かかる。ところが、院内処方なら医療機関に払う薬剤情報提供料が100円、手帳記載加算が30円、調剤料が90円、処方料が420円、調剤技術基本料が80円で、薬局への支払いはゼロだから合計720円である(自己負担と保険部分を含む総額、規制改革推進室調べ)。
実に2.5倍以上もの差があるのだ。
そもそも調剤料のほかに調剤基本料とか一見、訳の分からない項目もあるが、それはひとまず措こう。患者から見たら、同じ薬をもらうのに院外と院内で料金が違うのは納得しがたい。そもそも薬をもらうのに、病院に行った後、外の薬局に行かなければならないのは二度手間ではないか。

公開ディスカッションでは、これに対する反論が出た。厚生労働省の建前は「医師と薬剤師がそれぞれの専門分野で業務を分担し、国民医療の質的向上を図る」というものだ。日本薬剤師会はもう少し詳しく「独立した専門職が相互確認する。たとえば、薬剤師が医師の処方せんに疑問があるときは疑義照会をする。安全性は利便性に勝る」と説明している。
なぜ院外薬局が高いのかといえば、薬局は単に薬を調合して出すだけではない。複数の病院から処方せんが出ている場合に飲み合わせとか薬の飲み過ぎをチェックする。飲み残しがあれば医師と相談して、処方を変えるなど薬局独自のサービスを提供しているからだ、という。
たしかに、そういう面はあるかもしれない。厚労省は街の診療所と同じように、患者に対して「かかりつけ薬局」の普及を目指している。かかりつけ薬局があれば、高齢者の薬漬け状態などがチェックしやすくなるという理屈である。
それには病院に併設されているより、地元の街に薬局があったほうがいい。そんな院外処方を促すための金銭的インセンティブである、という考え方なのだ。だからといって、2.5倍の料金格差を容認できるかといえば、私はできない。高すぎる。
院外がいいという人もいるだろうし、院内でもらったほうが便利という人もいるだろう。基本的には、どこで薬をもらうかは患者の自由な選択に委ねるべきだ。街の薬局が高い料金に見合ったサービスをしていて、それが納得できるなら多少の価格差は容認していいかもしれない。
だが、私のように病気の相談は医師と、薬局では薬をもらえば十分というなら、2.5倍は法外な価格差と思う。基本的には縮小する方向で考えるべきだ。

政治的にアンタッチャブルだった「医薬分業」
病院と薬局を併設してはならないというのは、どういう理屈かといえば、もともとは経営の一体化を防ぐのが主眼だった。病院が薬局も経営していると、病院側は薬を過剰に出すインセンティブが働く。
なぜかといえば、患者が支払う薬の価格は法定価格だが、病院側はそれより何割も安い価格で仕入れている。仕入れ値と売値の価格差(薬価差益という)が病院の利益になるので、薬を処方すればするだけ儲かるからだ。
この事態が「病院の薬漬け」と批判され、病院は薬局と経営を分離し、院外薬局向けに処方せんを出せば、結構な報酬になる仕組みに改められた。そして経営の分離を促す手法の1つとして「構造上の分離」という考え方になる。
中には、特定の薬局で薬を買うように患者を暗に誘導する病院もあった。
「薬局は?」と患者に聞かれたとき「1階の隅にあります」といえば、患者はつい足を運ぶ。それでは経営の分離にならないから「薬局は病院と公道をはさんで別の場所になければならない」という行政指導が続いた。
だが患者にしてみれば、わざわざ公道をはさんで外の薬局に行かなければならないのは不便ではないか。車いすに乗っていたり、熱が出ていたりすればなおさらだ。
そもそも経営の分離が目的なのに「構造的に分離していなければならない」という理屈がトンチンカンである。構造的に分離していても、経営が一体という例はいくらでもある。コンビニエンスストアはどうなのか。
逆に、構造的に一体でも経営は別という例もいくらでもある。お花屋さんとパン屋さんが同じ病院の中にあっても、経営は別かもしれないし、同じ駅の中にあるお弁当屋さんだって、ほとんど経営は別のはずだ。実に、ばかばかしい規制である。
どうしてこんな規制や料金格差が生じているかといえば、本当の理由は合理的か否かという話ではなく、もっと政治的な理由ではないか。医師と薬剤師というのは、政治的にきわめて強力な勢力である。
患者に負担を押しつける院外処方が普及したからといって、薬局のサービスが劇的に改善したかといえば、残念ながらノーだ。国民医療費の膨張が問題視される中、医薬分業で薬剤費が減ったかといえば「透析分を除いて計算すると、入院外の薬剤料比率は年々増加している」(東京医科歯科大学大学院の川渕孝一教授)という説もある(資料は先述のサイト)。

規制改革会議の事務方を仕切る官僚に聞くと「実はこれまで医薬分業や院外、院内処方をめぐる問題をきちんと議論したことはなかった。本格的に取り上げるのは今回が初めて」という。おそらく政治的にアンタッチャブルだったのだろう。
議論は始まったばかりである。引き続き注目したい。

【長谷川幸洋:ニュースの深層】



規制改革会議での議論となっただけに、現状のままで終わるとは思えません。
歯科は調剤問題に対してどう対応するのでしょうか。
by kura0412 | 2015-03-13 14:20 | 医療政策全般 | Comments(0)

コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
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