「真の正念場は中医協、社保審」

混合診療に一転賛成 医師会の妥協と思惑(真相深層)

岩盤規制の象徴だった「混合診療」が拡大する。
政府は6月の成長戦略で、保険外の先端医療を地域の病院でも受けられる制度を作ることを決めた。日本医師会は当初は安全面に問題があるとして猛反発していたが、容認に転じた。医師会が賛成した理由と――。

■消えた全面解禁
混合診療は公的な保険診療と保険がきかない自由診療を組み合わせる制度。現在は保険がきく部分まで全額自己負担になってしまう問題がある。例外として安全性や有効性が確認できた先進医療に限って保険が使える規定もある。
政府の規制改革会議が当初めざしたのは混合診療の全面解禁だ。同会議が3月に提案した「選択療養」は患者と医師が合意すれば混合診療を認める制度。これが事実上の「全面解禁案」だった。
4月に記者会見した日本医師会の横倉義武会長は「安全性や有効性が疑わしい治療が横行しかねない」と反発した。規制改革会議が想定した範囲内の反応だが、本音は別とみていた。混合診療が拡大すると、保険診療が縮小する可能性がある。保険がきくことで患者を集めている診療所は収入が減る恐れがあるのだ。

ところが難病の患者団体や医療費を支払う健康保険組合の団体もこぞって反対した。
反対派からすれば「終わった話」(自民党厚労族幹部)のはずだったが、改革の目玉を作りたい規制改革会議は粘った。「現行制度を変えることを検討してほしい」と述べた安倍晋三首相の後押しもあった。
例外規定では一定数の症例を集めた研究目的でないと認められない。選択療養は患者の希望で治療法や未承認薬の申請ができる点で、医師会とは相いれない。同会議はやむなく全面解禁をあきらめ、医師会や厚生労働省との妥協を探った。譲れない一線は「患者本位」というキーワードだ。
6月末に会長任期が迫っていた横倉氏は、安倍首相との近さが売り。過去には医師会が断固反対していた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉入りでも政権と折り合いをつけた実績がある。横倉氏は、安倍首相がオバマ米大統領と会談した直後に「医療の皆保険は守れることになった」と、携帯電話に報告を受けた。この首相の確約を反対論者の説得材料にした。今回も首相の確約が決定打になるとみた。
「はじめから政権と敵対することはあり得ない」とする横倉氏。
いずれは医療費に切り込まざるを得ない時が来る。反対論ばかりで政策決定の場から閉め出されるより、関与した方がよほど医師会の利益になる。医師会幹部は混合診療の全面解禁に歯止めをかけるべく働きかけを強めた。
できあがった案は「患者申し出療養制度」と名前を変えた。
患者本位という規制改革会議のメンツをたてる一方、国が専門家の意見を踏まえて決める仕組みを作ることにして全面解禁は避けた。

■法改正を阻止
日本記者クラブで18日記者会見した横倉氏は「安倍首相が(対象になった治療は)保険を適用するとはっきり言ったので医師会がめざす方向と同じになった」と賛成に転じた理由を説明した。
6月29日開いた日本医師会の代議員会。前日に無投票で会長に再選された横倉氏は、混合診療への対応をめぐり、舞台裏を知らない地方の医師会から厳しい言葉で詰め寄られた。横倉氏は「政府はさまざまな提案を出してくるが、声高に反対するだけでは通らない」と理解を求めた。

彼らにとって真の正念場は、新制度に肉付けする中央社会保険医療協議会や社会保障審議会・医療保険部会だ。
6月末の中医協では医師会出身の委員が「法改正は必要ないのではないか」と、現行制度の改善で対処するように求めた。法改正しなければ新制度は実現しない。地域の医療機関で実施する案も「大学病院だけで地域の診療所は入らない」とけん制した。
医師会は着々と「骨抜き作業」に動き始めている。

【日経新聞】
by kura0412 | 2014-07-19 08:56 | 医療政策全般 | Comments(0)