『北朝鮮の拉致問題再調査で浮上する安倍首相の「サプライズ解散」説』

北朝鮮の拉致問題再調査で浮上する安倍首相の「サプライズ解散」説

集団的自衛権の行使容認をめぐる国会論議が本格化している。政府は与党協議に際して15の事例を提示したが、国会ではそれらの事例について安倍晋三首相が具体的に地域や対象について説明を加えた。
一方、北朝鮮の拉致問題について北朝鮮が全面的な再調査を約束し、それを受けて日本政府も制裁措置の一部解除を約束するという進展もあった。これをどう考えるか。

まず、集団的自衛権の具体的事例を細かく掘り下げていけば、想定している事態が明確になる一方、結果的にカウントの仕方次第で事例の数が増えていくのは自明である。集団的自衛権行使に反対する新聞はそこを突いて「集団的自衛権もう拡大」(東京新聞)とか「首相、答弁で事例増殖」(毎日新聞)、「自衛隊派遣、中東も想定」(朝日新聞、いずれも5月29日付朝刊一面)と批判した。
 これは十分に予想された展開である。なぜなら、集団的自衛権を行使するような事態は戦争に突入しているか、一歩手前の緊張状態だろう。そうであれば、敵がどういう手を打ってくるか、完全には予想できない。15どころか100も200も事例が増えたっておかしくはないのだ。

「ポジティブリスト」は公明党対策
本来なら、緊迫した事態で自衛隊が「何をしてはいけないか」を定める「ネガティブリスト」を決めるのが理想である。それは軍隊を規律付ける国際標準でもある。政府もそれは十分、分かっているが、それでは公明党が納得しない。そこで政府は集団的自衛権の議論を始めるに際して、最初に「何をするのであればOK」と言える「ポジティブリスト」を作る作業を選んだのだ。
ポジティブリスト方式でいくと決めた時点で「細部を詰めていけば、いくらでも枝分かれして事例は増殖していく」私自身がどう考えるかといえば、5月2日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39149)で書いたように「日米安保条約で極東(韓国、台湾、フィリピン)防衛に米軍が日本の基地を使うのを認めた時点で、集団的自衛権の行使は容認されている」という立場なので、日本海で自衛隊の艦船が米艦の防護に動こうと動くまいと本質は変わらない、と考える。

事例を枝分かれさせて、いくら細部を突いてみても、そもそも朝鮮半島有事で米軍は日本の基地から出撃するのだから、それはナンセンスな議論ではないか。反対派が「日本は絶対に戦争に巻き込まれたくない、他国の戦争に関わり合いたくない」というなら、極東有事で米軍の基地使用を認めないという話になる。それなら日本海の話ではなく、安保改定を主張すべきだ。
ペルシャ湾の機雷除去について言えば、どこかの国(たとえばイラン)が機雷を敷設すれば武力行使に当たる。その機雷を日本が除去するのも武力行使になるから「戦争に巻き込まれるじゃないか」という議論がある。それは「日本が巻き込まれた」のか。そうではなくて「日本の生命線が狙われた」という話ではないか。
そういう事態に対する必要最小限の準備として、国際社会の合意の下で、他国とともに機雷を除去する「選択肢」を持っておくのはおかしくない。これは「選択肢」であって、必ず除去するという「政策決定」ではない点にも注意が必要だ。
実際に除去するかどうかは、現実の情勢を見極めて、政府が国会の承認を得たうえで決定する段取りになる。判断が間違っていれば、政府は国民の批判を浴びて、政権が倒れる場合だってある。それが歯止めだ。私は政策判断として戦闘中に自衛隊が出動しない場合もあると思う。それは、ときの政府と国会次第である。

「解散総選挙はどうなりますか
さて前置きが長くなったが、ここからが本題だ。
これから国会や与党の議論が紛糾して長引けば、安倍政権はどうするか。私は解散総選挙に打って出る可能性もゼロではない、と思う。実際、この2カ月ほど永田町の片隅では「安倍首相はこの秋にも解散するのではないか」というひそひそ話が浮かんでは消えていた。
つい2週間前、ある野党党首と会食したときも彼はテーブルに着くなり、開口一番「長谷川さん、解散総選挙はどうなりますかね」と聞いてきた。私は少し驚いたが、私自身もひと月余り前、政権幹部とその話をしていたことを思い出した。
のは承知の上だった。だから政府は当面、事例増殖の批判は覚悟のうえで論戦に応じるだろう。
そのとき本気にしていなかったのだが、野党党首に真顔で尋ねられると、あながちホラ話とも片付けられない。解散総選挙があるとすれば、判断要素は4つあるのではないか。まず、いま野党が勝利する見通しはない。それは各種世論調査の数字をみればあきらかだ。

次に来年春に統一地方選挙を控えている。公明党はできれば地方選で「集団的自衛権で妥協した」と批判されたくない。そこで多少、見切り発車でも解釈変更の閣議決定をした後、解散総選挙に打って出て自公連立政権が勝ってしまえば「国民の信を得た」という大義名分ができる。多少なりとも、来春の地方選でのダメージを最小限に抑えられるだろう。そういう思惑だ。確信的な反対派はいずれどう説明しようと、最後まで反対するのだ。
それから、冒頭に触れた北朝鮮による日本人拉致問題である。北朝鮮が拉致被害者の全面的な再調査を受け入れたのは前進だ。政府が北朝鮮の出方を見極めつつ、制裁措置の一部を解除する方針を表明したのは、拉致被害者の帰国について前向きの感触を得たからとみていいのではないか。
そうだとすれば当然、安倍政権にとってプラスだ。拉致問題について前向きな見通しが確実なら、解散総選挙に追い風になる。

政権の正当性を問う「一票の格差」
4つ目に集団的自衛権に話を戻すと、いま安倍政権が描いている日程は、なんとか夏までに与党協議をまとめて憲法解釈変更の閣議決定をする。そのうえで自衛隊法など約15本の法律改正の作業に着手して順調にいけば、まとまったものから秋の臨時国会に法案を提出する。
同時に、米国との防衛協力の指針(ガイドライン)見直し作業も進める。法改正とガイドラインの見直し作業は互いに連携している。米国とは年末までに作業を終えることで合意しているが、もしも解釈変更の閣議決定が遅れると、全体の作業が遅れて、ガイドライン見直しが間に合わない事態もありうる。法改正も臨時国会に間に合わず、来春の通常国会に先送りになる。
なにより、政策の優先順位でいえば、安倍首相にとって、集団的自衛権の見直し問題は最優先である。

あえて、もう1つ付け加えよう。安倍政権はご承知のとおり、憲法改正を目指している。ところが、いまの政権はそもそも正統性にクエスチョン・マークが付いている。それは一票の格差問題だ。
全国16件の高裁判決のうち14件が違憲とし、うち2件は選挙自体を無効と判断した。昨年11月に出された最高裁の判断は「違憲状態」と腰砕けになったが、先の総選挙に憲法上の疑義が生じているのは間違いない。
違憲状態の衆院が成立させた安倍政権もすなわち違憲状態という話であり、そういう政権が本気で改憲をめざすわけにはいかない、という事情がある。その後、0増5減の公職選挙法が成立し、次の総選挙は多少はいまよりマシな状態になる。だからチャンスがあれば「憲法改正に本気で取り組むためにも、早く総選挙の洗礼を受け直して、政権の正統性を取り戻したい」と考えるのは当然なのだ。

解散に備えた野党再編
この話はマスコミがほとんど指摘しない。そんな話を真正面からすれば安倍政権ににらまれるとでも思っているのだろうか。だが、マスコミの腰の引け具合とは裏腹に、当の安倍政権自身は真剣に受け止めているテーマである。
サプライズ解散のうわさ話は、永田町ではもう秘密でもなんでもない。与党協議に加わっている幹部たちはもちろん、野党幹部たちだって頭の片隅にちゃんと置いている。
折から、日本維新の会は橋下徹大阪市長率いるグループと石原慎太郎前東京都知事が率いるグループに分裂した。それぞれのグループが結いの党や民主党の一部、みんなの党との連携、あるいは自民党への復帰も視野に入れて話を進めていくだろう。
そんな野党再編の動きも「もしかしたら、あるかもしれないサプライズ解散」に備えた展開でもあるのだ。

【長谷川幸洋「ニュースの深層」】



確かに安倍首相にとっては全ての結果が出る前でありベストタイミングです。サプライズ解散総選挙あるかもしれません。
by kura0412 | 2014-05-30 09:10 | 政治 | Comments(0)