緩和ケア充実となれば

社説:終末期医療 まず緩和ケアの充実を

どのような死を迎えるのかは、本人だけでなく家族や社会にとっても切実な問題だ。団塊世代が75歳を過ぎる2020年代には、年間の死者が約150万人を超える。医療技術や政策だけでなく、生命倫理や教育、地域の文化などの分野でも「尊厳ある死」について議論を深めなければならない。
終末期医療への関心は高いが、家族と十分に話し合い、自分の意思を書面に残す人は少ない。厚生労働省の検討会が5年ごとに行っている意識調査からはそんな実情が浮かぶ。医療技術の進歩で人為的に死の時期を延ばすことはできるが、そうした延命治療はすべきか、どの時点でやめるべきか、家族をみとる場面で悩む人は多いに違いない。
オランダをはじめ安楽死法や尊厳死法を持つ国もあるが、日本では同省や各医療団体のガイドラインをもとに医療現場に判断が任されている。末期患者の人工呼吸器を取り外した医師が殺人容疑で書類送検(後に不起訴)されたこともあり、尊厳死を求める患者自身の文書があっても延命治療中止をためらう医師は多いという。医療現場から法制化を求める声は多く、現在超党派の国会議員が尊厳死法案を検討している。

一方、難病患者や障害者団体には反対論が根強い。人工呼吸や人工栄養によって社会生活を送っている人は多く、法案で難病患者や障害者を対象にしないと明記しても、こうした医療行為を否定する風潮が広がることは避けられないという。ただでさえ増加し続ける医療費の抑制策が叫ばれており、家族の介護負担を避けるため人工呼吸器をあきらめる人が多いのも事実だ。
延命治療の議論は必要だが、その前に大事なことがある。緩和ケアの充実だ。緩和ケアとは「生命を脅かす疾患に直面している患者と家族に対し痛みや他の身体的、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、苦しみを予防し、やわらげること」(世界保健機関)で、病院内での治療、痛みに対する薬物療法だけでなく、自宅で終末期を迎える人や家族を精神的に支えて不安や苦痛を取り除くことも含む。医療だけでなく介護スタッフや地域住民を巻き込んだ重層的な取り組みが必要だ。
在宅での終末期医療や緩和ケアに対する診療報酬は拡充されてはきたが、実施する医師やスタッフが不足し、標準的なケアの方法論が定まっていないなどの問題も指摘される。患者の家族の悲嘆に対する一定期間のケア、学校での死に関する教育などを実施している国もある。緩和ケアについて社会各層での理解と幅広い取り組みがなければ、「尊厳ある死」の議論は深まらないと思う。

【毎日新聞】


緩和ケア充実となれば歯科分野で貢献できる部分は多いはずです。
by kura0412 | 2014-04-19 16:27 | 歯科 | Comments(0)