日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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週刊誌ネタですが

歯医者にダマされて はいけない 「削る」「抜く」はもはや時代遅れ 虫歯・入れ歯の常識はこんなに変わっていた

歯は、全身の健康と深く関係する。今やコンビニより数が多い歯科医院。その中で誠実な歯医者と出会うのは、とても大切だが至難の業だ。お金も健康も損なわない歯医者選びの真実を徹底取材した。

行かない方がマシだった
「私は、若いころから歯が丈夫とはいえませんでしたが、50代半ばを過ぎたころから、年に1回の頻度で虫歯になるようになってしまったんです」
こう語るのは、東京都杉並区在住の金子信之さん(63歳・仮名)だ。都心のマンションに暮らす金子さんは、当時近所にあった歯医者に通い、虫歯の治療を受け続けてきた。
「そこは1回の治療が10分ほどで、2~3回通うだけですぐに終わる。しかも、どんなに小さな虫歯でもすぐに削ってくれるし、かなり痛い時は、頼めば神経を抜いてくれるので、気に入っていたんです。ところが、神経を抜いた後の治療が雑で、すぐに詰め物が取れてしまったり、差し歯が欠けたりして、口の中はボロボロ……。担当医にクレームをつけたところ、『もっといい被せものに交換するしかない』と、いつの間にか保険のきかない治療に切り替えられ、しまいには40万円も請求されたんです。これはおかしいと思い、別の歯医者に行ったところ、神経を抜いた後の治療は、診療報酬が安いと聞きました。だから、雑に済ます歯医者が多いんだと……」

命にかかわるわけではないからと、つい放置しがちな虫歯や、歯槽膿漏に代表される歯周病といった口のトラブル。痛みが出て、あわてて歯医者に駆け込み、とにかく痛みさえとってもらえればと応急の治療を受ける。その結果、神経を抜かれたり、抜歯されたりして、口の中が詰め物や義歯だらけになってしまった……という方も多いだろう。
金子さんのケースに代表されるように、「歯医者によっては、行かない方がよっぽどマシなこともあります」と語るのは、岡田やよい歯科健診クリニックの岡田弥生医師だ。
「実は、大人になってからの虫歯は、過去に一度削ったことのある部分に再発してくるケースがほとんどなのです。一度削ってしまうと、再発のリスクが生まれる。そのため、歯医者に通うたびに再治療を繰り返し、やがて歯を失うことになる人も多いのです」
初期の虫歯でも発見すれば削って治療してきた背景には、実は歯医者の裏事情も大きく関係している。なぜなら、「削る・抜く」といった処置は診療報酬が高く、歯医者にとってもメリットが大きいからだ。
しかし今、歯科治療は大きく見直され、変わってきている。それについては後述するとして、まずは日本人の歯の病気に関するデータを見てみよう。
オーラルケア商品の大手メーカー・ライオンが行った「歯周病に関する生活者実態」調査によると、歯周病患者は30代で80%、60代になると90%にまで増加する。また、40代以降は、虫歯や歯周病が急速に悪化しやすい。これは、歯の表面や舌などにこびりつくプラーク(細菌の温床となる食べ残し)を洗い流す唾液の分泌量が、加齢とともに少なくなるからだ。

神経を抜くのは時代遅れ
また、歯が健康であることが、寿命をも左右することがわかってきた。ある調査によれば、80代以上で自分の歯が10本以上残っているか否かで、前者のグループは、その後15年間の生存率が、男性の場合は約2倍、女性の場合は約1・5倍も高くなるという結果が得られた。中高年こそ、虫歯・歯周病対策に力を入れ、できる限り自分の歯を残していかなければならない世代と言えるだろう。
「削る」や、「神経を抜く」「歯を抜く」というのが、これまでのスタンダードな歯科治療だった。その上で、歯を失ってしまった場合に行われるのが、次頁の表1で紹介している「入れ歯・差し歯・ブリッジ・インプラント」である。歯を失ってしまった場合は、確かにこれらは最適な治療法だ。
だが、虫歯があっても、できるかぎり自分の歯を温存する—これが、歯科治療の新常識になってきている。
「6年ほど前までは、虫歯に対する厚生労働省の考え方は『虫歯は全て取り除き、そこから治療を考える』というものでした。でも今は、『場合によっては神経を残し、無菌化して治す』という治療法に変わってきたのです」
こう語るのは、鶴見大学歯学部保存修復学講座教授の桃井保子医師だ。厚労省の方針が変わったのには、歯の「自衛」の仕組みが、歯科治療をする上で重大だということが見直されてきたからだという。

「歯の中には神経のほかに、血管やたくさんの細胞が詰まった歯髄という組織があります。この歯髄は、虫歯も含めていろいろな刺激から歯を防御しています。歯髄の細胞が残っていると、虫歯ができても歯の組織を変化させ、虫歯にならないように守ったり、修復する働きをする。自力でカルシウムなどを患部に詰め、菌が外から入らないようにすることができるのです。しかし、歯が死んでしまうと、そうした働きは失われてしまいます。そのため、虫歯は進行する一方になるのです。
また、歯髄があることによって、歯に水分が供給されます。弾力性のある、割れにくく、欠けにくい歯であり続けるためには、この水分の供給が必要です。ところが、神経を抜いてしまうと、それも失われるのです」

削らないでも治ります
神経を抜くことには、ほかのリスクもある。桃井医師が続ける。
「神経を抜くと、痛みがわからなくなってしまいます。そのため、虫歯の進行に気づかず、わかったときには歯はボロボロで、抜歯するしかないということになりかねない。これを避けるためにも、神経を含めた歯髄は、極力保存したほうがいいのです」
では、削ったり抜いたりせずに、どのように虫歯の治療をするのか—。左上の表2に掲げた、最新治療法をいくつか紹介しよう。
まず「削らない」治療の一つには、レーザーで虫歯を除去してしまう「レーザー治療」がある。歯槽膿漏などの歯周病にも活用されており、歯周ポケット内の細菌を死滅させたり無毒化させることで治療する。
また、オゾンによって虫歯菌を殺し、失うのは最小限に抑える「オゾン治療」や、小さな虫歯を吹き飛ばして治す「エアアブレーション」といった方法もある。それぞれメリット・デメリットや適用範囲があるが、うまく活用すれば、削らないか、最小限のダメージで治療ができる。いずれも、数千円~1万円程度でできるものがほとんどだ。
次に「温存する」治療には、「歯牙移植」や「再植」といった方法がある。いずれも自分の歯を加工して欠損部分に移植するので、違和感がなく安全などのメリットがある。歯科医療技術の進歩とともに、患者の選択肢の幅は広がっている。
とはいえ、歯医者の多くは、今もやはり「削る」「抜く」治療が中心だ。

カネ儲けが目的
現在、歯医者は10万人を突破しており、歯科医院の数はコンビニより多いといわれる。保険診療を主体とした上で、十分な収入が得られるのは、人口10万人に対し、歯医者50人とされている。しかし、現実ではその数は約80人にまで膨れ上がっている。競争相手が増えた歯科業界では今、熾烈な患者の取り合いが繰り広げられている。この現状について、医療ジャーナリストの森田豊氏が解説する。

「歯科業界が、保険診療だけで収入が得づらくなっているのは確かです。
日本の医療制度は保険診療に重点を置き、誰でもどこでも同じレベルの医療を受けられることをモットーとしています。しかし、歯科の場合、矯正歯科や美容歯科などの自由診療のみに力を入れている医療機関も多い。とはいえ、最初から自由診療のみの治療をすすめてくる歯科医には、疑問を持つべきでしょう」
また、医療ジャーナリストの田辺功氏も、歯医者とカネの問題について、こう話す。
「自由診療に誘導するケースは珍しくありません。『自由診療』ということは、料金は基本的に自由に設定できるということです。そこで、患者との会話の中で、当初は高めに伝えておいて、『特別に値引きしますよ』などとお得感を演出する。すると、患者もついダマされてしまうんです。これは最近の歯医者の常套手段です。
また、一度で済む治療に何度も通わせて稼ぐパターンもありますね。そもそも、削れば削るほど歯は悪くなり、何度も歯医者に通うことになる。長期的に考えれば、自由診療ではありますが最新の『削らない治療』を受ける方が、結果としてコストが安く済むこともあります。たとえば、自由診療だけれど安価な『3Mix-MP法』はおすすめですね」

歯医者だらけの時代に必要なのは、患者自身が「よい歯医者」を見抜く目を養うことだ。前出の岡田医師は、選ぶ際のポイントとして「診断」を挙げる。
「患者さんはまず治療の上手・下手に目がいくけれど、その前の『診断』が大切なのです。診断の根拠や治療法をわかりやすく説明してくれる歯医者は、ある程度は信頼できると言える。診断で納得がいかなかったら、治療を受けずにセカンドオピニオンに行ってほしいですね。そもそも歯を削ったり、神経を抜くといった治療を受けるのなら、患者さん自身が、まず『この先生に歯の命を預けていいかどうか』を考えてほしいのです」
自分の歯が今どんな状態なのかをしっかり「診断」し、なぜこの治療法をとるのかを話してくれる医師を選ぶということだ。
「われわれ医師としては、虫歯を削り、そこから再発した虫歯をまた治療し、次には神経を抜き、最終的には抜歯するという悪化のサイクルを、少しでも遅らせたい。どうしても悪くなったら、最後に神経を抜けばいいわけで、その前にワンステップ踏む余地があるなら、そのワンステップを踏むべきなのです」
「抜く」や「削る」一点張りの歯医者は、この「ワンステップを踏む」意識が乏しい。ろくに説明もしないで治療にかかろうとする医師は要注意だ。

ダメな歯医者はすぐわかる
東京医科歯科大学歯学部附属病院教授・水口俊介医師も、こうアドバイスする。
「歯の治療には限界があります。その部分をきちんと説明せず、いいことばかり言う医者は信用できない。また、病院スタッフへの教育がなっていないように感じられる歯医者も気をつける必要があるでしょう」
しかし、説明がうまいだけでは技量があるとは断定できない。症例件数ではなく、成功率をきちんと教えてくれるか、治療の導入部である麻酔が痛くないか、といったポイントで腕を見極めるといいだろう。
インプラント治療を受ける際にも、細心の注意が必要だ。たとえば、歯科医院の待合室などに、よくインプラントの資格認定証が何枚も飾られていたりするが、枚数=実力と考えてはいけない。インプラント治療の認定基準は発行者によってまちまちで、厳格な基準に基づくものからごく簡単に手に入るものまで玉石混淆なのが実態だからだ。
少なくとも「認定証があるから大丈夫」と速断しないくらいの慎重さは必要だ。
また、過当競争の中、インプラント代金の値下げ合戦も盛んだが、値引きで失った分の利益を手術件数で補う歯医者の存在も問題になっている。「使える歯を抜かれてインプラントを入れられた」、「質の悪いインプラントを入れられた」などのトラブルだ。
「インプラント自体は素晴らしい技術です。ただ、インプラントをしてから口の中に不調を起こしたり、噛み合わせが狂ったり、心身にわたり体調を崩す患者がいるということも聞きます。車でも何でも、いいものと悪いものがある。大事なのは、全体的な視点からの的確な診断・技術と、適切な歯科材料が使われているかどうかです」(むらつ歯科クリニック院長・村津和正医師)
インプラントを考えているのなら、疑問はすべて医師に尋ねることだ。そこできちんと答えてくれないようなら、セカンドオピニオンをとったほうがいい。その他、取材した医師たちに聞いた「いい歯医者の条件」を右の表3にまとめたので、歯医者を選ぶ際に、ぜひ活用してほしい。
街には歯医者の看板があふれかえっている。患者よりカネばかり見ている医者にダマされないために、われわれも見極める力をつけなければならない。それが、全身の健康や、命を守ることにもつながっている。

【現代ビジネス・「週刊現代」2013年10月12日号より】



なるほどと思う点と、?と感じる部分といろいろです。
by kura0412 | 2014-01-11 09:55 | 歯科 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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