「ガンは長く付き合う病に」

がんの「損失」年1.3兆円にも 仕事と両立の道は…

日本人の2人に1人が一度はかかる「がん」。治療成績の向上で、死に至る病から長く付き合う病に変貌しつつあり、仕事との両立など社会の支えも求められる。患者ごとのオーダーメード治療も進み、がん医療は今、その姿を変えている。

■残業・出張なく
今年前半、咽頭がんの放射線治療や大腸がんの手術を受け、9月にカード大手、クレディセゾン営業推進部長に復帰した田中竜太さん(46)。残業はせず、月1回は半日休み通院するものの、営業担当者約1000人を束ねる重責を担う。
同社は5年前、社員ががんを患った際に産業医が面談したり、残業や出張をなくし勤務時間を短くしたりできるよう制度を変えた。すでに約30人が利用。「がんと分かった直後は死を恐れ、家族の心配もした」田中さんだが、「制度の利用者を思い出し、隠さず言った方が会社や同僚が応援してくれると思った」。
今も後遺症や転移の不安はあるが「仕事を辞めずに検査や体調に合わせて勤務できて安心」と話す。武田雅子・戦略人事部長は「会社にとっても貴重な人材を失わずに済む」と指摘する。

働く世代のがんは増えている。国立がん研究センターの推計では2008年にがんになった75万人近くのうち生産年齢15~64歳は約23万人(前年比4%増)。仮にがんになった人が全員働かなくなれば労働損失は年1.3兆円超との推計もある。就労の継続は患者個人の問題にとどまらない。
だがクレディセゾンのような企業ばかりではない。厚生労働省研究班の12年の調査では、がんと診断後に37%が退職または部署を異動、約半数は収入が減った。退職・異動のうち4割は「会社の指示」だ。国立国際医療研究センターの和田耕治医師は「企業側は仕事ができないと決めつけず、患者と十分な意思疎通をするのが重要」と話す。
一方、日本人の死因1位ではあるが、10年弱前にがんと診断された人の5年後の生存率は種類によっては9割超、全体でも6割弱。厚労省の推計で診断5年後に生きている人は15年に308万人と、99年のほぼ2倍だ。

■人生の選択を左右
「がん=死」と捉えて本人への告知や病名の公表を控えた時代から、後遺症や再発でがんと長く向き合う時代へ。がんとの共生は仕事のみならず人生の選択も左右する。
40代以下の若い世代の発症率が他のがんに比べ高い乳がんは、5年後の生存率は9割近い半面、10年以上経て再発することもあり、なおさらだ。
3年前に乳がんを手術した千葉市の会社員、鈴木恵さん(仮名、44)は手術後、副作用で不妊となる可能性がある抗がん剤治療に備え、卵子を凍結保存した。昨年末、骨に転移。相手の負担を考えると結婚に踏み切れず、妊娠のメドも立たない中、治療を続ける。
転移が見つかる前、失った胸の膨らみを取り戻す乳房再建の手術に自己負担で踏み切った。乳房がないと好みの服も着られず自分に自信が持てない。長い人生を考え100万円の出費を決めた。
一部の方法に保険が使える乳房再建は、保険適用の範囲が徐々に広がり、乳がんの「治療の一環」になりつつある。

政府は昨年6月策定の「がん対策推進基本計画」に就労支援の必要性を初めて明記。小児や高齢者のがんでライフステージに着目した研究にも乗り出す。治療技術による入院期間の短縮や、通院で抗がん剤治療をする病院の増加も追い風になる。
がんになった後も安心して過ごすには、仕事との両立や人生の選択に配慮した治療や社会の支援が欠かせない。

【日経新聞】



日経新聞の「がん医療の今」の特集記事です。
改定率決定するこの微妙な時期に何故日経が特集と勘繰りたくなりますが、時代の潮流を捉えている内容です。
まさに長く付き合う病となったガンに対して歯科医療としてどのように取り組むかが今、歯科界に問われています。
by kura0412 | 2013-12-10 14:57 | 歯科 | Comments(0)