日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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新たなキーワードは「五感」?

楽天は激怒、処方薬ネット販売を葬った厚労省の裏技

11月6日午後1時すぎ。インターネット業界を担当している新聞各社の記者に、楽天広報部から一斉メールがとどいた。件名は「医薬品ネット販売規制の問題に関する緊急記者会見の案内」。前日深夜の4閣僚折衝で、安倍政権がいくつかの市販薬(一般用医薬品)についてネット通信販売の禁止・制限を決めたことに、三木谷浩史社長が抗議の記者会見を開くという知らせだった。
この場で三木谷氏は、政権がアベノミクス推進機関と位置づける産業競争力会議の議員を辞めると表明した。薬のネット販売を制限するのには、三木谷氏を快く思っていない閣僚の意がはたらいたとみられている。しかし18日、官邸で首相と会った三木谷氏は辞任の意向をひるがえす。「引き続き規制改革に貢献してほしいと、首相から要請された」。記者団に三木谷氏はこう説明した。

■対面販売の原則にこだわる
厚生労働省は市販薬を3つの類型に分けている。副作用のリスクが比較的低い第3類が約2950薬品、中リスクの第2類が8290薬品、高リスクの第1類は約80薬品。第3類の代表はビタミン剤のハイチオールCなど、第2類は解熱鎮痛剤バファリンAなど、第1類はやはり解熱鎮痛剤のロキソニンSと聞けば、イメージが思い浮かぶだろう。それだけ個別の商品名がわたしたち消費者に浸透していると言っていい。
製薬各社がテレビCMなどでさかんに市販薬を宣伝しているためだ。
薬局では「ロキソニンをください」と銘柄を指定する客もいる。もちろん自らの症状や体質を薬剤師に相談しながら、もっとも適した薬を選んでもらう客も少なくない。銘柄を指定した客にも服薬するときの注意事項を説明・喚起するのが薬剤師の役割だが、必ずしも実施しているとはかぎらない。こうしてみると、銘柄指定の客はネット販売を利用しても差し支えないように思える。

だが厚労省は「対面販売の原則」を守り抜くことにこだわった。
4閣僚による折衝で、田村憲久厚労相は同省が「劇薬」として指定した5薬品と、処方薬から市販薬に転用させた薬は3年半の間、薬局・薬店での薬剤師などによる対面販売しかさせないように主張した。折衝の場に顔をそろえたのは厚労相のほか、菅義偉官房長官、甘利明経済財政担当相、稲田朋美規制改革担当相の計4人。関係者によると、規制改革相は第1類すべてのネット販売を認めるべきだと粘ったが、官房長官と経財相はどちらかというと厚労相の肩をもった。
結論は5つの「劇薬」と、市販後間もない14の転用薬は原則3年、対面販売にかぎるというもの(来年4月に改正を施行した場合)。
市販から日のたっている「ロキソニンS」はネット購入が継続できるが、花粉症などのアレルギー薬として有名な「アレグラFX」は一定の期間、ネットでは購入できなくなる。なぜ厚労相は対面販売にこだわりつづけたのか。「薬剤師は五感をはたらかせて購入者の特徴をつかむ必要があるため」というのが、その説明だ。

長年、厚労省は最適な薬を選び、服薬時の注意を徹底させ、副作用のリスクを抑えるには薬剤師などによる対面販売が欠かせないという立場をとってきた。ところが多くのネット薬局がこれらの条件をクリアする態勢をととのえるようになった。そこで同省が切り札として出してきたのが「五感」だ。
医薬食品局の官僚は大まじめにこう言う。「薬剤師に期待するのは、客の顔や目の色、からだのにおいや細かい動きにも気を配り、薬を決めること」。なるほど、そこまで懇切丁寧にみてくれるなら、こんなありがたいことはないが、薬局でそんな体験をした人は少ないのではないか。そもそも薬剤師は医療行為をしない。からだのにおいや細かい動きを「みる」が「診る」になってしまうと、医療法にふれるおそれが出てくる。こう考えると、対面販売の原則を貫くのには無理があるとみるのが自然だった。

■後出しじゃんけんで無謬を演出
しかし厚労相は踏ん張り、ネット販売と対面販売との間にわずかでも「差」を残そうとした。原則3年間のネット販売禁止は譲れない線だった。
世間には99%超の市販薬がネット販売できるのだから、この結論は穏当だという受け止めが多い。しかし規制改革会議と稲田氏には敗北感がつよい。6月に成長戦略の中身を披露した講演で「安全性を確保しつつ、しっかりしたルールのもとにすべて(ネット販売を)解禁する」と述べた安倍晋三首相のサポートが思ったほどでもなかったのが、規制改革会議にとっての誤算だった。
「すべて解禁」はウソだったのか。そこは無謬(むびゅう)を旨とする官僚組織だ。
「劇薬」として指定した薬と転用から原則3年以内の薬を「要指導薬」という新しい分類にはめ込むという裏技を編み出した。要指導薬に指定すれば市販薬から外れるので、市販薬ネット販売の全面解禁という首相の言は守られる。後出しじゃんけんだろう。

この問題の帰結は、厚労省にもうひとつの大きなアドバンテージをあたえた。
同省は市販薬だけでなく処方薬(医療用医薬品)を含めてネット販売を禁ずるという内容の条文を、薬事法の改正案に忍び込ませたのだ。処方薬の売り上げは年間6兆円を上回り、市販薬の約10倍に達する。市販薬のネット販売の全面解禁をもとめることに規制改革会議が全力を傾注している間に、さしたる議論がないまま、厚労省にとっての本丸ともいえる処方薬の販売体制をネット業界から守りきった。

■訴訟対策で省令から法律に格上げ
よく考えると、処方薬こそがネット販売に向いているのではないだろうか。患者が飲むべき薬は種類、数、飲み合わせの注意点を含めてすべては診察した医師の責任で処方する。これが医師の処方権だ。患者はその内容が記された処方箋を持って院内薬局やいわゆる門前薬局(調剤薬局)に出向くと、薬剤師が処方どおりに薬を出してくれる。服薬時の注意点や副作用の危険性の警告などが印字された短冊を一緒に渡されることが多いが、それ以上の説明を聞くのはまれだ。
急いで受けとらなければならない薬は診察後、患者や家族が直ちに薬局に出向いて買う必要がある。だが、たとえば午前中に医師の診察を受けた患者がその日の夕刻までに受けとればよい薬であれば、届け先住所を添えた処方箋を病院や診療所から電子メールで薬局に送り、宅配便業者に届けてもらえばすむ。もちろん服薬時の注意点を書いた書類も同梱(どうこん)する。
定期的に一定量の同じ薬の処方を受けている患者もメールなどで注文すれば、いちいち薬局に出かける手間が省ける。薬剤師の助言をもとめたいときは、それこそ対面や電話で依頼すれば済む。現に米英独の各国は処方薬のネット販売を原則として認めているという。

厚労省はいまも処方薬の対面販売を義務づけている。その根拠は省令だ。
市販薬のネット販売を制限してきた厚労省に対し、かつてネット通販業者が起こした行政訴訟で最高裁は法に基づかない裁量行政を批判し、同省の敗訴が決まった。今回、法改正によって処方薬の対面販売を義務づけようとしているのは、その苦い経験があるからにほかならない。

この間、安倍首相が指導力を発揮する場面はみられなかった。
一方で三木谷氏に競争力会議にとどまるよう要請したのも首相だ。真意はどこにあるのか。若かりしころ自民党の社会部会長をつとめた首相には医療関連団体とも浅からぬ付き合いがあった。処方薬のネット販売を可能にする規制改革を、自らは言い出しくい立場だ。うるさ型の三木谷氏に全権をゆだねる戦術なのだろうか。

【日経新聞】
by kura0412 | 2013-11-19 10:02 | 政治 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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