日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

児童虐待防止法に歯科医師の名が

もしかして虐待? に遭遇したら・児童相談所に上手に「通告」する方法

ある日、福岡県北九州市にある北九州市立八幡病院に、熱傷を主訴に1歳9カ月女児が母親に連れられて来院した。当初、母親は「腕に熱傷がある」と話していたが、服を脱がせてみると上半身に広範で一様な熱傷が認められた。
受傷機転を確認したところ、母親は「ミルクを温めるためにお湯を張ったボールを、子どもが届かないであろうと思い、卓上に置いていた。しかし、そのボールに子どもの手が届いてしまい、熱湯をかぶってしまった」と説明した。
受傷後すぐに受診しており、医療者に説明をする母親は熱傷痕に対する動揺から泣き崩れていた。受傷機転を繰り返し尋ねても答えにぶれはなく、医療者の問いかけにも終始、素直に応じる様子が見られた。
しかし、このケースのように高い位置にある加熱液体をかぶった場合、普通なら顔や肩にも熱傷を生じるはず。しかも、液体が飛び散るため熱傷面が一様にはならず、熱傷の深度が部位により異なるのが一般的だ。そう考えると、母親が話すエピソードと所見は、一致していないという見方もできる――。
事故か、児童虐待か。あなたは、このケースにどう対処するだろうか。

少しでも疑えば躊躇せず通告すべし
まず、診察時に児童虐待を疑った場合、医師がとるべき基本的スタンスについておさらいしておこう。
児童虐待は、「子どもの健康と安全が危機的状況にある状態」と定義される。身体的虐待のほか、ネグレクトや性的虐待も含まれる。虐待を受けた子どもは発育や発達に負の影響が起こり、低身長、やせ、知的障害などを伴いやすくなる。また、成長に伴い行動異常や対人関係障害など、発達障害を来たすケースも少なくない。
虐待を受けたと思われる子どもを診療した医師は、児童相談所または福祉事務所に通告する義務がある(児童虐待防止法第6条・児童福祉法第25条)。確証がなくても、虐待を疑った段階で通告するのが原則だ。このあたりは、日本小児科学会『子ども虐待診療手引き』に詳しい。
2012年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談対応件数は6万6807件で、その数は調査が始まってから約20年間、年々増加している。だが「虐待が疑われる子どもを含む報告数と考えると、その数はまだまだ少ない」というのが、児童虐待に詳しい済生会前橋病院(群馬県前橋市)小児科の溝口史剛氏の見解だ。「特に医療者からの報告数が少ないと考えられる。医学的な視点から虐待であるかどうかを判断し、少しでも疑った時点で躊躇せず市町村や児童相談所へ通告すべき」と溝口氏は続ける。

診察時に児童虐待を疑うポイントは、北九州市立八幡病院病院長の市川光太郎氏によると、
(1)家族が説明する受傷機転や病気の経過と、病状や病態が合わない、
(2)体表の凹凸に関わらず、一様な程度の傷がある、
(3)アイロンやタバコなど成傷器が推定できる、
(4)大人を異様に怖がったり、保護者がそばにいる時といない時で動きや表情が変わる――など。
ちなみに、児童相談所等への通告においては、通告者の秘密は守られるほか、医師のように職務上の守秘義務がある場合でも、通告などの正当な情報提供は守秘義務違反には該当しないことが、厚生労働省の通知などにも明記されている。
児童虐待を疑ったら迷わず通告――。それが、医師の基本スタンスと言えよう。

通告は親子との関係をうまく築いてから
しかし現実には、冒頭のような症例に遭遇した場合に、児童相談所などへの通告を逡巡してしまう医師が少なくないのが現状だ。
通告者が明かされない仕組みであるとはいえ、親からしてみれば通告者は容易に特定できてしまうことが想像されるし、結果的に虐待ではなかったり、虐待が一時的なものですぐに問題が解決されたりすれば、近隣地域でその親が医療機関の悪い噂をたてかねない。
また、親に説明をせずに児童相談所に通告してしまうことで、医師と親との信頼関係が損なわれてしまうのも大きなデメリットだ。例えば、程度の軽い虐待で、児童相談所の介入により親子関係は問題なく修復できたにも関わらず、その後の医療面でのフォローを行えないことは、虐待の再発予防の観点からも望ましくない。

では、虐待を疑った場合、通告までにどのような手順を踏むのが、医師・親子の双方にとってベストなのだろうか。
児童虐待の問題にプライマリケア医の立場で長年携わっている井上小児科医院(大分県中津市)院長の井上登生氏は、医師・患者関係をしっかりと構築した上で、「親に『今の親子関係をそのままにしておくと大事になる可能性がある』ことを理解してもらうことが大切」と説明する。
例えば、傷の処置を目的に親子が来院したケースであれば、まず親に傷ができた経緯や子どもの状態の説明を詳しく聞く。このとき「外傷に至るまでのプロセスや子どもの病態をスムーズに説明できない親子は注意して診た方がいい」と井上氏。要チェックの親子は、外傷の処置などを理由にこまめに受診をしてもらうようにして、虐待の程度が悪化していないかどうかを確認する。
一方、初診時であっても、表1に当てはまるような虐待が疑われる症例では、次回の診察までの間に、乳児家庭全戸訪問事業の状況や乳児健診や予防接種の状況を、市町村に確認する。「予防接種が適正な手順で、適切な時期に接種ができているか、ブランクがないかなど細かくチェックする」(井上氏)。あわせて、患児が通っている保育園や幼稚園にも、日常の送り迎えの状況や発達で気になっている点がないか、親の態度に違和感を感じていないかなどを確認しておく。
これら情報を手元に持った上で、親子が次に受診した際に、乳児健診や予防接種の状況などを親に確認する。そうすることで、親の子育てに対する意識を確認できるわけだ。
このような手順を踏み、関係を構築しながら診察を続けるが、それでも再診時に外傷が増えているのを発見したら……。その時は、説明を始める前に、「いつも診ているから虐待ではないことは分かっている」といった前置きを挟むのが井上流だ。
その上で、「今の日本には『児童の権利条約』があり、第三者が見て子どもの虐待と言われかねないと判断したら、医師は報告しなくてはいけない立場にある」と伝える。そして、「大事になってから、市役所や保健師から色々と言われるのは嫌でしょう? そうなる前に、あえて主治医の私から報告させてもらいます」と話すという。突き放すのではなく、親に寄り添いながら、市町村や児童相談所へ通告をする旨を伝えるという方法だ。

虐待をする親のタイプは、5つに大別できる(表2)
中には、親の神経症など、医学的治療で解決できることもあるし、子育てに関する知識や支援体制の不足であれば、保健師や児童相談所の協力を得ることで解決できるケースも多い。「医師は、いつでも相談できる相手として、子どものために、親の側にギリギリまで寄り添い、味方でいなければならない」(井上氏)。

地域ぐるみでの対応と長期のフォローが不可欠
 「医療者は『通告しなければならない』と聞くと、虐待か否かを判断しなければならないと身構えがちだが、そうではなく『育児支援をするきっかけ作りをする』と考えればいい」とアドバイスするのは、市川氏だ。

 「親には、『予防接種や集団生活での不安なことをすぐに相談できるように、担当者を紹介する』と説明してから、市町村や児童相談所に連絡するようにしている」と市川氏は話す。冒頭の症例でも、治療を続け、熱傷の治癒のめどが立った時点で児童相談所へ連絡をし、深刻な虐待事例に発展する前に、地域でうまく介入ができたという。
一方、開業医では手に負えそうもない事例に遭遇した場合には、「医師ならではの方便ではあるが、病態から考えられる鑑別疾患(表3)を挙げ、『精査が必要だ』とできるだけ早く地域の機関病院に紹介した方がいい」と溝口氏。「複数の医療機関が関わることで、地域ぐるみでの支援がしやすくなる」(同氏)からだ。
最近は、基幹病院を中心に、院内虐待対応チーム(CPT)を設置する例も増えているので、そうした病院に紹介することができればベストだろう。また、各都道府県に児童虐待に対応する拠点病院を1つ設置し、児童虐待専門コーディネーターを置いて、地域の「児童虐待防止医療ネットワーク」を構築する動きもある。昨年9月に検討会が設置されており、各地域の医療機関における同事業の推進を目的に、報告書がまとめられる予定だ。
とはいえ実際は、医療者が遭遇する児童虐待は、一筋縄で解決できる事例ばかりではない。とにかく最悪の事態を防ぐためにも、疑い事例への迅速で適切な対応と、継続的なフォローを欠かすことはできない。
 「医療者は、親の『もう大丈夫』という言葉を鵜呑みにすべきではない。『成長につれて現れる症状もあるから』などと説明し、子どもと医療機関の関わりを途切れないようにする工夫をしなければならない」と市川氏は話している。

【日経メディカルオンライン】




私自身もネグレクトまでいかなくても、育児放棄のようなケースに遭遇したこともあり、歯科健診における児童虐待の発見については既に学校関係者にも知られているところです。
しかし、児童虐待防止法を調べると第六条では、「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。」
その一方、第五条では「学校、児童福祉施設、病院その他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない。」となっています。
歯科医師はその職種として人道的責務はあっても法律的義務はないのでしょうか。
言葉尻を取るようですが、それが法律でありこの点をないがしろした結果が歯科界の現状です。
by kura0412 | 2013-08-27 15:40 | 歯科医療政策 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
以前の記事
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2005年 03月
2005年 02月
2005年 01月
2004年 12月
2004年 11月
2004年 10月
2004年 09月
2004年 08月
2004年 07月
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧