児童虐待防止法に歯科医師の名が

もしかして虐待? に遭遇したら・児童相談所に上手に「通告」する方法

ある日、福岡県北九州市にある北九州市立八幡病院に、熱傷を主訴に1歳9カ月女児が母親に連れられて来院した。当初、母親は「腕に熱傷がある」と話していたが、服を脱がせてみると上半身に広範で一様な熱傷が認められた。
受傷機転を確認したところ、母親は「ミルクを温めるためにお湯を張ったボールを、子どもが届かないであろうと思い、卓上に置いていた。しかし、そのボールに子どもの手が届いてしまい、熱湯をかぶってしまった」と説明した。
受傷後すぐに受診しており、医療者に説明をする母親は熱傷痕に対する動揺から泣き崩れていた。受傷機転を繰り返し尋ねても答えにぶれはなく、医療者の問いかけにも終始、素直に応じる様子が見られた。
しかし、このケースのように高い位置にある加熱液体をかぶった場合、普通なら顔や肩にも熱傷を生じるはず。しかも、液体が飛び散るため熱傷面が一様にはならず、熱傷の深度が部位により異なるのが一般的だ。そう考えると、母親が話すエピソードと所見は、一致していないという見方もできる――。
事故か、児童虐待か。あなたは、このケースにどう対処するだろうか。

少しでも疑えば躊躇せず通告すべし
まず、診察時に児童虐待を疑った場合、医師がとるべき基本的スタンスについておさらいしておこう。
児童虐待は、「子どもの健康と安全が危機的状況にある状態」と定義される。身体的虐待のほか、ネグレクトや性的虐待も含まれる。虐待を受けた子どもは発育や発達に負の影響が起こり、低身長、やせ、知的障害などを伴いやすくなる。また、成長に伴い行動異常や対人関係障害など、発達障害を来たすケースも少なくない。
虐待を受けたと思われる子どもを診療した医師は、児童相談所または福祉事務所に通告する義務がある(児童虐待防止法第6条・児童福祉法第25条)。確証がなくても、虐待を疑った段階で通告するのが原則だ。このあたりは、日本小児科学会『子ども虐待診療手引き』に詳しい。
2012年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談対応件数は6万6807件で、その数は調査が始まってから約20年間、年々増加している。だが「虐待が疑われる子どもを含む報告数と考えると、その数はまだまだ少ない」というのが、児童虐待に詳しい済生会前橋病院(群馬県前橋市)小児科の溝口史剛氏の見解だ。「特に医療者からの報告数が少ないと考えられる。医学的な視点から虐待であるかどうかを判断し、少しでも疑った時点で躊躇せず市町村や児童相談所へ通告すべき」と溝口氏は続ける。

診察時に児童虐待を疑うポイントは、北九州市立八幡病院病院長の市川光太郎氏によると、
(1)家族が説明する受傷機転や病気の経過と、病状や病態が合わない、
(2)体表の凹凸に関わらず、一様な程度の傷がある、
(3)アイロンやタバコなど成傷器が推定できる、
(4)大人を異様に怖がったり、保護者がそばにいる時といない時で動きや表情が変わる――など。
ちなみに、児童相談所等への通告においては、通告者の秘密は守られるほか、医師のように職務上の守秘義務がある場合でも、通告などの正当な情報提供は守秘義務違反には該当しないことが、厚生労働省の通知などにも明記されている。
児童虐待を疑ったら迷わず通告――。それが、医師の基本スタンスと言えよう。

通告は親子との関係をうまく築いてから
しかし現実には、冒頭のような症例に遭遇した場合に、児童相談所などへの通告を逡巡してしまう医師が少なくないのが現状だ。
通告者が明かされない仕組みであるとはいえ、親からしてみれば通告者は容易に特定できてしまうことが想像されるし、結果的に虐待ではなかったり、虐待が一時的なものですぐに問題が解決されたりすれば、近隣地域でその親が医療機関の悪い噂をたてかねない。
また、親に説明をせずに児童相談所に通告してしまうことで、医師と親との信頼関係が損なわれてしまうのも大きなデメリットだ。例えば、程度の軽い虐待で、児童相談所の介入により親子関係は問題なく修復できたにも関わらず、その後の医療面でのフォローを行えないことは、虐待の再発予防の観点からも望ましくない。

では、虐待を疑った場合、通告までにどのような手順を踏むのが、医師・親子の双方にとってベストなのだろうか。
児童虐待の問題にプライマリケア医の立場で長年携わっている井上小児科医院(大分県中津市)院長の井上登生氏は、医師・患者関係をしっかりと構築した上で、「親に『今の親子関係をそのままにしておくと大事になる可能性がある』ことを理解してもらうことが大切」と説明する。
例えば、傷の処置を目的に親子が来院したケースであれば、まず親に傷ができた経緯や子どもの状態の説明を詳しく聞く。このとき「外傷に至るまでのプロセスや子どもの病態をスムーズに説明できない親子は注意して診た方がいい」と井上氏。要チェックの親子は、外傷の処置などを理由にこまめに受診をしてもらうようにして、虐待の程度が悪化していないかどうかを確認する。
一方、初診時であっても、表1に当てはまるような虐待が疑われる症例では、次回の診察までの間に、乳児家庭全戸訪問事業の状況や乳児健診や予防接種の状況を、市町村に確認する。「予防接種が適正な手順で、適切な時期に接種ができているか、ブランクがないかなど細かくチェックする」(井上氏)。あわせて、患児が通っている保育園や幼稚園にも、日常の送り迎えの状況や発達で気になっている点がないか、親の態度に違和感を感じていないかなどを確認しておく。
これら情報を手元に持った上で、親子が次に受診した際に、乳児健診や予防接種の状況などを親に確認する。そうすることで、親の子育てに対する意識を確認できるわけだ。
このような手順を踏み、関係を構築しながら診察を続けるが、それでも再診時に外傷が増えているのを発見したら……。その時は、説明を始める前に、「いつも診ているから虐待ではないことは分かっている」といった前置きを挟むのが井上流だ。
その上で、「今の日本には『児童の権利条約』があり、第三者が見て子どもの虐待と言われかねないと判断したら、医師は報告しなくてはいけない立場にある」と伝える。そして、「大事になってから、市役所や保健師から色々と言われるのは嫌でしょう? そうなる前に、あえて主治医の私から報告させてもらいます」と話すという。突き放すのではなく、親に寄り添いながら、市町村や児童相談所へ通告をする旨を伝えるという方法だ。

虐待をする親のタイプは、5つに大別できる(表2)
中には、親の神経症など、医学的治療で解決できることもあるし、子育てに関する知識や支援体制の不足であれば、保健師や児童相談所の協力を得ることで解決できるケースも多い。「医師は、いつでも相談できる相手として、子どものために、親の側にギリギリまで寄り添い、味方でいなければならない」(井上氏)。

地域ぐるみでの対応と長期のフォローが不可欠
 「医療者は『通告しなければならない』と聞くと、虐待か否かを判断しなければならないと身構えがちだが、そうではなく『育児支援をするきっかけ作りをする』と考えればいい」とアドバイスするのは、市川氏だ。

 「親には、『予防接種や集団生活での不安なことをすぐに相談できるように、担当者を紹介する』と説明してから、市町村や児童相談所に連絡するようにしている」と市川氏は話す。冒頭の症例でも、治療を続け、熱傷の治癒のめどが立った時点で児童相談所へ連絡をし、深刻な虐待事例に発展する前に、地域でうまく介入ができたという。
一方、開業医では手に負えそうもない事例に遭遇した場合には、「医師ならではの方便ではあるが、病態から考えられる鑑別疾患(表3)を挙げ、『精査が必要だ』とできるだけ早く地域の機関病院に紹介した方がいい」と溝口氏。「複数の医療機関が関わることで、地域ぐるみでの支援がしやすくなる」(同氏)からだ。
最近は、基幹病院を中心に、院内虐待対応チーム(CPT)を設置する例も増えているので、そうした病院に紹介することができればベストだろう。また、各都道府県に児童虐待に対応する拠点病院を1つ設置し、児童虐待専門コーディネーターを置いて、地域の「児童虐待防止医療ネットワーク」を構築する動きもある。昨年9月に検討会が設置されており、各地域の医療機関における同事業の推進を目的に、報告書がまとめられる予定だ。
とはいえ実際は、医療者が遭遇する児童虐待は、一筋縄で解決できる事例ばかりではない。とにかく最悪の事態を防ぐためにも、疑い事例への迅速で適切な対応と、継続的なフォローを欠かすことはできない。
 「医療者は、親の『もう大丈夫』という言葉を鵜呑みにすべきではない。『成長につれて現れる症状もあるから』などと説明し、子どもと医療機関の関わりを途切れないようにする工夫をしなければならない」と市川氏は話している。

【日経メディカルオンライン】




私自身もネグレクトまでいかなくても、育児放棄のようなケースに遭遇したこともあり、歯科健診における児童虐待の発見については既に学校関係者にも知られているところです。
しかし、児童虐待防止法を調べると第六条では、「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。」
その一方、第五条では「学校、児童福祉施設、病院その他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない。」となっています。
歯科医師はその職種として人道的責務はあっても法律的義務はないのでしょうか。
言葉尻を取るようですが、それが法律でありこの点をないがしろした結果が歯科界の現状です。
by kura0412 | 2013-08-27 15:40 | 歯科医療政策 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラー片手に歯科医師の本音

『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




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