安全性最優先では

大衆薬ネット販売解禁に「抜け道」(真相深層)

安倍晋三首相が全面解禁を宣言した一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売。大胆な規制緩和のようだが、看板の裏側をのぞくと、抜け道が見える。ネット販売が医療用医薬品(処方薬)に広がることを恐れる医師会に配慮し、厚生労働省は一部のネット販売の再禁止を検討する。

■開業医に配慮
大衆薬のネット販売は、厚労省による規制は法律に基づかず違法との最高裁判決が1月に出てから解禁状態となった。その流れに逆らう厚労省の検討会が今月、始まった。議題は大衆薬になって4年以内の薬など28品目のネット販売を再規制すべきか。「時間がたたないと安全性の証拠が整わない」(同省)というのが表向きの理由だ。当初は25品目だったが、計算違いとして3品目増やした。
「販売期間と副作用リスクに相関関係はない。これは根拠なき規制だ」と大手製薬会社の幹部は憤る。発売後4年を過ぎても副作用リスクが高い薬は多いという。副作用が規制の根拠でないとすると、なぜこの28品目なのか。大衆薬の売れ筋が選ばれたのだと製薬業界では囁かれる。

28品目に含まれる第一三共ヘルスケアの解熱鎮痛剤「ロキソニンS」や大正製薬の発毛剤「リアップX5」はネット販売ケンコーコムで売れ筋1~2位を争う。調査会社の富士経済によると、2013年の大衆薬市場が前年比0.5%増にとどまるなか、28品目は10%増える見込みだ。
厚労省が売れ筋の薬のネット販売を規制しようとする背景には、医師への配慮がある。大衆薬のネット販売が解禁されれば、次は処方薬のネット販売を求める声が出る。処方薬市場は大衆薬の約10倍。ネットで買えれば、処方薬をもらうために通院する人が減り、開業医の稼ぎは減る。
ただ、ネット販売を単に禁じるだけでは「全面解禁」という首相の方針と矛盾してしまう。解禁の旗は降ろさないまま、医師が望む規制の網をかけて両方の顔を立てたいというのが厚労省の本音だ。

■処方薬「逆戻り」
1つの案は大衆薬としての発売後4年ほどネット販売を禁じる新制度を作るというもの。将来ネットで売れるから首相方針と矛盾しないという理屈だが、「ネットだけ売れないのは許せない」と楽天などネット業者は反発する。
2つめは「副作用が強くネットで売れないと決めた品目は処方薬に戻す」(日本医師会幹部)という奇策。大衆薬の承認を取り消し、ネットどころか薬局でも売れなくする。通院して処方箋をもらわないと買えなくなる。最高裁判決を踏まえ、両案とも薬事法を改正する見通しだ。ただし第2案では、どの薬を処方薬に戻すかの選択が厚労省のさじ加減に委ねられる。
厚労省は医療費を抑えようと処方箋なしで薬局で買える大衆薬を増やしてきた。4月にも医師会の反対を退け、中性脂肪異常改善薬「エパデールT」を処方薬から大衆薬に転用した。処方薬への逆戻りは、自らの医療政策の否定となる。
「医療用に戻すということは、販売するなということ」。28品目の一つ精力剤「ガラナポーン」を製造・販売する大東製薬工業の福井厚義社長は警戒する。処方薬の承認を得るのにかかる数十億円の負担は中小の製薬会社には重すぎる。処方薬に戻って喜ぶのは患者が増える開業医だけだ。
「処方薬にはネット販売の手をつけさせない」。自民党内では医師会などの支援で当選した厚労族議員がネット販売を規制しようと勢い込む。参院選前は解禁派の安倍首相との対立を避けて鳴りを潜めていたが、当面、国政選挙はないとあって再び声を上げ始めた。
処方薬のネット販売は欧米の一部の国では認められている。英国では一度処方箋をもらえば、半年ほどは処方薬を薬局から自宅に送ってもらえる。ネットで薬を買えるようになれば便利になり、医療コストも下がる。既得権ばかりにとらわれ、こうした大事な議論が進まないのは本末転倒だ。

【日経新聞】



ロキソニンがネット販売解禁になるような安全性は誰が保障するのでしょうか。安全を最優先にしないことこそが本末転倒の議論です。
by kura0412 | 2013-08-16 12:03 | 医療政策全般 | Comments(0)

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