元厚労官僚の提案です

医療・介護をどうするのか? ―社会保障と税の一体改革への若干の提案―

我が国の人口減少現象のなかでの問題は、年齢構成の変化である。生産年齢人口は急速に減少する一方、「団塊の世代」が24年には75歳に達しいわゆる後期高齢者の仲間入りをすることでわかるように高齢者は40年頃まで増加する。今後は東京などの大都市及びその周辺の都市の高齢者が激増、一方、農村部・過疎地域では町村単位で「限界集落」が出現する。
12年度の社会保障給付費は、約110兆円(対GDP比22.8%)、国の歳出総額(約90兆円)よりも大きい。その内訳は、年金50%、医療30%、福祉(介護等)20%。現在の年金・医療・介護のサービス水準を維持するだけでも税金を毎年1兆円規模で投入しなければならない。12年度から25年度にかけての社会保障給付費の増加額の4分の3は医療・介護。だから、医療・介護は、社会保障の持続可能性の議論の焦点にならざるを得ない。

■議論の前提
・平均寿命が85歳となった現代の高齢者は、よく言われるように、複数の病気を同時に抱え、症状の悪化と改善を繰り返しながら生活する。もはや病院での完治は期待できず、医療と福祉のサービスを順次受ける必要がある。だから、医療は「治す医療」から地域での生活を「支える医療」に転換せざるを得ない。地域包括ケアの時代に移行しつつある。
・「家庭」「多様な住まい」「施設」などでの在宅医療のイメージも従来の患者が住まいと病院を行き来する形態から、患者は動かず配慮された環境の中で医療・介護チームによってケアされ看取られる形態へと移行するはずである。
・これらサービス提供体制の整備に並行して不可欠なことがある。それは、こうした変革は国民が主体となって行わねばならないことである。行政は情報の提供や教育を行うにとどまり、国民が自治の精神で自律的に、少なくとも納得し参画して行うことである。地域社会をベースに「負担と給付の見える化」「情報の共有と地域社会への参画」「セルフマネジメント」「かかりつけ医」を自分たちが合意し納得のうえで進める必要がある。

■改革へのいくつかの新視点
1.市民への情報提供と教育
医療保険のレセプトデータを個人ごとに分析(この場合のポイントは、レセプトにおける主病名のほか治療されたすべての病名に着目し総点数を合理的な方法により各病名に振り分ける作業を行う)。その時系列変化を把握。生活習慣病にどのような変化があるかないか。渡り歩きはしていないか。多受診はないかなどいくつかの視点から解析し、顕著な傾向を発見、把握し、個人ごとにその情報を提供し、納得してもらい、行動変容に繋がるように指導する(強要はしない)。

2.負担と給付の見える化
市町村を高齢者ケアの責任主体と位置付ける。その独自財源として住民所得税の徴収権限を付与する(徹底した地方分権)。どのようなサービスを提供するかを明確にし、一方でそのための財源として住民所得税率を明らかにする。住民はサービス水準に不満があれば税率引き上げを了承しなければならず、税率が高いという不満があればサービスカットを容認しなければならない。国が行うべきは、「自立した強い個人」の育成のための教育である。

3.市町村の地区計画の見直し
市町村は、中学校区毎にそこで提供される医療・福祉のサービス水準を明確に規定する。地域住民や医療法人からの提案を得て地区計画を決定し、その後の状況を住民が管理する。

4.かかりつけ医(総合診療医)に全員加入
かかりつけ医は住民のゲートキーパー。全員加入・登録。もちろん、病院と連携しながら、住民に医療・介護サービスをつないでいく。仮に、紹介なくして病院にかかれば、現物給付はせず、現金給付(窓口で全額支払い、事後現金償還)とする。

5.終末期医療の在り方を明確化
国は、裁判所(司法)も含め、終末期の定義、延命治療の中止要件を明らかにし、公的制度においてその要件に従い給付する。どうしても延命治療を最期まで望む者や家族のために私的保険を作り(国の関与は債務保証程度にとどめる)、望む者の中での危険分散に協力する。


総括的なことを言わしてもらうならば、政治に関する市民の関心や能力が限定されているのは、十分な参加の機会が与えられていないからである(自ら積極的に参加しようとしないのかもしれないが)。市民は参加を通じて人間性を高めることができるし、政治を担うことができるようになる。自治の理性と現実を認識できる知性は、参加し行動することからしか得られない。
日本を真に民主主義の国にするために、今日的課題の医療・介護の世界に市民自らが市町村レベルで参加し、考え、苦しみ、決断していくことが、今こそ個々人に求められているのではなかろうか。

【先見創意の会:岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)】



ネットを探索していたら懐かしい方を見つけました。参考になる内容です。
by kura0412 | 2013-03-15 17:57 | 医療政策全般 | Comments(0)

コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
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