良い風は吹いていますが

リスクはらむもまず順調

待ち望んでいた「円安・株高」が実現しつつある。アベノミクス効果である。
東証日経平均株価は先週12週連続で上昇した。なんと54年前の「岩戸景気」以来のことで、当時の首相は安倍首相の母方の祖父岸信介氏だった。株価は「1万千円台に乗り、円相場はついに1ドル92円台前半と2年8カ月ぶりの水準まで下落した。政府が賃上げを産業界に促し、それに連合が「デフレ脱却のために総額1%の賃上げを」と応ずるなど、忘れられていた「賃上げ」の文字がメディアに踊るようになった。
もちろん、悲観的に見れば、アベノミクスはかなり危ないとも言える。円安を刺激しすぎて円安が止まらなくなる危険性をはらんでいる。東証の6割を占める海外投資家は、新しく日本株を買う際に円を売るというリスク分散の為替ヘッジをしている。この傾向が拡大し、80兆円の日本株残高に波及したり、さらに85兆円の日本国債売りにつながったら、円安は止められなくなる。
問題は1ドルいくらまでが「いい円安」でいくらなら「悪い円安」なのか、だれも具体的な数字に言及しないことである。
円安で輸出企業は久しぶりの干天の慈雨にほっとしているだろうが、エネルギーコストがすでに相当高騰しているのは、街のガソリンスタンドへ行けばすぐわかる。だが、だからといってアクセルとブレーキを同時に踏む愚をおかしてはならない。

安倍政権は「経済再生」のための「3本の矢」を強調している。(1)大胆な金融政策(2)機動的な財政政策(3)民間投資の喚起―。だが、いまの円安株高を持続可能な経済成長に結びつけるには、(3)のための規制改革が重要になる。安倍政権の取り組みの中では規制改革の「真剣度合い」がもっとも問われてくる。
安倍政権のロケットスタートぶりが、かなり華々しく、経済指標がそれを裏付けているため、国会論戦を聴いていても野党が実に攻めにくそうにしているのが印象的だ。
確かにアベノミクスにはリスクも伴うが、これまでまったく見つけられなかったデフレ脱却の糸口をつかみつつあるということだけでも大きな功績である。経済再生の軌道に乗ったらぜひ手がけてもらいたいのは、「夢のある雇用」である。大学生は卒業後の進路に悲観的になっており、どこでもいいから内定をもらえれば、と縮こまってしまっている。また、やむなく派遣社員で仕事をしている若い人たちに正社員としての登用の道を切り開いてあげなければならない。これは次の世代への私たちの責務と考えるべきだ。

そして何よりも急がれるのは東日本大震災の被災地の復興である。とりわけ福島である。
いつかは元のふるさとで暮らせるようになるかもしれないという幻想を与えてしまい、かえって残酷なことになっているように思える。福島第1原発からたとえば20キロ圏内などの区域を国が土地をすべて買い上げたらどうか。そしてその土地でがれき処理などを行い、やがては国立公園にして一帯を太陽光パネルと風力発電のメッカにする、などという構想を打ち出してほしい。本来、直後に民主党政権が決めるべきものだったが、いまからでも遅すぎるということはないだろう。

公共事業の復活でまた元の自民党政治に戻った、という批判もあるが、山梨県の中央高速道路笹子トンネル内の天井落下事故を例にとるまでもなく、我が国はまだまだインフラ整備が必要である。もちろん、無駄な公共事業は極力排すべきだが、首都高速道路の橋桁など、目で見ただけで大丈夫かなと不安に感じるほど腐食が進んでいる箇所が目立つ。

経済が持続的に好調を維持できれば、経営側は「賃上げは将来下げることができないので無理だが、賞与なら」という姿勢なので、夏のボーナスを当てにしている人も多いだろう。本当に何年ぶりかの賞与増があったあと、7月に天下分け目の参議院選がある。
衆院選で勝利した与党は次の参院選では敗北する、というのがこれまでのジンクスだったが、今回は選挙まで半年しかないことと、アベノミクス効果で自民党がかなり有利と見られている。
自公政権にとっては参議院で過半数を制してねじれ現象を解消したいというのが悲願。それを阻止しようと野党側は選挙協力の動きを始めているが、民主党は孤立しつつあり、日本維新の会とみんなの党の関係も橋下大阪市長と渡辺代表が批判し合うなど、あまりうまく進んでいない。野党がばらばらで安倍自民党の独走を許せば、日本の民主主義は危機的なものになる。健全な力を持った野党の存在は民主政治にとって不可欠なものである。

【田勢康弘・愛しき日本政治】



経済は上向きムードが漂い始め、野党が対自民でまとまっていません。確かに自民党には良い風が吹いていることは間違いないようです。
但し、その風は、一つの出来事で一瞬で逆風になることも歴史が物語っています。
by kura0412 | 2013-02-04 11:46 | 政治 | Comments(0)