「総報酬割負担」

高齢者医療14兆円、総報酬割負担の意味- 2013医療介護の潮流

2012年度予算ベースで、75歳以上の後期高齢者医療費は14.2兆円(対象約1500万人)。GDP(国内総生産)の3%近くを占めるお金を、誰が、どう負担するのか-。
予算規模の増大とともに難易度の上がるこの問題は、今年こそ一つの局面を迎えそうだ。多くの保険者、患者や国を含めた負担者がいる日本の制度で、カギとなるのは「公平性」。後期高齢者医療制度における「総報酬割」の全面導入の行方が注目される。

■高齢者医療に掛かるお金
「中小企業経営にとって、10%の保険料率は既に限界。皆さんの切実な思いを、手を緩めることなく訴えてまいります」-
従業員数9人以下が加入事業者の4分の3を占める全国健康保険協会(協会けんぽ)。
小林剛理事長は昨年11月、初めて開いた全国大会で、都道府県支部の評議員を前に力を込めた。壇上には、317万筆を超える署名の入った段ボール。「10%は既に限界」という言葉を、小林理事長は昨年秋、社会保障審議会医療保険部会や記者会見で何度も繰り返した。

「保険」の文字が入っていない後期高齢者医療制度は、75歳以上の被保険者が納める保険料以外の、公費、現役世代の保険料が財源の多くを占める。
後期高齢者医療費14.2兆円のうち、現役世代の保険料から成る「支援金」は5.5兆円。このうち協会けんぽは1.6兆円を拠出している=グラフ、クリックで拡大=。収入規模が8.5兆円(12年度見通し)の協会けんぽにとって大きな金額だ。しかも、この支援金の伸びは、収入の伸びより大きくなる見通し。大企業が入る健康保険組合や共済組合でも事情は同じだが、12年度まで国庫補助率の引き上げなどの「特例措置」を受けている協会けんぽの訴えは必死だ。

■協会けんぽ支援策「総報酬割」の意味
「制度改革の議論では、(当事者団体の関心の)すべては、自分たちの負担がどれだけ増えるかということ」。
06年まで、後期高齢者医療制度を含む医療制度改革関連法案の立案に携わった、元財務省官僚(当時は厚生労働省へ出向)の村上正泰・山形大大学院教授(医療政策学)は、端的に表現する。制度改革の焦点の一つ、「総報酬割の導入」も、「自分たちの負担は増えるのか、減るのか」のどちらかで、社保審医療保険部会の意見も分かれる。

総報酬割とは、支援金の保険者の分担を、保険者ごとの総報酬額の比率で割り振る計算方法。
この方法では、所得に対する支援金の率は同じになる。加入者数で頭割にしていたこれまでの計算式に比べれば、差は歴然だ。10年度以降、支援金総額の3分の1を、協会けんぽの負担を小さくするために総報酬割計算としている。

「加入者割では、負担能力が全然考慮されない。結果的に所得の低いところで負担が大きくなる」と村上氏。
社会保障・税一体改革大綱では、高齢者医療支援金について、「各被用者保険者の総報酬に応じた負担とする措置について検討する」とある。社会保障制度改革国民会議の審議事項となるが、国民会議の設置自体が今年8月までとされていることを念頭に村上氏は、「制度を大きく動かすことに対し合意は難しい。総報酬割の全面化が大きな焦点になるのではないか」とみている。

■利害意識を超えるために必要なもの
全面的に総報酬割で支援金額を決めるとなれば、所得水準の高い保険者は負担が増え、低い保険者は協会けんぽを含めて減る。
厚労省の資料によると、健保組合の中でも、880の組合は増えるが、564の組合は減る推計となる。「負担能力に応じた負担で財源を賄っていくことをもっと考えないと、(制度維持は)なかなか難しいのではないか。今は、これができているようで、できていない。この意味で、総報酬割はやった方がいい」と、村上氏は方向性を評価する。

「負担能力に応じた負担」を求めるのは、総報酬割以外にも余地がある。例えば、高齢者が支払う保険料の上限。
低所得者対策が必要な一方で、高額な所得のある高齢者には、協会けんぽや国保に比べ、低い金額での「頭打ち」を設定する必要はないというのが、村上氏の主張だ=表=。
ステークホルダーが集まる会議では、「負担者代表」が出席していない公費に意見が向かいがちだが、これについても村上氏は、「税の場合は、必ずしも医療のための財源になるとは限らない。制度維持のためには、税を補完的に投入しつつも、保険料を中心にやりくりした方がいい」と指摘する。

いずれにしても、税を含めた応能負担の仕組みに加え、「他の先進国並みの名目成長はないと厳しい」と村上氏。
今後、高齢者医療制度だけでなく、各方面で「応能負担」の要請は強まるとみる。実際に、介護保険制度における保険者の納付金算出方法でも、総報酬割導入の検討が続いている。後期高齢者医療制度の「総報酬割」導入で、各保険者の利害を乗り越えられるかどうかが、一つの試金石になりそうだ。

【キャリアブレイン】



こうゆう医療保険全体の負担割についても考える必要があるようです。
by kura0412 | 2013-01-05 13:15 | 医療政策全般 | Comments(0)