日医は対政治の変革期か
2012年 02月 27日
日医会長選、「組織内候補」見直し機運- 「今回選挙は、日医が変わる好機」
4月1日投開票の日本医師会(日医)の会長選には、現職の原中勝征会長、副会長の横倉義武氏、京都府医師会の森洋一会長が立候補を表明している。
政治との距離感については各候補とも、与野党から一定の距離を置く方針を示している。その中で、日医の政治団体「日本医師連盟」(日医連)が国会に送り込む組織内候補の在り方を見直そうという機運が高まっている。
原中氏が当選した前回会長選後の2010年参院選で日医連は、組織内候補の議席を失った。
原中氏は会長選で、民主党とのパイプを強調。それを受けて、日医連はこの参院選で、それまで組織内候補だった自民党現職(当時)の西島英利氏を「支援」に格下げし、民主党候補の安藤たかお氏を「推薦」した。みんなの党の候補だった清水鴻一郎氏も「支援」にした。この全方位的な対応により、都道府県医師連盟ごとに支持候補がばらばらになり、結果的に全員が落選した。
10年の参院選は、日医連の集票力が低下していることを浮き彫りにした。
安藤、西島、清水の3候補を合わせた得票数は17万票余り。07年参院選で擁立し、次点だった候補の得票よりも、1万6000票以上も下回った。
09年に民主党政権が誕生し、日医は民主党に寄り添った。この2年間、組織内からの議員がいない中で、執行部の役員が積極的に国会に出向き、与野党を問わず、医系議員や厚生労働関係議員などに、日医の考えを説明してきた。
原中氏は、「わたしは、一人の参院議員がいたら、その人を介して、何でもできると思っていた。毎年、相当の費用を使っていたが、(政策などが)通ったかどうかについて検証が、全然ない」として、組織内候補に否定的だ。また、「今、組織内候補がいない状態で、日医の担当役員が行政官などに対し、説明する機会が多くなっている。一人を介してやるよりも、数倍も、数十倍も、効果的だと思っている」とも語る。
一方、横倉氏は、現時点で態度を決めかねている。
横倉氏は、「10年の参院選の後、与野党の医系議員と頻繁に、接触をしてきた。無理してまで、一つの政党から出す必要があるのか、という考えは確かにある。ただ、これだけの集票力があるというのを、どこかで見せておかなくてはいけないという意見もある」と語り、日医連の中でも賛否が分かれていることを明らかにした。
政治に頼らない運営を目指す森氏は、日医連の在り方を、根本から見直す必要があると指摘する。
「すべての会員が参加できる仕組みにしなくてはいけない。ただ、全員が同じ方向を目指すのは不可能。どのように会員の意見を集約するのかについて議論が必要だ」。
会長選は3月1日に公示され、選挙戦が本格化。各候補は全国で、自身のマニフェストを説明する。その中では、日医の政策提言力や、情報発信力が焦点になる見通しだ。会長選が終わり、その1年後には、参院選が控えている。組織内候補の在り方を含め、選挙戦略の議論は避けられない。
政治と業界団体の関係に詳しい、明治学院大の川上和久副学長・法学部教授に聞いた。
本格的な高齢化社会を迎えるに当たり、政治の機能は、成長するパイの「分配」から、縮小するパイを「削る」方向に変化している。その中で、これまでパイを獲得することにレゾンデートル(存在価値)があった日医などの業界団体は、その在り方を見直す時期に来ている。また、01年の参院選で非拘束名簿方式が導入されて以来、業界団体は、従来のような圧倒的な集票力を見せつけられなくなっている。
パイも集票力もない八方ふさがりの状態で、日医には何もやりようがないのか。いや、決してそうではない。改革のチャンスだ。高齢化の進展で、医療費が増大する中で、積極的に政策提言するアクターとして機能していく必要がある。政権交代しても、変わってはいけない政策がある。社会保障と税の一体改革が、それだ。
国民皆保険を維持してほしいというのは国民の合意だろう。日医は、開業医の既得権を守る集団ではなく、高齢化社会でも医療の質を落とさず、国民皆保険を維持するための具体的な政策を打ち出す役割がある。日医は、国民世論を味方に付け、国民が納得する医療のグランドデザインを示すべきだ。組織内候補はもう時代遅れだ。それよりも、日医が提案する政策に理解があり、それを推し進めようとする政治家を取り込んで育てていく方が、政策実現のスピードが速く、効率的だろう。
政治家のほか、厚生労働省やシンクタンクなどを巻き込み、政策提言・情報発信機能が備わった日医に変革する。今回の会長選は、「日本の医療を立て直していく」という一本の筋を通して、いわゆる「圧力団体」から脱却する絶好の機会だ。
【キャリアイレブン】
ここ2回の参議院議員選挙の結果も受けて、対政治に対して日医は大きな変革期を迎えているのかもしれません。
果たして日歯、日歯連盟もその流れを追随するべきなのでしょうか。議論の分かれるところです。
4月1日投開票の日本医師会(日医)の会長選には、現職の原中勝征会長、副会長の横倉義武氏、京都府医師会の森洋一会長が立候補を表明している。
政治との距離感については各候補とも、与野党から一定の距離を置く方針を示している。その中で、日医の政治団体「日本医師連盟」(日医連)が国会に送り込む組織内候補の在り方を見直そうという機運が高まっている。
原中氏が当選した前回会長選後の2010年参院選で日医連は、組織内候補の議席を失った。
原中氏は会長選で、民主党とのパイプを強調。それを受けて、日医連はこの参院選で、それまで組織内候補だった自民党現職(当時)の西島英利氏を「支援」に格下げし、民主党候補の安藤たかお氏を「推薦」した。みんなの党の候補だった清水鴻一郎氏も「支援」にした。この全方位的な対応により、都道府県医師連盟ごとに支持候補がばらばらになり、結果的に全員が落選した。
10年の参院選は、日医連の集票力が低下していることを浮き彫りにした。
安藤、西島、清水の3候補を合わせた得票数は17万票余り。07年参院選で擁立し、次点だった候補の得票よりも、1万6000票以上も下回った。
09年に民主党政権が誕生し、日医は民主党に寄り添った。この2年間、組織内からの議員がいない中で、執行部の役員が積極的に国会に出向き、与野党を問わず、医系議員や厚生労働関係議員などに、日医の考えを説明してきた。
原中氏は、「わたしは、一人の参院議員がいたら、その人を介して、何でもできると思っていた。毎年、相当の費用を使っていたが、(政策などが)通ったかどうかについて検証が、全然ない」として、組織内候補に否定的だ。また、「今、組織内候補がいない状態で、日医の担当役員が行政官などに対し、説明する機会が多くなっている。一人を介してやるよりも、数倍も、数十倍も、効果的だと思っている」とも語る。
一方、横倉氏は、現時点で態度を決めかねている。
横倉氏は、「10年の参院選の後、与野党の医系議員と頻繁に、接触をしてきた。無理してまで、一つの政党から出す必要があるのか、という考えは確かにある。ただ、これだけの集票力があるというのを、どこかで見せておかなくてはいけないという意見もある」と語り、日医連の中でも賛否が分かれていることを明らかにした。
政治に頼らない運営を目指す森氏は、日医連の在り方を、根本から見直す必要があると指摘する。
「すべての会員が参加できる仕組みにしなくてはいけない。ただ、全員が同じ方向を目指すのは不可能。どのように会員の意見を集約するのかについて議論が必要だ」。
会長選は3月1日に公示され、選挙戦が本格化。各候補は全国で、自身のマニフェストを説明する。その中では、日医の政策提言力や、情報発信力が焦点になる見通しだ。会長選が終わり、その1年後には、参院選が控えている。組織内候補の在り方を含め、選挙戦略の議論は避けられない。
政治と業界団体の関係に詳しい、明治学院大の川上和久副学長・法学部教授に聞いた。
本格的な高齢化社会を迎えるに当たり、政治の機能は、成長するパイの「分配」から、縮小するパイを「削る」方向に変化している。その中で、これまでパイを獲得することにレゾンデートル(存在価値)があった日医などの業界団体は、その在り方を見直す時期に来ている。また、01年の参院選で非拘束名簿方式が導入されて以来、業界団体は、従来のような圧倒的な集票力を見せつけられなくなっている。
パイも集票力もない八方ふさがりの状態で、日医には何もやりようがないのか。いや、決してそうではない。改革のチャンスだ。高齢化の進展で、医療費が増大する中で、積極的に政策提言するアクターとして機能していく必要がある。政権交代しても、変わってはいけない政策がある。社会保障と税の一体改革が、それだ。
国民皆保険を維持してほしいというのは国民の合意だろう。日医は、開業医の既得権を守る集団ではなく、高齢化社会でも医療の質を落とさず、国民皆保険を維持するための具体的な政策を打ち出す役割がある。日医は、国民世論を味方に付け、国民が納得する医療のグランドデザインを示すべきだ。組織内候補はもう時代遅れだ。それよりも、日医が提案する政策に理解があり、それを推し進めようとする政治家を取り込んで育てていく方が、政策実現のスピードが速く、効率的だろう。
政治家のほか、厚生労働省やシンクタンクなどを巻き込み、政策提言・情報発信機能が備わった日医に変革する。今回の会長選は、「日本の医療を立て直していく」という一本の筋を通して、いわゆる「圧力団体」から脱却する絶好の機会だ。
【キャリアイレブン】
ここ2回の参議院議員選挙の結果も受けて、対政治に対して日医は大きな変革期を迎えているのかもしれません。
果たして日歯、日歯連盟もその流れを追随するべきなのでしょうか。議論の分かれるところです。
by kura0412
| 2012-02-27 14:21