日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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日歯、日歯連盟の対応

国民の健康を担う医療の公益性を守るために(日歯)

日本歯科医師会(大久保満男会長)は11月24日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.
冒頭の挨拶で大久保会長は,社会保障と税の一体改革,次期診療報酬改定,TPP交渉など,日歯が現在直面している課題はすべて「医療の公益性をどう守っていくか」という点に集約されると述べた.そのうえで,次期診療報酬改定に関しては「高齢社会の中で在宅が主題となるのは理解しているが,それがすべてではない」とし,「慢性期疾患を抱える高齢者の健康に医療と介護を通じて貢献し,日歯としては歯科医療を通じて可能な限り健康寿命を延ばしていくことが最大の課題である」との見解をまとめた.また,続けて紹介された内容は以下のとおり.

次期診療報酬改定について
東日本大震災の影響や復興財源確保の必要性もあり,特に今年は「社会保障の財源が少ない」と言われる非常に厳しい状況となっている.また,そもそも日医が当初に「次期改定は見送るべし」との意向を表明したこともあって,中医協内でもプラス改定を求める声は前回ほど大きくはないのが実情である.そのため,日医の挙げた「改善を求める14項目」の中でも具体的な数字については話題に上らない可能性もあるが,歯科医療に関しては引き続き,基本的な歯科医療技術に対する適切な評価を中心に,診療報酬改定率の引き上げを求めていく.

社会保障・税に関する番号制度に対する見解
日歯は政府の検討案に一定の理解は示すものの,特に「社会保障分野における現物給付(医療・介護等)での利用は,情報が漏洩した場合の人権侵害がきわめて著しい」という危惧から,当該範囲への番号制度導入は時期尚早である,と反対の意を表明している.

医療経済実態調査(個人歯科診療所)に対する見解
平成22年時点で歯科診療所数の84%を占める個人歯科診療所は,これまで日本の歯科医療の中心的役割を担ってきたが,平成23年6月の損益差額がついに100万円を下回った.昨今の厳しい経済状況下で個人歯科診療所の経営努力や経費削減努力はもはや限界に達しており,安心安全な歯科医療供給体制確保のためにも喫緊の対応が望まれる.

医療計画の見直し等に関する検討
疾病または事業ごとの医療体制構築にかかわる指針について,このたび従来の四疾病に5つめの「精神疾患」が加えられ,新たに医療計画が検討されることになった.また五事業のうち「災害時における医療」については,東日本大震災の教訓を踏まえ,災害拠点病院や災害時の医療提供体制(DMAT:災害医療派遣チームの在り方,中長期の医療提供体制)等に対する検討がなされ,災害医療を支援する団体として,新たに日歯が明確に位置づけられた.

生前歯科所見のデータベース化について
8月に警察庁,厚労省,日本歯科医学会と日歯が共同で検討会を立ち上げた.歯科所見は,指紋やDNA情報等とは対照的に国民のデータベース化への抵抗感が少なく,災害時や平常時における身元確認での有効性も十分に示されている.検討会として,最終的には政府機関に意見書を提出したいという目標を据えながらも,国や第三者機関によるデータセンターの設立やモデル事業的な実証実験の必要性など,今後の展望を交えての中間報告とした.


診療報酬と税はパラレルに考えていく必要がある(日歯連)

日本歯科医師連盟(髙木幹正会長)は11月25日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.
会見では,第三次補正予算,社会保障と税の一体改革,診療報酬と介護報酬の同時改定,日歯連盟のグランドデザインについて,以下のような紹介がなされた.

1.第三次補正予算(東日本大震災復旧・復興)
歯科として,はじめて政策医療に関わる趣旨の文言が予算の注意書きに入った.逆に言えば,救急医療の中で長年歯科が政策医療に関わっていなかったわけであり,今回の結果を高く評価したい,と改めて述べた.

2.社会保障と税の一体改革
①外来受診時の定額負担,②高齢者の(受診料)負担率の引き上げについては,いち早く「容認できない」と評議員会において決定をし,取り組みを進めてきた.
しかし,当初予想したとおり「共通番号制」導入の問題が出てきた.この問題については,すでに日歯としてもしかるべき見解を出してきた.納税者番号と社会保障に限ってであればともかく,レセプトとリンクすることが懸念される.その場合,医療関係者としてプライバシーに関する安全性が担保されなければ(反対を表明せざるを得ない),とした.
診療報酬と税はパラレルに考えていく必要があり,医療には公益・公共性があり非営利性を保つならば,そもそも税にはなじまないのではないか,との基本的な考え方を示した.しかし今回,消費税増税問題が出てきたが,しっかり解決しなければならないとし,「税制に関する要望(重点項目)」の一番に挙げておいた(社会保険診療報酬に対する消費税の非課税制度を仕入税額控除が可能な課税制度に改める等).また,例年のごとく,租税特別措置法第26条・事業税の非課税の見直しが俎上に上ってきた.きちんとした評価に基づく診療報酬にならないうちに,税制のほうだけ見直すことには矛盾を感じるため存続を希望する,とした.
事業税についても然りであり,医療には公共・公益性があり,非営利的(分野)である.われわれは地域において,検診(健診)も行っている.そのような中で事業税を課してくるとなると,かなりのダメージがあり責任を持って地域保健医療ができなくなるため,事業税非課税の特例措置についても存続を要望する,とした.

3.診療報酬と介護報酬の同時改定
日歯連盟としては,プラス改定を要望していきたいが厳しい状況になってきた.そこで,歯科は“紙出し”などの制約が多いので,これを緩和・撤廃するなどが先決である,との姿勢を明らかにした.これは財源問題に関わらないし,そのことにより臨床現場は診療を行いやすくなり,ひいては審査・指導にも影響与えるので,きちんと主張していきたい.連盟の役割は最終的には“政治決着”に資することであるが,今回の政権与党の政策決定プロセスはわかりにくいため,いろいろなところに布石を打っておき,効率よくタイムリーに動けるようにしておきたい,と述べた.

4.日歯連盟のグランドデザイン
12月2日,「総合政策検討プロジェクトチーム」(日歯)と「戦略検討プロジェクトチーム」(日歯連盟)がお互いに役割分担をしながらすり合わせを行う「日歯・日歯連盟合同政策会議」を開催する予定である.
連盟としては,①歯科医療費の確保(税制の問題がからむ),②人脈強化(人材育成),③政策の受け皿となる窓口(行政機関への位置づけ),の3つの柱に基づいてグランドデザインを作成している,とのことである.

【ヒョーロンニュース】




政府税調で事業税、特措法の継続が決定となりました。ただ、いずれも再来年度以降の社会保障と税の一体改革での議論に委ねられました。
by kura0412 | 2011-12-02 14:32 | 歯科医療政策 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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