『改正介護保険法などのポイント 』

改正介護保険法などのポイント

6月15日の参院本会議で可決・成立した、介護保険法や老人福祉法などを改正する「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」には、24時間対応で行う「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、訪問看護と小規模多機能型居宅介護を同一の事業所で運営できる「複合型サービス」など、新たな地域密着型サービスの創設が盛り込まれた。また、介護療養病床については、廃止期限を2017年度末まで6年間延長することも決まった。このほか、14日の参院厚生労働委員会で示された同法の附帯決議には、介護療養病床について3-4年後に実態調査し、その結果に基づいて必要な見直しを検討することなどが明記された。
同法の概要と附帯決議の内容は次の通り。

■2つの新サービスが登場
訪問介護と訪問看護の両サービスを24時間体制で提供する「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が創設された。具体的には、訪問介護と訪問看護が連携しながら、短時間の定期巡回を実施すると同時に、利用者からの要望に応じたサービスも行われる。サービス提供体制については、1事業所に訪問介護と訪問看護を併設する方式でも、訪問介護事業所と訪問看護事業所が緊密に連携を取り合いながら提供する方式でもよい。
また、小規模多機能型居宅介護と訪問看護を組み合わせた「複合型サービス」も導入される。

■労働法違反で指定取り消しが可能に
介護サービス事業者の指定権者である都道府県や市町村は、労働基準法など、労働法規に違反して罰金刑を受けた事業者の指定を取り消すことができる。

■介護予防・日常生活支援総合事業の創設
介護予防サービスや配食・見守りといった日常生活支援サービスを総合的に実施できる介護予防・日常生活支援総合事業を創設。事業の導入は市町村の判断に委ねる。

■地域包括支援センターに関係者との連携で努力義務
地域包括支援センターについては、介護サービス事業者や医療機関、民生委員、ボランティアなどの関係者と連携に努めなければならないと規定。

■介護サービス情報の公表制度を見直し
事業者に義務付けられている介護サービス情報の公表制度について、都道府県が必要と判断した場合に調査を実施する仕組みに変更する。

■介護保険事業計画の見直しのポイントを明記
市町村が介護保険事業計画にできる限り盛り込む事項として、▽認知症の人の日常生活の支援に関する事項▽医療との連携に関する事項▽高齢者の住まいについての施策―を明記。なお、計画の立案に当たっては、高齢者の状況や環境などのニーズ調査を実施し、その結果を勘案するよう努めるべきであることも示された。
都道府県の介護保険事業支援計画については、高齢者居住安定確保法に基づく高齢者居住安定確保計画との調和を保って策定することとした。

■財政安定化基金の一部取り崩しを認める
介護保険料の急激な上昇を抑制するため、都道府県は12年度に限って財政安定化基金の一部を取り崩すことができる。

■自治体による主体的な取り組みの推進
市町村が定める地域密着型サービスの独自の介護報酬について、基準額以上を設定する場合でも、一定の範囲内ならば厚労相の認可なしに報酬設定ができる。また、現行制度では、市町村が別の市町村にある地域密着型サービス事業所を指定する場合、事業所のある市町村長の同意を得る必要があるが、改正案では、事前に両市町村長の合意があれば、個別の同意がなくても指定が可能な仕組みに改める。
さらに、訪問介護などの居宅サービス供給量が市町村の介護保険事業計画の見込み量に達している場合、市町村は都道府県に事業者の指定に関する協議を求めることができる。都道府県はこの協議に基づいて居宅サービス事業者の指定を取りやめたり、指定の際に条件を付けたりできる。
このほか、市町村は定期巡回・随時対応型訪問介護看護などの事業者指定について、公募で行うこともできる。公募指定の有効期間については、6年を超えない範囲で市町村が定める。

【介護保険法以外の改正】
■前払い金に関する新規定を明記
認知症高齢者グループホームや有料老人ホームの設置者が利用者から受け取る前払い金について、新規定が盛り込まれた。具体的には、入居後の一定期間内に利用者が契約を解除したり、死亡したりした場合、受け取った前払金から一部を除いた金額を返還する内容の契約を利用者と結ばなければならない。(老人福祉法)

■後見業務の人材育成を促進
都道府県や市町村は、後見や保佐、補助などの業務を適正に遂行できる人材の育成に努める。(同)

■介護療養病床、廃止期限を6年延長
現在は11年度末とされている介護療養病床の廃止期限を6年間延長し、17年度末とする。(健康保険法)

■介護従事者によるたん吸引などの実施
介護福祉士と一定の研修を受けた介護職員が、保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、診療の補助としてたん吸引などの行為を行えるようにする。また、事業の一環としてたん吸引などの業務を行う事業者は、事業所ごとに都道府県に登録する仕組みにする。(社会福祉士及び介護福祉士法)

■介護福祉士国家資格の取得方法見直しの延期
12年4月の施行を予定している介護福祉士国家資格の取得方法見直しについては、施行時期を15年4月に延期する。(同)

【附帯決議】
■介護職が喀痰吸引等を実施するに当たっては、知識・技術の十分な習得を図るとともに、医師、看護師その他の医療関係者との連携のもとに、安全管理体制を整備し、その上で実施状況について定期的な検証を行うこと。

■介護職員等の処遇改善については、財源を確保しつつ、幅広い職種を対象にして実施するよう努めること。特に、介護領域における看護師の重要な役割に鑑み、介護保険施設や訪問看護に従事する看護師の確保と処遇改善に努めること。

■介護サービス情報の公表制度については、適正な調査が実施されるよう、都道府県、指定情報公表センター、指定調査機関その他の関係者の意見を十分に踏まえつつ、ガイドラインの作成など必要な措置を講ずること。その際、事業者より申出がある場合には積極的に調査できるよう配慮するとともに、指定調査機関・調査員の専門性を活用すること。

■地域包括ケアシステムの構築を図る観点から、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合型サービスについては、医師、看護師、介護職員間の連携を深め、円滑な実施体制の実現を図ること。併せて、地域包括支援センターにおける総合相談などの包括的支援事業の機能の強化を進めるとともに、その拠点整備を推進すること。

■介護予防・日常生活支援総合事業については、その創設においても要支援認定者が従来の介護予防サービスと同総合事業を選択・利用する意思を最大限尊重すること。また、国として財源を確保し、各市町村のニーズに応じて適切に実施するよう努めること。

■介護療養病床の廃止期限の延長については、3年から4年後に実態調査をした上で、その結果に基づき必要な見直しについて検討すること。

■認知症対策を推進するため、地域における医療、介護等の緊密な連携を図るとともに、市民後見人の活用を含めた成年後見制度の周知・普及を図り、権利擁護の体制整備を促進すること。

【キャリアブレイン】



正直、これをみても具体的にどこがどうなるのかは私には良く分かりません。ただ、それぞれの分野で、新たなビジネスチャンスを狙っている改正にはなっているのは間違いないようです。
by kura0412 | 2011-06-16 17:49 | 介護

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