混合診療をどう考えるかも課題に(森田中医協新会長)

医療費はメリハリと効率化へ- 中医協・森田新会長

中央社会保険医療協議会(中医協)で、来年度の診療報酬改定に向けた議論が曲折している。5月の総会では、日本医師会常任理事の鈴木邦彦委員が、東日本大震災の被災地の復興を優先させるため、改定の重要な資料となる医療経済実態調査を行うことに反対の立場を表明し、調査実施の是非をめぐって総会は紛糾した。3月に任期満了となった遠藤久夫前会長に代わり、新会長に選ばれた東大大学院教授の森田朗氏は、議論の進行役として難しいかじ取りを迫られている。今後、中医協はどこへ向かうのか―。そのキーパーソンとなる森田氏に話を聞いた。

―中医協ではこれまで、来年度の改定に向けた議論を行ってきましたが、東日本大震災の発生以降、医療を取り巻く状況は大きく変化しました。新会長として、難しいかじ取りを迫られています。

前回の総会での医療経済実態調査の議論もそうですが、何を根拠に点数を決めればいいのか。これまで中医協では、しっかりとしたデータで過去の傾向を把握し、将来もその方向に向かうという前提で議論を積み重ねてきた。ところが震災の発生後、突然、先が見えなくなった。「見えない以上、無理をするな」という意見がある一方で、「そうは言っても、全くデータもなしにやるのはどうなんだ」という意見もある。そこは、その都度その都度、調整しながらやっていくしかないと思います。

―昨年度の診療報酬改定の附帯意見には、地方の特性を踏まえた診療報酬について検討することが盛り込まれました。今回の震災で、特に東北地方の医療は様変わりしました。今後、これをどのように進めるお考えでしょうか。

これについては、さまざまなご意見があります。議論の途中でそういう話が出てきたので、前回の改定ではそれほど大きな変更はありませんでした。一般的に、給与水準や物価は地方の方が安いのですが、お医者さんの給与に関しては地方の方が高い。それをどのような形で調整すればよいのか。何を指標にするかは難しい問題だと思います。
日本の場合、都市部と農村部の格差が大きいので、それをどのような形で是正すべきか。これは真剣に取り組まなければならない問題です。単に地域だけの格差をどうするかという話もありますが、地方の場合、医師不足や人口の減少、そして高齢化が進んでいるので、医療の仕組み自体が変わってきている。要するに、慢性期医療のニーズが高い。そうなると、地域連携の評価とか、そういう議論も出てきますよね。
介護報酬の場合、地域によって1単位の点数が違う。公務員給与が考慮されていますが、それに対して、診療報酬は点数が全国一律なので、お医者さんの給料については、他の職種の賃金と逆の傾向が出てくるわけです。そこも含めて、どう調整するかは、さまざまな可能性が考えられます。重要な論点であることは間違いないと思いますが、これもかなり難しい問題だと思います。

■「諮問に向けた準備は必要」
―日医は5月19日、来年度の同時改定の見送りや医療経済実態調査の中止などについて、細川律夫厚生労働相に申し入れました。診療報酬の改定はこれまで、原則2年に1度行われてきましたが、今後もこれを踏襲すべきなのでしょうか。

中医協は、厚生労働大臣の諮問を受けて答申するという仕組みです。改定率は年末に決まりますが、その枠内で協議した上で答申する。われわれのミッションは、大臣の諮問に答えることですから、それを前提に考えざるを得ない。当然、大臣からのご指示がない限り、諮問に向けて準備をしなければならないわけです。
前回の総会でわたしが申し上げたのは、中医協のミッションは厚生労働大臣の諮問に答申することで、これまでも諮問があることを前提にやってきた。次回は諮問しないという大臣のメッセージがない限りは、当然、そのための準備をせざるを得ないだろうということです。医療経済実態調査というのは、その準備の中の重要な要素ですから、調査をやらないと、諮問を受けた時に必要なデータがないことになり、きちんとした答申ができないのではないか。また、委員から「改定を延期すべきである」という意見が出ましたが、それは、今申し上げたように、中医協で決めることではないでしょう。医療経済実態調査をやらないからといって、改定ができないわけではないのかもしれませんが、これまでのようなエビデンスに基づいた答申はできなくなってしまう。中医協の委員の総意で、「今年は改定をやめるべきだ」という意見を大臣に申し上げることはあり得るかもしれない。ただ、それでも大臣が「やる」と言えば、やらざるを得ないわけで、中医協は大臣の諮問に答えて審議し、答申をする機関である以上は、そういうことになる思います。

―退任のあいさつで遠藤前会長は、医療の費用対効果に関する議論の必要性を示しました。一方、前回の総会では、分科会から基本診療料のコスト調査は難しいとの報告がありましたが、診療側の委員からは、「入院基本料のコストの明確化」を求める意見も出ています。

分科会の田中滋会長と石井孝宜委員のご意見は、簡単に言えば、入院基本料の定義をきちんとしてくれれば、コストの計算のしようがあるということです。しかし、入院基本料について何をどう定義するかは、技術的に非常に難しい話ですので、総会の方で「こういうふうに定義してください」と言えるのかどうか。例えば、薬の処方も検査もしないけれど、患者さんを診て判断する。そのために診察室が要るとしたら、その経費をどうするのかという話になりますから。
医療費を保険でみる枠は限られている一方、高齢化によって医療ニーズはむしろ増えています。医薬品や医療技術も進歩しているので、一人当たりの単価も高くなる。人数が増えて単価が高くなれば、X軸とY軸で考えれば総面積が増えるわけです。ところが、面積自体に上限があるとすれば、これをどう解決すればいいのかという話になる。限られた財源を効率的に使うためには、保険の適用が有効であることを評価しなければならない。これまでは重篤な副作用がなくて、治療上の効能・効果が明らかになれば、薬剤として承認され、保険が適用されてきたわけですが、例えば、効能・効果が小さい割に高額な薬剤についても保険を適用すべきなのか。別の薬に財源を回した方が、より多くの人が医療の恩恵を受けられるのであれば、財源が限られている場合、どちらを選ぶかという議論も起こり得る話です。

■「混合診療」をどう考えるかも課題に
―昨年度の改定では、外来と入院の財源枠が事前に示されたため、財政中立でやらざるを得ませんでした。社会保障をめぐっては、政府・与党の中に多くの会議が立ち上がり、「中医協の機能が縮小している」との声もあります。今後、中医協はどうあるべきだとお考えですか。

わたし個人の考えとして申し上げます。人と時間、そしてコストを一番使って、医療について議論しているのは中医協だと思います。昔は医療費の総枠や配分まで決めていたわけですが、これに対して小泉内閣の時代に改定率を閣議で決めて、中医協はその枠内で診療報酬の点数を決めるようになった。これをどう解釈すればよいのか分かりませんが、財務省をはじめとする外の人たちから見ると、診療報酬を決める時に、中医協は国家財政や保険財政の事情を本当に考えているのかと。医療のことしか考えていないのではないかと。それでは保険制度も国の財政も持たないので、枠をはめることになったのではないかと。中医協にしてみれば、それは大変失礼な話だし、医療上のニーズならまだしも、財政上の理由で医療の総枠を決めるのは何事だと。こういう考え方もあるわけですよ。
だからこそ、財政の事情を考えても、これは払うべきだという理論武装をしなければならない。裏を返せば、これは保険でみるべきではないという評価も行う必要がある。何でもかんでも保険に入れて、「増やせ増やせ」では納税者としての国民は納得しないわけですから、そこを中医協がきちんと理解した上で、ベストな選択をしなければならないと思います。それができれば、中医協の権威は保たれるでしょうが、アクセルしかない自動車になってしまうと、「ブレーキは外で踏みますよ」という話になる。

―医療関係者の間では、国の財源が震災からの復旧・復興に回ると、来年度の診療報酬改定がマイナス改定なるとの懸念も広がっています。震災後、財源のパイが少し縮まった中では、報酬にメリハリを付けるしかないということでしょうか。

これも個人的な意見ですが、そうせざるを得ないのではないかと思います。メリハリを付けることと、医療資源や財源の効率化をどう図るのかという話になると思います。そこをチェックした上で、効率的なところにはきちんと報酬を付けるとか。それから、本当に国民にとって必要ならば、「もっと負担してください」と言えるかどうか。自分の健康のことですから。保険で調整するのか、公的財政で調整するのか。いろいろあると思いますが、現在の国の財政状況を考えれば、国民が自分の健康のために負担を増やす必要があると判断すれば、一番話は早い。昨年度と今年度の一般会計だけでも、20数兆を超える借金が増えてきている。消費税1%が約2.5兆円ですから、仮に10%上げたとしても、そのほとんどが借金の返済に充てられてしまって、医療費には一部しか回らない状況です。
震災前の段階で、既に財政的に非常に厳しかったし、少子・高齢化も進んでいた。その上に、一段と大きなダメージを受けたわけです。経済の成長が止まって税収が減ってしまうと、財政的にはさらに厳しくなります。これ以上借金を増やせないとなれば、何を削るかという話にならざるを得ないと思うんですよね。精いっぱい、効率化をした上で、何を削るかという話になるでしょう。生活の質を落とさずに、どう節電するかということで今、知恵を出し合っていますが、それと同じようなことが起こるでしょう。国の政策的経費の半分以上が社会保障費ですから、それをそのままにして他を削ることはかなり難しい。そういう議論にならざるを得ないと思います。それを踏まえた上で、医療費にメリハリを付けて配分するということになるでしょう。「効率化」には2つの意味があって、掛けるお金が同じでもアウトプットの質が高くなるのも効率化だし、他方で、質が変わらなければコストを下げるという考え方もある。これらを踏まえて改善していかなければ、今の財政状況では持たない。ただ、それは仕組みの話なので、必ずしも医療機関の収益がマイナスになるという話ではないと思います。
これも個人的な意見ですが、保険でみる医療費は抑制せざるを得ないとなると、課題として出てくるのは、混合診療のような保険外併用療養費をどう考えるかということでしょう。「自分の体のことだから、身銭を切ってでもいい治療を受けたい」という人に対して、「それは駄目ですよ」と言えるかどうか。それをやると、「お金のある人だけが長生きして、お金のない人はできないのか」という議論が出てくる。今までは、「保険でみましょう」という話でしたが、それが難しくなってきた以上、その問題を避けて通れないのではないでしょうか。

【キャリアブレイン】



会長の意見で全て中医協が進むとは思いいませんが、今後の中医協での議論の方向性を示すものです。
by kura0412 | 2011-06-04 11:30 | 医療政策全般 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラー片手に歯科医師の本音

『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




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