日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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混合診療をどう考えるかも課題に(森田中医協新会長)

医療費はメリハリと効率化へ- 中医協・森田新会長

中央社会保険医療協議会(中医協)で、来年度の診療報酬改定に向けた議論が曲折している。5月の総会では、日本医師会常任理事の鈴木邦彦委員が、東日本大震災の被災地の復興を優先させるため、改定の重要な資料となる医療経済実態調査を行うことに反対の立場を表明し、調査実施の是非をめぐって総会は紛糾した。3月に任期満了となった遠藤久夫前会長に代わり、新会長に選ばれた東大大学院教授の森田朗氏は、議論の進行役として難しいかじ取りを迫られている。今後、中医協はどこへ向かうのか―。そのキーパーソンとなる森田氏に話を聞いた。

―中医協ではこれまで、来年度の改定に向けた議論を行ってきましたが、東日本大震災の発生以降、医療を取り巻く状況は大きく変化しました。新会長として、難しいかじ取りを迫られています。

前回の総会での医療経済実態調査の議論もそうですが、何を根拠に点数を決めればいいのか。これまで中医協では、しっかりとしたデータで過去の傾向を把握し、将来もその方向に向かうという前提で議論を積み重ねてきた。ところが震災の発生後、突然、先が見えなくなった。「見えない以上、無理をするな」という意見がある一方で、「そうは言っても、全くデータもなしにやるのはどうなんだ」という意見もある。そこは、その都度その都度、調整しながらやっていくしかないと思います。

―昨年度の診療報酬改定の附帯意見には、地方の特性を踏まえた診療報酬について検討することが盛り込まれました。今回の震災で、特に東北地方の医療は様変わりしました。今後、これをどのように進めるお考えでしょうか。

これについては、さまざまなご意見があります。議論の途中でそういう話が出てきたので、前回の改定ではそれほど大きな変更はありませんでした。一般的に、給与水準や物価は地方の方が安いのですが、お医者さんの給与に関しては地方の方が高い。それをどのような形で調整すればよいのか。何を指標にするかは難しい問題だと思います。
日本の場合、都市部と農村部の格差が大きいので、それをどのような形で是正すべきか。これは真剣に取り組まなければならない問題です。単に地域だけの格差をどうするかという話もありますが、地方の場合、医師不足や人口の減少、そして高齢化が進んでいるので、医療の仕組み自体が変わってきている。要するに、慢性期医療のニーズが高い。そうなると、地域連携の評価とか、そういう議論も出てきますよね。
介護報酬の場合、地域によって1単位の点数が違う。公務員給与が考慮されていますが、それに対して、診療報酬は点数が全国一律なので、お医者さんの給料については、他の職種の賃金と逆の傾向が出てくるわけです。そこも含めて、どう調整するかは、さまざまな可能性が考えられます。重要な論点であることは間違いないと思いますが、これもかなり難しい問題だと思います。

■「諮問に向けた準備は必要」
―日医は5月19日、来年度の同時改定の見送りや医療経済実態調査の中止などについて、細川律夫厚生労働相に申し入れました。診療報酬の改定はこれまで、原則2年に1度行われてきましたが、今後もこれを踏襲すべきなのでしょうか。

中医協は、厚生労働大臣の諮問を受けて答申するという仕組みです。改定率は年末に決まりますが、その枠内で協議した上で答申する。われわれのミッションは、大臣の諮問に答えることですから、それを前提に考えざるを得ない。当然、大臣からのご指示がない限り、諮問に向けて準備をしなければならないわけです。
前回の総会でわたしが申し上げたのは、中医協のミッションは厚生労働大臣の諮問に答申することで、これまでも諮問があることを前提にやってきた。次回は諮問しないという大臣のメッセージがない限りは、当然、そのための準備をせざるを得ないだろうということです。医療経済実態調査というのは、その準備の中の重要な要素ですから、調査をやらないと、諮問を受けた時に必要なデータがないことになり、きちんとした答申ができないのではないか。また、委員から「改定を延期すべきである」という意見が出ましたが、それは、今申し上げたように、中医協で決めることではないでしょう。医療経済実態調査をやらないからといって、改定ができないわけではないのかもしれませんが、これまでのようなエビデンスに基づいた答申はできなくなってしまう。中医協の委員の総意で、「今年は改定をやめるべきだ」という意見を大臣に申し上げることはあり得るかもしれない。ただ、それでも大臣が「やる」と言えば、やらざるを得ないわけで、中医協は大臣の諮問に答えて審議し、答申をする機関である以上は、そういうことになる思います。

―退任のあいさつで遠藤前会長は、医療の費用対効果に関する議論の必要性を示しました。一方、前回の総会では、分科会から基本診療料のコスト調査は難しいとの報告がありましたが、診療側の委員からは、「入院基本料のコストの明確化」を求める意見も出ています。

分科会の田中滋会長と石井孝宜委員のご意見は、簡単に言えば、入院基本料の定義をきちんとしてくれれば、コストの計算のしようがあるということです。しかし、入院基本料について何をどう定義するかは、技術的に非常に難しい話ですので、総会の方で「こういうふうに定義してください」と言えるのかどうか。例えば、薬の処方も検査もしないけれど、患者さんを診て判断する。そのために診察室が要るとしたら、その経費をどうするのかという話になりますから。
医療費を保険でみる枠は限られている一方、高齢化によって医療ニーズはむしろ増えています。医薬品や医療技術も進歩しているので、一人当たりの単価も高くなる。人数が増えて単価が高くなれば、X軸とY軸で考えれば総面積が増えるわけです。ところが、面積自体に上限があるとすれば、これをどう解決すればいいのかという話になる。限られた財源を効率的に使うためには、保険の適用が有効であることを評価しなければならない。これまでは重篤な副作用がなくて、治療上の効能・効果が明らかになれば、薬剤として承認され、保険が適用されてきたわけですが、例えば、効能・効果が小さい割に高額な薬剤についても保険を適用すべきなのか。別の薬に財源を回した方が、より多くの人が医療の恩恵を受けられるのであれば、財源が限られている場合、どちらを選ぶかという議論も起こり得る話です。

■「混合診療」をどう考えるかも課題に
―昨年度の改定では、外来と入院の財源枠が事前に示されたため、財政中立でやらざるを得ませんでした。社会保障をめぐっては、政府・与党の中に多くの会議が立ち上がり、「中医協の機能が縮小している」との声もあります。今後、中医協はどうあるべきだとお考えですか。

わたし個人の考えとして申し上げます。人と時間、そしてコストを一番使って、医療について議論しているのは中医協だと思います。昔は医療費の総枠や配分まで決めていたわけですが、これに対して小泉内閣の時代に改定率を閣議で決めて、中医協はその枠内で診療報酬の点数を決めるようになった。これをどう解釈すればよいのか分かりませんが、財務省をはじめとする外の人たちから見ると、診療報酬を決める時に、中医協は国家財政や保険財政の事情を本当に考えているのかと。医療のことしか考えていないのではないかと。それでは保険制度も国の財政も持たないので、枠をはめることになったのではないかと。中医協にしてみれば、それは大変失礼な話だし、医療上のニーズならまだしも、財政上の理由で医療の総枠を決めるのは何事だと。こういう考え方もあるわけですよ。
だからこそ、財政の事情を考えても、これは払うべきだという理論武装をしなければならない。裏を返せば、これは保険でみるべきではないという評価も行う必要がある。何でもかんでも保険に入れて、「増やせ増やせ」では納税者としての国民は納得しないわけですから、そこを中医協がきちんと理解した上で、ベストな選択をしなければならないと思います。それができれば、中医協の権威は保たれるでしょうが、アクセルしかない自動車になってしまうと、「ブレーキは外で踏みますよ」という話になる。

―医療関係者の間では、国の財源が震災からの復旧・復興に回ると、来年度の診療報酬改定がマイナス改定なるとの懸念も広がっています。震災後、財源のパイが少し縮まった中では、報酬にメリハリを付けるしかないということでしょうか。

これも個人的な意見ですが、そうせざるを得ないのではないかと思います。メリハリを付けることと、医療資源や財源の効率化をどう図るのかという話になると思います。そこをチェックした上で、効率的なところにはきちんと報酬を付けるとか。それから、本当に国民にとって必要ならば、「もっと負担してください」と言えるかどうか。自分の健康のことですから。保険で調整するのか、公的財政で調整するのか。いろいろあると思いますが、現在の国の財政状況を考えれば、国民が自分の健康のために負担を増やす必要があると判断すれば、一番話は早い。昨年度と今年度の一般会計だけでも、20数兆を超える借金が増えてきている。消費税1%が約2.5兆円ですから、仮に10%上げたとしても、そのほとんどが借金の返済に充てられてしまって、医療費には一部しか回らない状況です。
震災前の段階で、既に財政的に非常に厳しかったし、少子・高齢化も進んでいた。その上に、一段と大きなダメージを受けたわけです。経済の成長が止まって税収が減ってしまうと、財政的にはさらに厳しくなります。これ以上借金を増やせないとなれば、何を削るかという話にならざるを得ないと思うんですよね。精いっぱい、効率化をした上で、何を削るかという話になるでしょう。生活の質を落とさずに、どう節電するかということで今、知恵を出し合っていますが、それと同じようなことが起こるでしょう。国の政策的経費の半分以上が社会保障費ですから、それをそのままにして他を削ることはかなり難しい。そういう議論にならざるを得ないと思います。それを踏まえた上で、医療費にメリハリを付けて配分するということになるでしょう。「効率化」には2つの意味があって、掛けるお金が同じでもアウトプットの質が高くなるのも効率化だし、他方で、質が変わらなければコストを下げるという考え方もある。これらを踏まえて改善していかなければ、今の財政状況では持たない。ただ、それは仕組みの話なので、必ずしも医療機関の収益がマイナスになるという話ではないと思います。
これも個人的な意見ですが、保険でみる医療費は抑制せざるを得ないとなると、課題として出てくるのは、混合診療のような保険外併用療養費をどう考えるかということでしょう。「自分の体のことだから、身銭を切ってでもいい治療を受けたい」という人に対して、「それは駄目ですよ」と言えるかどうか。それをやると、「お金のある人だけが長生きして、お金のない人はできないのか」という議論が出てくる。今までは、「保険でみましょう」という話でしたが、それが難しくなってきた以上、その問題を避けて通れないのではないでしょうか。

【キャリアブレイン】



会長の意見で全て中医協が進むとは思いいませんが、今後の中医協での議論の方向性を示すものです。
by kura0412 | 2011-06-04 11:30 | 医療政策全般 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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