この大災害で話題になるだけでも

近聞遠見:「菅降ろし」と政治報道

「大型連休中は必ず水面下で動く」
と以前から言われてきた。政界ジンクスみたいなものだ。仕掛けをし、策を練る。それが連休明け、表に出る。
今年は、かつてない<大震災>という緊急事態が加わって、単純でなく、<菅降ろし>をめぐって、政界とマスコミ界の迷走が始まった。迷走は毎度のことだが、今回は放置すると取り返しのつかないことになりかねない。特に新聞だ。最近はテレビ政治と言われながらも、新聞の政治報道が流れに大きくかかわっている。
いま、政界に菅直人首相の積極擁護論はない。民主党は結束論から退陣論まで割れ、自民、公明両党は倒閣でまとまっているものの、党内に積極、慎重の両論がある。

そうした混迷をどう報じるか。連休中日の3日付、第1次補正予算成立翌朝の主要紙政治面で検証してみる--。
まず、見出しだが、
▽倒閣失速(朝日新聞)
▽「菅降ろし」駆け引き本格化(読売新聞)
▽首相、姑息(こそく)な延命 強まる不信(産経新聞)
▽野党 描けぬ倒閣シナリオ(毎日新聞)
となっていた。4紙4様だ。4紙読む読者は少ないだろうが、読めば混乱する。「朝日」だけの読者は倒閣なし、「毎日」も倒閣遠のく、と思う。逆に「読売」「産経」は、これから本番、と受け止める。

政治状況は一つなのに、なぜこれだけ差が出るのか。内閣不信任案の成否と倒閣勢力(自民、公明両党と民主党の小沢グループなど反菅勢力)の動向がカギだ。
記事を子細に読むと、「朝日」は失速の裏付け材料として、
<4月30日夜の小沢一郎・元代表との会合で、「小沢に元気がない」と出席者の一人は感じた>とか、
<「意外とこの政権は続く」(自民党幹部)とあきらめにも似た空気も漂い始めている>

など、「毎日」も、<野党側からは「ホームラン(倒閣)をやめて、ヒット(政権批判)を打ち続けるしかない」(公明党幹部)との声も漏れる>といったコメントが記事の流れを補強している。
一方の「読売」には、<参院民主党幹部は、「1次補正が通れば、首相はもう辞めていい」と述べた>など逆のコメントが載った。デリケートな局面で、名前のない幹部コメントは極力避けた方がいい。そうでないと、誘導的に感じられ、記事の信頼性をそぐだけでなく、政局に悪影響を与える。
実相は、<失速>と<本格化>の中間あたりで揺れているのだろう。報道は推測的誘導を排し、ありのままに徹するべきだ。主張があるなら、責任ある立場の署名記事ですればいい。
「朝日」は若宮啓文主筆が、<膨れ上がった首相不信の中で与野党の全面協力を望むのなら、ここまでやったら退くという「工程表」を示す手もあろう>(1日付)と提言した。十分傾聴に値する。菅首相にはそうした覚悟こそ求められているからだ。
「毎日」は古賀攻政治部長が、<菅首相ではその任を全うできないという主張は理解できる。ならば誰ならいいのか。……別の人物を見いだせないのなら、菅降ろしに連なる人々は力量不足を恥じ、「政局ごっこ」からきっぱり手を引くべきだ>(3日付)と主張した。こちらも明快だ。しかし、非常時に恥じてすむことではない。別の人物を決める知恵とエネルギーに欠けるなら、政治は展望を失う。(敬称略)

【岩見隆夫ブログ】



この大災害の時、首相交代の是非がマスコミで議論されるだけでも問題あり残念です。
by kura0412 | 2011-05-09 17:48 | 政治

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by kura0412