宮城県だけで約300診療所が診療出来ず

「すべての遺体を家族の元へ」歯科医1500人使命感

犠牲者が1万3000人を超えた東日本大震災では、遺体の身元の特定に協力するため、地元や全国各地から延べ約1500人の歯科医師が作業に参加している。
経営する歯科医院が被災した人もいるほか、中には慣れない作業が精神的な負担となり、体調を崩す人もいる。歯科医たちは「すべての遺体を家族の元に返したい」と、黙々と身元確認を続けている。

「口の中を見せていただきます」。宮城県石巻市の歯科医、三宅宏之さん(39)は、遺体の口を確認する前、いつも心の中でこうつぶやきながら手を合わせる。
三宅さんは、震災発生4日目の先月14日から、同市の遺体安置所となっている旧石巻青果花き地方卸売市場で作業に従事しており、これまでに約800体の遺体を扱った。作業は歯科医3人1組で、運び込まれた遺体の歯並びや治療痕などを記録する。その記録は、遺体発見時の状況や所持品、身体的特徴などと共にファイルにまとめられ、行方不明者を捜す家族が訪れた際の身元確認の資料として使われる。
場内は、電気が復旧しておらず、昼でも薄暗いまま。震災ひと月を過ぎても犠牲者の搬入は続く。4月中旬現在も数百の遺体が安置されており、肉親を捜す家族が頻繁に訪れる。
家族が遺体に対面する時は作業を中断する。幼い娘の遺体を確認した母親が、冷たくなった体を温めるように半日抱きしめ続ける姿を目の当たりにしたこともあった。三宅さんにも5歳、8歳、10歳の3人の娘がおり、母親の悲しみが痛いほど伝わってきた。

各地の歯科医師会は、事件や事故の際、警察の捜査に日常的に協力しているが、これほど多くの遺体の身元確認をするのは皆、初めてだ。宮城県歯科医師会で身元確認班の班長を務める江沢敏光さんは、「肉体的な負担だけでなく、遺族の悲しみに寄り添う作業で、皆、相当な精神的負担がかかっている」と話す。延べ270人の歯科医を派遣した東北大学(仙台市)などによると、中には精神的なショックを受けたり、体調を崩したりする人も出たという。

一方、地元の歯科医には、津波の被害に遭っている人も多い。同県歯科医師会によると、県内の1005か所の歯科医院のうち、今月初旬時点で約300で診療ができなくなっている。三宅さんの歯科医院も2階まで水没し、再開のめども立たないままだ。だが、行方不明だった家族の遺体と対面した遺族から「せめて安らかに眠らせてあげたかった。どうもありがとう」と声をかけられると、「役に立てたのかもしれない」と思い、少しほっとするという。
三宅さんは「歯科医として犠牲者のためにできることは、一人でも多くの人の生きた証しを記録すること」と考え、今後も作業を続けるという。(小泉朋子)

【読売新聞】



宮城県だけでもこれだけの状況です。これが全地域となると相当な作業の量と診療所の被害は相当な数になります。
by kura0412 | 2011-04-16 08:58 | 歯科 | Comments(0)