最先端医療の促進も必要ですが

第5部 飛躍明日への処方箋(2)縦割り廃し、基礎から臨床へ

医薬品開発で欧米に後れを取り、韓国、中国などアジア諸国からも猛追される日本。すでに「医薬品の輸入大国」となっている。そんな現状を打開するため、今年1月、内閣官房に設置されたのが「医療イノベーション推進室」だ。
「医薬品の輸入から輸出を差し引いた輸入超過は1兆円を超えている。国内の患者が高い薬代を負担させられるだけでなく、国の安全保障の観点からも医薬品の海外依存度が高まるのは危険」。室長に就任した東大医科学研究所の中村祐輔教授はそう憂えている。

医療イノベーション推進室は、政府の新成長戦略の一環として、医薬品、医療機器や再生医療などの分野で日本の最先端技術を実用化し、医療を国際競争力の高い産業に育てることを目的に設立された。
中村教授は全遺伝情報(ヒトゲノム)解析研究の第一人者。室長代行には再生医療が専門の東京女子医大の岡野光夫教授とノーベル化学賞受賞者の田中耕一・島津製作所フェローを迎えた。
産業界や厚生労働省、文部科学省、経済産業省の関係省庁からも横断的にスタッフを登用した。
例えば、がん治療であれば、現在の予算は、厚労省が医薬品の有効性や安全性を確認する治験に、文科省が大学の基礎研究に、経産省がベンチャー企業の支援にといった具合でバラバラな判断基準で投入される。これを、有望な研究開発に重点的に集中投入しようという狙いからだ。
政治の不透明さはあるが、再来年度予算からの実現を目指している。

中村教授が室長に選ばれたのは、日本の医療進歩を実現する上で、教授の経歴や経験が買われたからだ。
ヒトゲノム解析で日本の医学研究をリードしてきた中村教授だが、もともとは消化器外科の臨床医。がんで若くして命を落としていく患者を前に、治療のための研究に転じた。
「日の丸印」の創薬を目指し、細胞をがん化させる遺伝子を見つけ、それをもとに治療薬を開発する努力を続けてきた。実際、がん治療のためのがんペプチドワクチンや抗体医薬、分子標的薬のシーズ(候補物質)も発見。東大発のベンチャー、オンコセラピー・サイエンス(川崎市)で開発が進められている。

中でも注目されているのが、外科治療、抗がん剤、放射線治療に次ぐ「第4の治療法」として注目されるがんペプチドワクチン。オンコ社では5種類のワクチンを開発中。膵臓(すいぞう)がん治療のためのワクチンは承認のための治験が最終段階にある。
免疫細胞が、がん細胞の表面にあるペプチド(タンパクの断片)を目印に攻撃する性質を利用したワクチンは、正常細胞を傷つけず副作用が少ないのが利点。
承認されれば「日本発、世界初」のがんペプチドワクチンの実用化となる。

同様に、中村教授がかかわった「滑膜肉腫(関節周辺にできるがん)」の抗体医薬。こちらは今夏からフランス・リヨンで治験が始まる。莫大(ばくだい)な費用がかかるため、国内での開発が困難だった。フランスがベンチャー支援のために設けている、税制上の優遇制度を利用することにしたという。
オンコ社の角田卓也社長は「創薬が成功し、会社が成長すれば、地域産業の育成や雇用促進につながる。将来を見越した戦略的な制度。日本は基礎研究の成果を臨床応用に導くベンチャーの育成が遅れているうえ、その取り組みを支援する制度も少ない」と語る。

「大学がよい創薬の対象となる物質を持っていても、大手製薬企業は成功率の高い段階のものにしか手を出さない。研究機関と企業、省庁間にある『死の谷』をなくし、実用化に向けた国家戦略を打ち出していく」。医療イノベーション推進室の任務をこう強調する中村教授。がんペプチドワクチンや抗体医薬の開発の経験から、創薬の難しさは骨身にしみている。
「国策としてあるべき医療の姿を追求することが画期的新薬の開発を促し、『患者中心の医療』を実現することにつながる」と信じている。

【産経ニュース】



最先端の医療技術開発も結構ですが、その前にしっかりと足元を固める作業が必要なのではないでしょうか。年を取ったのか、最近、頓にそんな気持ちになります。
by kura0412 | 2011-02-28 13:35 | 医療政策全般 | Comments(0)