日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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現場の声を代弁しているインタビュー記事

歯科医師の過剰解消、歯学部統廃合も視野に議論を・川口浩さん(民主党衆院議員、歯科医師)

医師不足が社会問題になる一方で、歯科医師の供給過剰が深刻さを増している。1980年代以降、歯学部の定員増や新設が相次ぐと、国の予測を超えて歯科医師が急増した。不況や少子化の影響で近年、患者の数は減っているが、歯科診療報酬は長年、据え置かれたまま。このため歯科医師一人当たりの収入は減り続け、今や5人に1人が年収300万円以下の“ワーキングプア”状態ともいわれている。茨城県取手市内に30年前に歯科医院を開業した川口浩さんは、衆院議員になった今でも「歯科訪問診療」を続けている。「われわれを取り巻く状況は大きく変わった。このままだと、10年後には状況がもっとひどくなる」―。川口さんは今、歯学部の統廃合も視野に過剰解消策を議論すべきだと考えている。

■都心部の駅前は歯科医院だらけ
―歯科医師の供給過剰問題がクローズアップされています。
歯科医師の供給が過剰だというのは間違いありません。茨城県取手市に歯科医院を開業して30年近くがたちますが、この間に時代が大きく変わったと痛感させられます。わたしが開業する時には、まだ医院の内装工事をしている段階から予約が入り始め、2か月先のアポイントまですぐに埋まってしまう状況だったのです。
取手市内には当時、人口7万人余りに対し歯科医院は7、8軒しかありませんでした。30年後の現在、市町村の合併もあって市の人口が11万人になったのに対し、歯科医院は60軒に増えました。人口の伸びを大きく上回る勢いで歯科医院が増えているのです。県議会議員だったころに県内各地をあいさつ回りしましたが、待合室にいる患者さんが少ないのにびっくりしました。驚いたことに、農村部の歯科医院にすら患者さんがいない。
日本中どこに行っても、必ずと言っていいほど近所に歯科医院があるのです。都心部では、駅前は歯科医院だらけ。1階から3階まで歯科医院で埋まっているビルもあります。

―医師のような地域偏在はないのでしょうか。
交通の便が良い地域に歯科医師が集まる傾向はありますし、日本全体で見ると、都市部に近いのに歯科医院が少ない地域もあります。しかし、ほかはおしなべて過剰気味です。医師と大きく異なるのは、歯科医師の場合、何らかの組織に勤務して仕事をするのは研究者や大学関係者ぐらいだという点です。自分で開業して独立するのが基本なのです。だから過当競争になりやすい。

―なぜこのような状況になってしまったのでしょうか。
最大の原因は、国による需給予測の誤りです。国は80年代に、歯科医師を増員する方針を掲げ、既存歯学部の入学定員を増やしました。これと並行して歯学部の新設も全国で相次ぎました。ところが、予測よりも25年も早く市場のキャパシティーを満たしてしまった。当時は、例えば入学定員が150人前後だとしても、実際には200人近くが入学するケースが見受けられました。こうしたことが積み重なり、予測を狂わせました。

■患者は減少、報酬は据え置き
この間、国民の意識や歯科医院を取り巻く環境も変わりました。不況が長引いているため、最近では少しぐらい歯が痛くても我慢する人が増えています。少子化の影響で小児の患者さんも少なくなりました。歯科医師が増えて患者が減る中、歯科診療報酬は長年、据え置かれました。国民医療費全体に占める歯科医療費の割合は、55年に13.0%だったのが2007年には7.3%にまで下がりました。当然、歯科医師一人当たりの取り分が減ります。
こうなると、若者が歯学部に魅力を感じなくなり、大学に優秀な学生が集まりにくくなります。今年は私大歯学部の6割で入学者数が定員を割り込みました。中には定員の半分にも満たない私大もあります。最近では学生の質が低下し、歯学部に入学したのに、国家試験に合格できないケースが増えています。歯科医師一人を育成するために、少なからず税金が投入されています。6年間をかけて勉強したのに歯科医師になれなければ、学費と税金の無駄遣いだという批判もあります。歯学部の入学定員は、ピーク時の1985年比28%を目標に削減が図られていますが、質の高い歯科医師を養成するにはさらなる見直しが必要です。

―歯科医師が多いことは、患者にとっては歓迎すべきことだという気もします。
その通りです。選択の機会が増えるわけですから。ただ、国民から信頼される確かな臨床能力を備えた歯科医師を養成する観点からすると、何らかの手だてが必要です。歯科医療は国民生活に不可欠で、優れた歯科医師の育成は国民の健康と福祉に直結します。「削って詰める」「抜いて補綴(ほてつ)する」という20世紀型の歯科医学教育から脱却し、超高齢社会が求める21世紀型の教育に取り組む大学を支援すべきではないでしょうか。

―抜本的な解決策はあるのでしょうか。
診療の質を確保する観点から、入学者の確保が困難だったり、国家試験の合格率が低かったりする歯学部は、国民にきちんとデータを提示し、意見を聞き、統廃合も視野にオープンな形で議論するほかないと思います。経済状況が厳しい中、これ以上は時間を無駄にできません。
文部科学省の「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」が昨年1月、入学定員を充足できない歯学部の定員見直しの検討を提言する第一次報告をまとめました。今年10月27日の衆院文部科学委員会でわたしが今後の対応を質疑すると、高木義明文科相は、第一次報告への対応状況をフォローアップし、年度内に公表すると答弁しました。
現実問題として入学者が定員の半分に満たないのなら、定員の半減を検討することも可能ではないでしょうか。特に単科大学は厳しいはずで、他大学の歯学部と統合する選択肢もあるでしょう。あらゆる方面から議論していただき、それを基に、さまざまな選択肢の中から、関係者や国民が納得できる形での解決を目指したいと考えています。

■連携強化し地域ニーズの掘り起こしを
―新たな活躍の場を模索する歯科医師もいます。
治すための医療から人生の終末期を支える医療へのパラダイムシフトが必要だと昨今、いわれています。わたしは歯科訪問診療に20年間取り組んでいますが、この分野で果たすべき役割は大きいと感じています。高齢者を訪問すると、歯科医院にかかりたくても交通手段がなく、壊れた入れ歯を我慢して使い続けている人もいます。新しい入れ歯に直した途端に、よくしゃべるようになる高齢者もいます。われわれ歯科医師を待っている人が地域にはいるのです。かつては行政機関の保健婦(現在の保健師)が、「困っている人がいる」とわたしたちに伝えてくれましたが、介護保険が始まってサービスの実施主体が民間に移ったため、連携が切れてしまいました。今でも、例えば訪問看護ステーションとうまく連携すれば、地域の埋もれたニーズを把握できるはずです。
訪問診療に取り組む歯科医師は増えてはいますが、質・量共に十分とは言えません。患者さん側からすると、往診を受けたいときにどこに相談すればいいのかが分からないようです。このため、われわれからもっと情報発信する必要があります。入院患者さんの口腔ケアも大切です。これを徹底することで、患者さんの全身状態は格段に良くなります。このほか、子どもたちの食育もわたしたちの仕事です。
歯科医師を目指す若者に伝えたいのは、この仕事に大きなやりがいがあるということです。食べることは、命を支え守るための最も大切な機能で、命そのものです。食べるという人間の本能を最後まで全うしていただくためのお手伝いをする歯科医師の使命は重要です。お金を頂く上に「ありがとうございました」と感謝されるような仕事は、ほかにそうはありません。課題はありますが、歯科医師は捨てたものではありません。

【キャリアブレイン】



国会議員になった現在でも臨床に携わっている川口議員の、現場の声を代表したインタビューであり、医科系のネットサイトに紹介されたことにも非常に意味があると思います。
by kura0412 | 2010-11-22 14:37 | 政治 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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