消費税が最大の争点となれば

政策大転換(田勢康弘)

これこそが「政権交代」
「現実主義者」の菅直人首相は「消費税10%」を検討課題としてあげ、超党派の協議を呼びかけた。その2時間前に自民党が発表したマニフェストの10%案に乗る形だ。これで参院選は消費税が最大の争点となることが確定した。

菅氏について中曽根康弘元首相がおもしろい見方をしている。「菅君は私がみるところ、市民的保守の政治家だ」「なぜ、保守かといえば、彼は財政再建で自民党と協力していいという。権力をとれば自分の政治理念を実現するために自民党と一緒にやるというところは、保守の面を持つ」(朝日新聞17日朝刊)
中曽根氏92歳。政治の本質を見抜く目はまだまだ鋭い。中曽根氏は「菅君はウイングを左から右に広げるだろう」と述べ「現実的政治家としては当然の行動だ」と評価している。一方で自民党がウイングを「対抗的に『右』に向かおうとしているようだが、それは間違い」と批判的だ。
増税を掲げた選挙は与党が敗北する、というのが古今東西定説のようになっている。大平内閣の「一般消費税」、中曽根内閣の「売上税」、竹下内閣の「消費税」、細川内閣の「国民福祉税」。いずれも選挙で敗北したり、退陣、あるいは軌道修正を迫られるなど、政権にとっては最大の「鬼門」といわれてきた。したがって今回、民主党が参院選直前に、数字まであげて踏み込んだことは、画期的なことといえる。

それもこれも破綻(はたん)寸前の国家財政を考えれば、ごく当たり前のことなのである。選挙に有利か不利かが政策判断の基準になってきたが、財政危機に有効な手を打つどころか、マニフェスト政治によって、ばらまき同然の荒いカネの使い方ばかりしている。鳩山政権での「4年間は消費税を引き上げない」という公約は無責任きわまりないものであった。
わが国の借金は過去最大の約883兆円(3月末)。このままではごく近い将来1千兆円に届きそうだ。国内総生産(GDP)比で189%。国をあげて懸命に働いた数字であるGDPの倍近くが借金なのだ。OECD(経済協力開発機構)の推計で見ると、米国はGDP比84%、ドイツ77%、フランス85%、破綻国家ギリシャでさえ115%なのである。ギリシャはどうなるのだろうかなどと他人事のようなことをいっている場合ではないのである。
日本のこの数字は戦時体制下と同水準であり、もし日本が欧州にあったとしてもEUへの加盟を認めてもらえないほどのとんでもない財政状況なのである。日本の事情を視察にくる外国人ジャーナリストや学者によくインタビューを受けるが、彼らが決まってする質問は「これほど悪化した財政状況なのに、みな幸せそうに見えるのはなぜか」というものである。

税収を上回る国債発行。すなわち稼ぐカネより借金のほうが多いという異常事態を異常と思わなくなっている国民。一向に責任を取ろうともせず、罪の意識すら感じていない政治家たち。「しかたがないよ」とみなが傷をなめあって生きている生ぬるい国家。発行国債の8割近くを国内の金融機関などが購入しているために、危機感がないのだ。ギリシャのケースは欧州各国が国債を大量に購入していたため、影響が広がった。
いまのところ日本では国債を手離そうとする動きはない。しかしながら、少量であっても米国などが日本国債を売り始めれば、日本経済はたちまちおかしくなる。割れそうな氷の上を怯(おび)えながら歩いているような状況なのである。消費税問題はどの程度引き上げるのか、いつか、その影響は、という視点でばかり考えるべきではない。この国の危機をどのようにして救うのか、という俯瞰(ふかん)的な視野に立って考えるべきだ。国家財政が破綻してしまえば、国民生活も何も成り立たなくなるのである。

菅直人氏は財務相当時、国際会議でギリシャの深刻さを感じるとともに日本に対する各国の疑心暗鬼の目を意識せざるを得なかったようだ。そのことが大きな政策転換につながった。同時に、官僚排除の姿勢を改め、国難に対処するために官僚と政治の共同作業が必要だ、とこれもまた大きく舵(かじ)を切った。そのことは同時に鳩山政権との決別、あるいは小沢カラーからの脱却につながり、支持率のV字回復につながったのである。
鳩山政権から菅政権へ。同じ民主党で首相が交代しただけのように見えるが、実態は政策の大転換をともなうこれこそが政権交代だったというべきだろう。(政治ジャーナリスト、日本経済新聞客員コラムニスト)

【四国新聞】



今回の参議院選挙の争点は消費税となったしたら、歯科界はこれに対してどのように考え選挙戦を戦うことになるのでしょうか。
by kura0412 | 2010-06-22 14:30 | 政治 | Comments(0)

コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
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