日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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「今改定の二つの変革~」

検証・診療報酬改定2010
今改定の二つの「変革」が次期改定の礎に
嘉山孝正・国立がん研究センター理事長が診療報酬改定で講演

中医協委員で、国立がん研究センター理事長の嘉山孝正氏は5月8日、神奈川県保険医協会で「今次診療報酬改定と日本の医療の課題」と題して講演、今回の改定が「プリンシプルの改変」「中医協での議論の変革」という2点で特徴的だったと説明。これらの変革が次期改定につながるという観点から、今改定を捉える重要性を強調した。

「プリンシプルの改変」の一つが、小泉政権下での社会保障費削減からの転換。昨秋に野田佳彦・財務副大臣は「3%のマイナス」を掲げていたものの、最終的には全体では10年ぶりのネットでプラス0.19%が実現したとし、「額の多寡も大切だが、額が1円でも増やす方向、『増加の原則』に変換したことが重要」と嘉山氏は指摘した。
一方、「中医協での議論の変革」について、「従来は、舞台裏で改定内容が決まっており、中医協の議論はセレモニーだった。私が昨秋に足立信也・政務官から中医協委員を依頼された際、『根本的な議論をしてほしい』とのことだったので引き受けた。今回の中医協では、厚労省の提出したデータに疑問があれば指摘するとともに、我々がデータを出し、議論を進めたことが特徴」と嘉山氏は説明。「誤った情報を出すと、『医師が儲けているのではないか』などと思われてしまう。正確な情報を国民の前に出し、最後は政治マターとして、国民が決める。正確な情報を基に判断してもらうことは、自分で責任を取るということ。それであれば国民も納得する」と述べ、エビデンスに基づく議論の重要性を強調した。

さらに嘉山氏は、改定の各論について、地域医療貢献加算と明細書発行義務化についても言及した。「地域医療貢献加算に関して中医協では、24時間対応は無理であり、1週間のうち1日でも、2日でも患者の時間外の相談に対応する、といったゆるい制度として議論が終わった。しかし、その後の厚生労働省の通知で24時間対応となった。その後、また見直しされているが、それでも現場で混乱していることがあれば、中医協で議論していく」(嘉山氏)。

明細書発行について、嘉山氏は、「情報開示は重要だが、様々な問題が起きることが想定されたので、それに伴う責任は国が取るような制度設計を中医協で求めた。100万人に1人でも、(明細書発行によるがん告知などが問題になり)自殺者が出て、それをマスメディアが取り上げれば大きな問題になる。それにより、99万9999人が健全な医療が受けられなくなるくらい今の日本の医療は危うい状況にある。また、明細書発行義務化の理由として薬害の発生を防ぐことが挙げられたが、薬害は複合的な要因で起こるものであり、明細書の発行で防げる問題ではない」と説明(『明細書の無料発行の原則義務化が決定』を参照)。
その上で、嘉山氏は、明細書発行に賛成した理由と現状認識を次のように続けた。「明細書発行は、『衆愚の社会での無駄あり無駄なし』だと思う。衆愚、つまり一つの理念だけで物事を決定しようとする人々は、多くの犠牲を払って、くだらないことをやってみないと納得しない。これは衆愚社会では致し方ないこと。結局、私が明細書発行の義務化に賛成したのは、医療側、患者側ともに益がない要求だと分かることが重要だと思ったからだ。現状では、明細書の発行は、医療者側にとってはそれほど大きな負担ではなく、患者側も感心がない人が大半。これで衆愚には発言権がない、となってほしいが」(嘉山氏)。

「長者番付の残像除去のためにも、医師の正しい技術評価が必要」

約90分にわたった嘉山氏の講演内容は、今回の診療報酬改定にとどまらず、日本の医療の課題、医学教育にまで及んだ。

まず中医協の議論における「プリンシプルの改変」として挙げたのが、(1)社会保障費削減からの転換のほか、(2)再診料、外来管理加算、入院基本料などの基本的技術料についての根本的議論の萌芽、(3)ドクターフィー議論の継続審議化、(4)地域特性の導入、の4点。

特に時間を割いて説明したのが、ドクターフィーのあり方だ。「現場の若い勤務医のモチベーション維持のためには、ドクターフィーの議論が必要。診療科によって、時間的、またリスクの面でも相違があるのは事実。金額の問題も重要だが、『社会が医師の労に報いている』ことを形にするのが、ドクターフィー。医師の不遇感の解消、さらには医師の診療科による偏在を解消するのが狙い」と嘉山氏は説明。

今改定では、難易度が高い手術料は30~50%増の大幅アップになった。この基となったのが、外保連(外科系学会社会保険委員会連合)の試案だ(「外保連試案の採用は画期的、質評価の第一歩 - 安達秀樹・京都府医師会副会長に聞く」を参照)。「内科医の技術は、ナレッジ(knowledge)で評価すべきであり、これは我々外科医にとってはスキルに相当する。正しい診断・治療ができれば、患者のメリットになる上、医療費は下がるはず。中医協委員の安達秀樹・京都府医師会副会長には、こうしたエビデンスも出してほしいとお願いしている」と嘉山氏は述べ、今秋以降の中医協では内科系の技術評価の議論にも発展するとした。
「一般の社会人と同様、我々医療人が健全に生活できるようでなければ、医療は続かない。いまだ日本人の頭に、『長者番付』に医師が入っていた時代の悪いイメージがある。その残像を除去し、医師の時間給の実態や、医師の適切な技術料評価について、日本国民に認知してもらうことが必要」(嘉山氏)。

「舛添ビジョン」会議から議論のあり方が変化

「中医協での議論の変革」の骨子は、(1)厚労省の説明、データへの疑問点の噴出、(2)物と技術料を勘案した診療報酬の考え方の創出、(3)エビデンスベースの議論(積算方式)の創出、の3点。

嘉山氏は、自らも委員を務めた舛添要一・前厚生労働大臣の「安心と希望の医療確保ビジョン具体化に関する検討会」を挙げ、「この会議から議論のあり方が変わり、生の声が厚労省に届くようになった。また役人が書くのではなく、委員らが自分たちの手で報告書を書く時代になってきた」との見方を示した(『「医療界が元気になる」vs.「医療者の欲望」』を参照)。
今回の中医協での議論でも、厚労省のデータ等に問題があれば強く疑義を呈したという。物と技術料の評価に当たっても、すべてデータ、エビデンスが基となるとし、「我々医師は悪いことをしていない。これが一番のエビデンス。とんでもない収入をもらっているわけでもない。ごく一部に悪徳医師がいるのかもしれないが、99%以上は真っ当な医療をやっている。だから中医協の議論でも、問題があれば、絶対に意見を譲らない。ただし、我々医療界は、国民に対する説得力に欠けていた」と、嘉山氏はエビデンスに基づく議論の重要性を繰り返し強調した。

「低医療費、質の高い医療がなぜ実現できたか」の検証を

さらに、日本の医療の現状について嘉山氏は、「OECDのHealth Data2009では、日本の医療は総合1位。世界最低レベルの医療費と高等教育費で、世界一の医学、医療制度をなぜ維持しているのか。それをなぜ検証しないのか。なぜそれを壊そうとしているのか。国民も、国会議員も、マスメディアも、いまだに(1983年に当時の厚生省保険局長の吉村仁氏が提唱した)『医療費亡国論』の亡霊に悩んでいる」と問題提起した。

低医療費政策下で質の高い医療を支えてきたのは、モノではなくヒト、つまり、医師、医療者であるとし、屋根瓦方式の教育体制と、専門性を持った診療所医師がこれまでの医療を支えてきたとした。しかし、2004年度に必修化された臨床研修制度、現在検討されている総合医構想でこれらが崩れつつある上、「ゆとり教育」で、医学部入学者の学力レベルの低下も懸念される状況にあるという。
山形大学では、2009年1月から、「Student doctor」制度を導入した。これは臨床実習を行うに当たって必要な知識・技術を有すると判定した医学生に「認定証」を与えた上で、医学生に認められる医行為などを臨床実習する制度。1年間の実績を踏まえ、嘉山氏は「卒後臨床研修の獲得目標の大半は、医学生でも実施が可能。卒後臨床研修で同じ繰り返すことはムダであり、臨床研修制度は早く改めるべき。ただし、そのためには大学がしっかりすることが必要」と語る。

最後に嘉山氏は、現状のままでは「基礎研究、高度先進医療、医学教育、医療産業の崩壊」が進む懸念があると指摘、今後の課題として、(1)教育を国家戦略の根本に置く、(2)医療、医学では、大学人が自浄、自律、自立する、(3)日本医師会は、医療費のことではなく、『医学とは、医療とは』などを提言する組織にする、(4)正確な情報を国民に提供する、という4点を挙げ講演を締めくくった。

【m3.com】



昨日のこのブログで紹介した更に詳しい内容を見つけました。
大局的な見地も踏まえ、今後の医療全体を見据えた意見だと思います。全てこの意見で包括されるわけではなりませんが、果たして歯科は、この中でどう展望し、動かなければならないにょうでしょうか。
by kura0412 | 2010-05-11 17:27 | 医療政策全般 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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